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国連日本政府代表部にて初めての開催

NY女性からだ会議2017
国連日本政府代表部にて初めての開催

一般社団法人シンクパール主催で、女性が活躍する社会を目指すヘルスケアセミナー「NY女性からだ会議2017」が国連日本政府代表部の会議室で3月23日に開催され、ニューヨークで働く総勢32人の女性が集まった。

司会はFCIのニュースキャスターである久下香織子氏が務め、ゲストに子宮頸がんの撲滅に向けた予防啓発活動を行うInternational Cervical Cancer Prevention Associationのディレクターのドクター、フィリップ・デビース氏、日本の女性医療のパイオニアである産婦人科医の対馬ルリ子氏を招き、それぞれ「子宮頸がん」における医療現場からの現状や病気の概要を説明。そして両者ともいかに予防・検診が重要かを口を揃えて強調した。

そして、厚生労働省がん対策推進協議会の委員であり、シンクパールの団体代表の難波美智代氏を交えてパネルディスカッションが行われ、欧米と日本の病気に対する考えの相違が浮き彫りになり、あらためて女性の健康について考えさせられた。

20~30歳代に増えており、日本では一年に約1万人が発症、毎日10人ほどが亡くなっている「子宮頸がん」。性交渉によりヒトパピローマウイルス(HPV)に感染すると数ヶ月から10年程度でがんが発生することがあるという。「ウィルスに感染しても前がん状態になっても症状がないのが特徴です。この前がん状態を早期発見して進行がんになるのを防ぐ。だから検診はとても重要なんです。」と対馬氏は語る。

自身が36歳の時に子宮頸がんを患ったという難波氏は、「私は全く自覚症状がなくてたまたま受けた検診で見つかったんです。がんは早期発見でしたが子宮を全摘出しました。そこで初めて子宮頸がんが何かを知って。考えてみたらこんなにありふれたがんなのに、学校でも学んだ覚えもなく、気軽に情報にアクセスする手段もない。まして、日本は国民皆保険制度があるので、病気になっても病院に行けば直してくれるという感覚が強くて、残念ながら予防に対する意識がほとんどなかったんです。」と日本と海外との女性の健康管理に対する考えの違いについて指摘した。

 

ワクチンへの世界と日本の異なる捉え方

また、日本で話題となった子宮頸がんワクチンについて対馬氏は「世界は接種率がどんどん高くなっているので、同時に子宮頸がん、また前がん状態も減っています。日本では副反応の問題で推奨が中断されていますが、世界の常識からするとナンセンスです」
難波氏は、「政府的にも副反応の問題で推奨しませんという立場を取っているんですが、その一方で私たちはワクチンを打つか打たないといった自己決定できる知識がないんです。私たちができるのは、知識を高めていくこと。自身が健康リテラシーを高めていくことが必要です」。デビース氏は「日本がワクチンの推奨を中止するのはおかししいです。副反応だというエビデンスも立証されておらず、安全です。なぜ日本で普及が止まっているのか理解できない」と意見を述べた。

日本以外の先進国はワクチンを推奨している。米国では女子が63%、男子が50%と接種率が高い。もちろん、ワクチンを接種しても検診は受けなくても良いということではないが、検診の間隔を空けることはできる。また、ワクチンは若い人だけに効果があるものと思っている人が多いが、10歳から45歳の人が推奨年齢だということが分かった。

 

身近な病気だからこそ必要な確かな情報を

「HPVはとてもありふれたウイルスなので性交渉を経験したことのある女性の約80%が一度は感染をしていて、感染した1000人のうち1人の割合でがんに進行していきます。知れば知るほど身近な病気であるのにもかかわらず、こんなにもワクチンや検診に関して必要な情報が認識されていないというのは恐いことです」と対馬氏。

最後に難波氏は、米国での初の開催となった記念すべき回に参加したニューヨークの女性に向けて「海外にお住まいの方は日本へ帰国の際に検診されると聞きました。異変があっても次の帰国の時に検診すればいいやと思っていると遅れてしまうこともあります。子供や仕事のことが優先になって、どうしても自分のからだは後回しになりがちですが、自分のからだを守ることは大切な人を守ることに繋がります。ぜひ、自分のからだと向き合ってメンテナンスを習慣にして欲しいです」とメッセージを語った。

世界的に活動するInternational Cervical Prevention Associationとシンクパールが今後、子宮頸がん予防啓発プロジェクトの活動の連携をすることが決まり、その調印セレモニーも行われた。デビース氏は「この提携によって、より大きなインパクトが与えられる。お互いの支援によってこれからもっと活動の場が広がっていくと思います」とコメントをした。40代の参加した女性は「今まで検診を受けようと思ったことがなかった。すぐにでも受けたいと思いました」と感想を語った。女性が活躍する今だからこそ真剣に踏み出す「女性のからだの未来のために大切な一歩」の機会が与えたられた貴重なイベントとなった。

 

参加者を証人に調印セレモニーを行ったDr. Philip Davies Directorとシンクパール代表理事の難波美智代氏。

 

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Dr. Philip Davies Director, International Cervical Cancer Prevention Association:
何年に渡り欧州において子宮頸がんの予防啓発活動に尽力。2003年、欧州における子宮頸がん撲滅に向けた公衆衛星戦略の発展を目的としたEuropean Cervical Cancer Association(ECCA)を設立。2016年、欧州域外の活発な活動をふまえてInternational Cervical Cancer Prevention Associationに変更。現在、欧州34カ国において約120の組織会員(公益財団、NPO、NGO)を擁する。

産婦人科医 対馬ルリ子:医療法人社団ウィミンズ・ウェルネス理事⻑。対馬ルリ子女性ライフクリニック 銀座院⻑。2003年に女性の心と体、社会とのかかわりを総合的にとらえ女性の生涯にわたる健康を推進するNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立 全国約600名の医師、医療保健関係者と連携し、様々な啓発活動や政策提言を 行っている。

一般社団法人シンクパール 代表理事 難波美智代:女性からだ会議ファウンダー。厚生労働省がん対策推進協議会委員。学生から社会人まで女性の健康のキャリア、社会に関するセミナーやシンポジウムを開催。