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TAKARA SAKE USA Inc. 仲 義博 社長

「美味しそうな」ではなく、 「本当に美味しいお酒」を
TAKARA SAKE USA Inc. 仲 義博 社長

「美味しそうな」ではなく、 「本当に美味しいお酒」を 
TAKARA SAKE USA Inc. 仲 義博 社長

今月の人

January, 2015 Issue 「Kigyo Gaikyo News」

食品もお酒も薬品でも微生物から造られる」この事実に興味を覚えて微生物・発酵工学への道を選んだ。
仲さんが宝酒造に入社した頃は、酒造りの世界で杜氏が神として君臨し、彼らの経験や勘から良い酒が生まれると考えられていた。しかし、実際には、杜氏による酒造りから、科学的な手法を用いての酒造りへ変わって行く過渡期であった。
洗米に適したスピードや温度管理を勘や経験だけでできるのか? 機械で測れば0・1℃の差でも常に的確に管理することができる。
それならば、温度計を使って最適条件で良いものを造った方が良いのではないか。ものづくりの原理を抑えて確実に再現する。改良を加えてより良いものを造り出す。この部分に技術者としての大きなやりがいを感じた。「美味しいものは、できるべくしてできるものです。人間のなんとなくの勘や経験で造れるなんてことは絶対にありません」と断言する。
本社のあるバークレー工場では、主力の「松竹梅」を中心に様々な商品が造られている。水が程よく軟水で、きめ細やかな酒を造るのに適しており、何よりもお米が良い。ここで獲れるカリフォルニア米は、食べて美味しく不必要な粘り気もない。酒造りには非常に適している米だという。また、大吟醸で使用される山田錦も、現地の農家が丹念に作り上げ、大吟醸の香りに彩りを添えている。
「とにかく、自分が飲んで美味しいと思うものを造っています。8 ヶ月前に赴任してからも少しずつ味を変えて、お客様の喜ぶ笑顔を想像しながら造っています。
ちょっと気の利いたことをするだけで、ずいぶん味は変わるんですよ。料理と一緒ですね。パッケージやストーリーといった部分も日本酒を広めるのには必要ですが、それはコアである味があってこそ。二つが揃って初めて日本酒です。『美味しそうな』ではなく『本当に美味しいお酒』を造っていきたいですね」。

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 近年ブームの発泡酒においても、本物感の追求は忘れない。単純に炭酸ガスで割り、香料やフレーバー、砂糖などで味付けした商品が出回る中、同社の人気商品「澪(みお)」は、お米だけを原材料に、お米を活かしたマイルドな味わいを持つ。こうした造り手のこだわりに気付くアメリカ人も少しずつ増えてきている。「『吟醸は香りが高くて、その上酸味や甘味のバランスをとことん計算して造っているのか』と、造り手が酒に込めた想いを感じてくれる。驚くのと同時に、アメリカでの今後の日本酒の展開が、本当に楽しみで仕方ありません」と締めくくった。