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移民制度改革による影響とは?

 

2014年11月20日にオバマ大統領が移民に関する大統領令を発表しました。この大統領令は、約500万人の移民に影響があると言われています。背景として2013年に移民法改正法案が議会に提出されたのですが、両党の合意を得る事がまだ実現せず改正法案は足止めされたままですので、行政の命令でできることをまず行おうというものです。共和党からはこの大統領令に対して反発の声が上がっており、議会で阻止しようと言う動きもありますが、議会で出来る事はこの大統領令に関する予算を認めない事ですが、元々移民関係の資金は申請者の手数料で賄われていますので、実際に阻止する事は難しいと予想されています。

 

UPDATE 1 【Deferred Action】

さて、気になる内容ですが、最も多くの人に影響があるのは市民と永住権者の子供のいる親で2010年以前から米国にいる不法滞在者にDeferred Actionを認めると言うものでしょう。Deferred Actionとは、テクニカルには合法なステータスを与えるものではないのですが、強制送還の執行の順番を最下位に置く事で実質的に強制送還されないばかりか、どこでも合法に働ける雇用許可書と一時的な国外旅行許可書(advance parole) を与えると言うものです。

市民の両親はそもそも配偶者と同じ最近親者(immediate relatives)というカテゴリーで、不法滞在と不法労働は市民である子供がグリーンカードのスポンサーをする場合両方とも自動的に許される事になっているのですが、この大統領令と何が違うかと申しますと、まず、市民の子供は21歳以上に達していなければならず、また、その親の不法滞在は米国入国時には何らかのビザで入管で審査を受け、後にオーバーステーなどで不法滞在になった場合にのみ許されるというものです。ですので、メキシコなどの国境を越えて不法入国した者は、たとえ市民の配偶者や両親であっても特別なウェイバーを認められない限り何年もの国外退去を経ないとグリーンカードが与えられない仕組みでした。また、オーバーステーの場合であっても、子供が21歳になる前に強制送還される危険性も常に存在したわけです。 それが、実質的に許されるようになるということで、実施は11月20日から180日以内とされています。

次に、同じくDeferred Action ですが、子供の頃に入国した不法滞在者にはこれまで(1)16歳未満で米国に入国し、(2)2007年6月15日以前から続けて米国に滞在しており、( 3)1 9 8 1 年以降に生まれ、(4)高校卒業程度の学歴または学力のある者にDeferredAction for ChildhoodArrival( D A C A ) を認めるという2012年の大統領令がありましたが、今回、( 3)の年齢制限を撤廃し、また、( 2)の基準日も2010年1月1日と改められました。そうすると、基準を満たしていれば現在40代でも50代でもこの対象になるわけです。 また、Deferred Actionには、隠れた大きなベネフィットがあります。移民法の原則は、現在合法で有効なステータスを維持していない限り、他のステータスに変更したりグリーンカードを米国内で取得したりする事はできませんが、過去に不法滞在したことがあっても、現在の米国滞在が合法であれば一般的にそれは可能となります。Deferred Actionで発行される国外旅行許可書は、advance parole と言ってグリーンカードを申請中の人が使うものと全くおなじなのですが、これを使って、国境を越えて不法入国した者が国外旅行をして米国に再入国すると合法に入国したものとなります。まだ一般化はされていませんが、この法律的な考え方を認め、雇用ベースでのグリーンカード取得を認めた判例も出ています。いかに素晴らしいベネフィットがあるとはいえ、Deferred Action とは強制送還の対象である不法滞在者に変わりはないのですが、合法滞在への道も開けると言う画期的なベネフィットが恒常化する可能性もあります。

しかし、そもそも日本の方は他国の出身者に比べ著しく不法滞在者は少ないです。毎年60万人程度いる強制送還の最終命令を出された不法滞在者のうち、日本人は概ね30人台です。網にかかっていない者も含めると、不法滞在者全体が1200万人程度と言われていますので、単純に20倍しても全国で600人程度でしょうか。

 

UPDATE 1 【Deferred Action】

しかし、日本の方に最も影響があると思われるビジネス関係でもいくつか新しいものがあります。まず、グリーンカードの申請のステップの最終段階として米国内で全てを完了する場合adjustmentof status というステップがあります。これは、ビザナンバーがcurrentにならないと申請できない仕組みですが、現在、EB -3の熟練労働者及び非熟練労働者のカテゴリーで日本の方もビザナンバー待ちがあります。今回の大統領令では、I -140のimmigrant petition が許可されていれば、ビザナンバーに関わらずadjustment of status が申請できる事になる予定です。

このadjustment of statusの申請には多くの付随ベネフィットがあります。まず、申請中は特に他のビザステータスが必要なくなります。そして、付随ベネフィットとして雇用許可書と旅行許可書が与えられます。さらに、American Competitiveness inthe 21st Century という法律で、この申請が180日以上ペンディングであれば、同じような職種であれば転職をしてもそのままグリーンカードの申請を続けられると言うものです。これには自営業も含まれますし、転職先はLabor Certifi cationで宣誓した平均賃金以上の支払い能力がなくても可とされています。しかも、元のスポンサーをしてくれた雇用主がI -140を途中で取り下げたり、許可された申請を撤回しても、前者はおそらく許可されたと考えられることが条件となりますが、そのまま有効に申請を続けられると言う特権なのです。ただし、グリーンカードを実際に与えられるのはビザナンバーが来てからです。

また、近年非常に審査が厳しくなって不評だったL -1B、企業内転勤者のうちの基幹労働者のカテゴリーで、いったい何をもってその会社に必要不可欠とするのかという要件を明確化することとされています。要件が明確化されていないということは、同じような申請をしても許可されるかされないか常にリスクを抱える事になりますが、その不安定性がましになるだろうというものです。
そして、H カテゴリーの配偶者であるH -4に雇用許可書を与えると言うものがあります。現在でもE、L、Jなどの配偶者には雇用許可書が発行されますが、これをHにも拡大しようというものです。以前の改正試案にはOとPも含まれていたのですが、今回は見送られたようです。

さらに、雇用ベースステップの一つであるLabor Certifi cation ( PERMと呼ばれる事が多いです)の審査基準を見直すと言うものがあります。以前は単なるタイプミスであっても、2年も待たされた挙げ句却下されるという危険があったのですが、もう少し緩くしようというもののようです。
また、現在、雇用ベースの中でも起業家は非常にグリーンカードを取得するのが難しい立場にあります。これについても、ビザ無しで臨時の入国許可を与える制度、また、自己申請の一つであるEB -2のnational interest waiverのカテゴリーで起業家の基準を明確化するなどが含まれています。この辺りは日本の方にも多いに影響があるものと思われます。

 

寺井眞美
ニューヨーク州弁護士
Law Offi ce of Mami Terai, P.C.
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