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コンテンツ産業の挑戦 −クールジャパンの戦略を探る−

コンテンツ産業の挑戦 −クールジャパンの戦略を探る−

2015年4月号 「企業概況ニュース」掲載

日本経済を大きく支えるコンテンツ産業。インターネットの普及、デジタルへの移行などの時代にどう日本のコンテンツ産業を海外へ輸出していくことができるかが今後の日本の課題であ
る。事業展開するにあたり、日本はどのような取り組みを行っているのか。政府と企業が一丸となって遂行する「クールジャパン機構」を中心に、最近の動きを見ながら、海外市場へ向けた新たな戦略に 注目してみる。

 

政府との連携によるさらなる飛躍を期待
「クールジャパン」機構の後押し

2012年12月の安倍内閣の発足によってクールジャパン戦略担当大臣が設置され、そして2013 年11月、官民ファンドの「海外需要開拓支援機構(クールジャパン)が創設された。この「クールジャパン」は、アニメ、ドラマ、音楽等のコンテンツからファッション、食、リビングなどあらゆる日本の文化の魅力を海外へ向けての発信力を促進。そして、海外需要の獲得、そして日本の経済成長へと結びつけていくことが最終目的とする官民ファンドである。
海外需要を取り込む段階をクールジャパン機構は3つに分ける。①日本の魅力を発信することにより、海外において日本ブームを創出する段階②現地で関連商品、サービス等を販売する段階③観光政策などと連携しつつ、日本に関心を持った外国客を実際に日本に呼び込むことで消費を促す段階、それぞれの段階での支援を講じていく。
本格的な政府が骨組みとなるコンテンツの産業化として、具体的な投資対象の例としては、拠点となる空間(物理的空間/メディア空間)の整備・確保、M&A・合弁設立等を含めた海外需要の獲得・拡大潜在力ある意欲的な地域企業の海外展開などを間接的にサポートする事業としている。

同機構の取り組み期間は20年以内としており、発足時の政府の出資額は300億円、民間出資は85億円。出資企業はANAホールディングス、エイチ・ツー・オーリテイリング、大日本印刷、髙島屋、電通 、凸版印刷、博報堂、D Y グループ 、パソナグループ 、バンダイナムコホールディングス、三越伊勢丹ホールディングス 、LIXI L グループ、J.フロント リテイリング株式会社、ジェイティービー、フジ・メディア・ホールディングス。
金融機関では、商工組合中央金庫、大和証券グループ本社、みずほ銀行、三井住友信託銀行、三井住友銀行と日本を代表する企業が名を連ねる。出資企業は随時募集しており、出資金総額は2014 年12月の時点で401億円まで達している。そして昨年、同機構は今後5年で1500億円を投資する事業計画を固めたと報じ、さらに活性化への意欲を示した。

┃ ジャパンコンテンツローカライズ/海外販路拡大事業
注力は映像コンテンツへ傾倒

日本製品の信頼性、品質の高さは世界全体に浸透している。家電、自動車などが果たしてきた 功績は大きい。しかし、アジア勢力が強まり競争も激化、一部の家電事業も米国で苦戦している状況下、これからの海外市場で生き伸びていくための武器はこれらの産業だけでは十分とはいえない。
『我が国のコンテンツは「クールジャパン」として海外からも高く評価されており、コンテンツ産業は、海外展開を通じた成長を見込める有望な産業』と日本政府がこう位置づけているように、コンテンツ産業に目を向け、ここにきて本格的に海外で収益を獲得していくことの重要さをあらためて実感する。
では、まずクールジャパン機構がどのような戦略を打ち出しているのかを見てみると、ひとつの有望事業として「映像コンテンツ」がある。
米国も全世界の憧れの国として見られてきた背景にはハリウッド映画の功績が大きかった。映画に登場するアメ車や街の風景など、スクリーンに魅力的に映し出されるアメリカに訪れたいという観光客は増加していき、ファッションや文化もブームを起こした。

