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メキシコにおけるビジネス 現況と動向

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メキシコ最新ビジネスQ&A

ジェトロ海外調査部国際経済研究課・中南米課
水野 亮


Q.最近のメキシコ経済の状況はどうですか?

A.足元の経済は消費の不振などを原因として2013年には1・1%、2014年には2・1~2・6%(いずれも政府発表)と低く予想されていますが、国際収支、対外債務、外貨準備高、政府の財政収支、物価水準の上昇率など、どの指標を見ても経済は安定しているようです。
他方、唯一心配なのは低い賃金上昇率です。たとえば製造業労働者のコストは2000年から2012年までの年平均で2・6%しか伸びておらず、上昇しておらず、他国と比べてかなり低い水準となっています。輸出製造業にとっては競争力の向上につながりますが、国内消費が低調な原因でもあります。同期間に年平均11・2%上昇し、中間所得層が急速に拡大したブラジルとは対照的となっています。


Q.メキシコに進出する利点とは?どういった業種に利点がありますか?逆にメキシコに適さない業種はありますか?

A.自動車産業を中心に製造業の集積が進んでいます。2013年の自動車生産台数は3052千台で世界7位のブラジルに次いで8位となりましたが、2014年にはブラジルの生産台数を追い抜くと予想されています。そしてこの集積の主役は日本企業です。 中央高原地帯のアグアスカリエンテス州やグアナフアト州への日産とホンダの工場拡張、マツダの新規工場の設立をきっかけとして、自動車部品サプライヤーや製造を補完するサービス業が相次いで進出しています。メキシコの労働賃金は米国の約5分の1と低い水準となっており、労働集約的な生産体制を選択するのであれば製品の競争力を高めることが可能です。また、世界一の市場規模を誇る米国と隣接していることから、米国向けの製品を生産する企業にとっても適しています。加えて、中南米諸国や米国、カナダ、EU、そして日本など多くの国とFTAやその他の通商協定を結んでいるため、メキシコで製造した製品を輸出する、あるいはFTA相手国の原料や部品を輸入するのに関税が減免されるという利点もあります。
自動車産業のほかにも、過去に中心産業であったエレクトロニクスに加え、近年には欧米企業を中心に医療機器や航空機といった高度技術産業の集積も進んでいます。政府は航空産業を専門とした大学を設立、企業の協力を得ながら人材の育成を図るなど力を入れています。高度技術産業は日本企業の得意分野でもあることから、今後の進出の検討が期待されます。
他方、電力料金が米国や日本などと比べても高いために多くの電力を必要とする化学製品やアルミ、金属といった素材産業、資本集約的な製造業の目にはメキシコはあまり魅力的に映らないようです。


Q.メキシコでの会社設立であらかじめ知っておいた方が良いこと、気をつけた方が良いことはありますか?

A.上記のとおり労働賃金は低いですが、連邦労働法は労働者保護的な色彩が強く、たとえば社員の最低9割はメキシコ人労働者とする義務、定年制度がない、名目での賃金引き下げの禁止など進出企業にとって気をつけるべき点は少なくありません。また、会社の利益の10%を労働者に分配する内容の労働者利益分配金(PTU)制度があります。職場の労働者を派遣会社から調達することでPTUの支払いを回避する企業が見られますが、2012年11月末に公布された労働法改正により、派遣労働者は職務の専門性により正当化される必要などが生じています。
局地的に労働者の離職率や賃金の上昇が顕著となっています。過去数年で日系企業を中心に多くの自動車メーカーが進出した中央高原地域では、労働者の取り合いが起こりました。また、労働者に比べて層が薄い中間管理職に対する需要増により、給与水準は米国に近づいているとの声も聞かれます。さらには日本語や英語を話す人材も枯渇しつつあります。進出日系企業の間で自動車産業のTier2の顔ぶれが増える中、英語をあまり得意としない日本人駐在員の数が増えており、語学力含む優秀な人材の確保は深刻な問題となっているようです。

2013年の税制改革に伴い、何点か注意すべき変更がなされています。たとえば北部国境で輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム(IMMEX)制度を利用する企業は、16%の付加価値税(IVA)を11%に軽減されていましたが、法改正により16%に統一されることになりました。ただし同時に企業認定スキームが示され、IMMEX 認定を受けた企業は、2015年以降も従来どおりIVA保税を続けることが可能です。メキシコでは貿易を含むルールの変更が頻繁に起こるため、情報収集を怠らないことをお勧めします。
最後に、麻薬組織による殺人や誘拐といった凶悪な犯罪に加えて、強盗や置き引きなどの一般犯罪も少なくなく、近年には中央高原地帯でも治安の悪化が顕著となっています。ペニャ・ニエト政権は治安改善対策に取り組んでいますが、今のところ効果はあまり見られていないようです。治安対策のコストが上昇するリスクがある点も留意すべき点だと考えられます。

Q.進出の際のメキシコ政府による優遇措置について教えてください。

A.メキシコにはブラジルのマナウス・フリーゾーンや北東部・北部地域での会社設立の際に見られるような、連邦や州政府による大規模な優遇措置はありません。ただし、会社設立先の州の政府によっては、給与税などの免税や各種行政手続き費用の減免、研究開発への投資や人材育成への補助などを提供しています。また、労働者の研修費用を補てんする政府もあるようです。いずれの場合も予定している投資額や雇用者数をもって政府と交渉することになります。

Q.メキシコの経済成長の今後の展望・予測をお願いします。

A.上記のとおり、経済は二年連続で低迷していますが、2015年以降には回復が見込まれています。
理由の一つには201 5 年に予定しているエネルギー改革の施行があります。エネルギー改革を通じて原油の探査・開発から石油製品の生産など、今まで国営企業のPEMEXが一手に担ってきた分野が民間企業に開放されます。欧米や中韓の石油企業のみならず、日系企業の間でも石油だけでなく石油探査や開発に必要となる特殊船舶や海洋浮遊物などの設備、パイプラインや掘削管といった鋼材などで商機が生まれることになります。
また、非効率性から生産量を落としていたPEMEXの原油生産・販売量の増加、ひいては連邦政府の収益の改善にもつながります。
エネルギー改革では同時に電力の自由化も進められています。電力部門はほとんど電力庁(CFE)の独占状態でしたが、独占が廃止され、民間発電事業者がCFEを介さずに直接あるいは電力卸売市場を通じて販売できるようになるため、電力価格は大幅に下がると期待されています。
もう一つの理由はメキシコが大きく依存する米国経済の回復です。NAFTA創設以降、両国の間でサプライチェーンの構築が進み、現在ではメキシコの輸出額全体の8割以上が米国向けとなっています。したがって「米国が風邪を引けばメキシコは肺炎になる」とのジョークがあるほどで、メキシコにとって米国経済は生命線といえます。その米国経済の低迷により、メキシコ経済は打撃を受けてきました。しかし、2014年の米国経済は2・2%、2015年には3・0%の成長が見込まれており、メキシコにとっては朗報となっています。

(2014年12月現在)

 

ジェトロ海外調査部国際経済研究課・中南米課
水野 亮

 

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