韓国も、ドラマや映画、YouTube発信の音楽などを売り込んで、政府のローカライゼーションの補助金が70%という韓国は、一過性ともいえども韓流ブームを作り出していたことも記憶に新しい。映像というメディアの力を通じて、どう日本に流入する仕組みを作っていくかということがコンテンツ産業の大きなウリとなる。
クールジャパン機構では、日本のアニメや映画を放映するチャンネルを使って関連商品を販売する事業「ジャパンコンテンツローカライズ・海外販路拡大事業」を発動した。そして早速、2015年2月にイマジカ・ロボットホールディングスと住友商事の共同で、映像コンテンツに吹替・字幕を付けるサービスなどを行うローカライゼーションでは世界最大手の米国企業、SDI Media Group,Inc. の100%株式の取得に合意したことを発表。SDIの80言語以上に対応したローカイズノウハウを取り入れ、、37カ国の拠点および150か所の自社スタジオ等による現地メディア・放送局等との流通網の活用を目的として、子会社化に至った。
これによって、テレビ番組やアニメ、映画などのジャパン・コンテンツの全世界を対象としたローカライゼーションのコスト削減、品質、効率が改善され、販路開拓機能も充実させるという効果が狙う。同社の従業員数は約1100人、年間の売上高は200億円に及ぶという。同件の取得価格は総額160億ドル(190億円相当)でそのうちクールジャパン機構は59.5億ドルを出資した。

クールジャパン

 

◇正版アニメ関連ネット販売
全世界海外に向けて正規版日本のマンガ・アニメ等のポップカルチャーの魅力を多言語で発信する、動画配信、メディア・EC事業で、日本アニメ産業の海外展開でアニメーターの出口の拡大を目的とする総事業費50億円をかけての事業だ。国内のアニメを海外に配信する新会社をバンダイナムコホールディングスなどと設立することを決めた。

◇ジャパンチャンネル
2015年5月の1日付けで海外向け日本コンテンツ配信の強化を目的とした新会社「WAKUWAKU JAPAN」を設立することをクールジャパン機構は発表した。
新会社は7月1日付でスカパーJ と クールジャパン機構を割当先とした第三者割当増資を実施する。出資額は110億円で、ス カパーJが60%、クールジャパン機構が40%を出資するという。今までは東南アジアで展開してきた同事業だが、2020年までに世界約22カ国で展開することを目標に掲げた。

日本文化の価値が高まる風潮
好機はこれから

日本は品質の高いコンテンツを抱えているにもかかわらず、それをうまく海外に向けてプロモーションが出来ていない、本当の価値を活かしきれていないという残念な結果に終わっていた。
いくつかの静かなブームを起こしながらも、やはりオタク文化の枠を超えず、ニッチな市場で苦戦をすることが多かった。
さらに、確実に官民連携で成功した韓国などに押され気味で、海外に進出しても資金不足を理由に撤退するベンチャー企業・中小企業も多々あった。よって、このような政府と民間企業に依拠した本格的な産業の掘り返しは、 大きな飛躍へと繋がる。
クールジャパン機構を推進する経済産業省は、今までのメディア・コンテンツ産業の足かせとなっていた海賊版に対しても、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)を通じて対策に力を入れていく。さらに、度々問題視される基盤整備についても、現地ローカル企業への支援やグローバル人材の育成のため、留学支援なども行っていく施策も同時に打ち出している。
クールジャパン機構に経済成長への大きな糧となる日本への観光事業への集客のフォローアップとして、日本政府観光局(JNTO)の業務提携も実現し、ここ一年の間に九州や北海道の地方との業務連携も果たした。
和食がユネスコの無形文化遺産に、そして富士山が世界文化遺産として登録されるという日本のイメージアップに繋がる嬉しいニュースが続き、また円安傾向、そして2020年の東京五輪が決定した。デジタル化、インターネットの技術高度化などの追い風が強い今こそが、日本の文化の魅力を伝える上でコンテンツ産業は、さらなる経済成長を拡大する絶好のチャンスかもしれない。

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