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下村会計事務所 米国公認会計士 下村 昌樹 氏

1. 州の課税権の拡大について

米国で法人が課される税金には、大きく分けて連邦税、州法人税、売上税及び地方税がある。この中で、近年、州法人税、売上税及び使用税の課税権を巡っては多くの州で課税ベースを拡大する税制改正が行われている。
一般に、米国内で複数の州において事業活動を行っている法人が、どの州に対し、州法人税・売上税及び使用税の申告及び納税を行わなければならないかは、法人が行う事業活動が州に事業関連性( いわゆる「ネクサス」) があるか否かによって判断され、事業関連性が認められる州に申告及び納税義務を負うことになる。
近年の税制改正では、州税務当局はこの事業関連性の概念を拡大することにより、課税ベースを拡大する傾向にある。このような傾向の背景の一つとして、近年の州の財政難に加え、インターネットを通じた電子商取引事業が増加傾向にあることが挙げられる。従来では、事業を行う州内に事務所、倉庫、設備など固定資産を保有し、あるいは給与の支払地がある等の物理的拠点がある場合に、事業関連性があるとして課税されていた。
しかし、インターネットを通じた電子商取引が増加するに伴い、事務所など物理的拠点を有さない法人に州税を課すことが困難となり、州税務当局にとって財政難の一要因となっていたのである。
そこで、これら財政難に伴う対応措置として新しい事業関連性の概念が生まれ、事業者が州内に物理的拠点を有していなくても、州ごとに定める一定の要件に該当する場合には、事業者は当該州において事業関連性があるとされ、納税の義務を負うケースが増加してきている。

2. 事業関連性の概念とは

ここで課税ベースを拡大する主な事業関連性(ネクサス) の概念について触れてみる。

(1) エコノミックネクサス    

エコノミックネクサスとは州内に物理的拠点を有さない場合でも、州の定める一定の活動があった場合に事業活動があったものとし課税する考え方をいう。
最近では後述のようにニューヨーク州においてこの概念がネクサスの判断基準として規定された。

(2)ブライトライン・エコノミックネクサス基準

Multi state Tax Commission (M T C )の公表する統一指針である。具体的には、①州内に5万ドル超の有形資産を有する、②州内で5万ドル超の給与の支払がある、③州内で50万ドル超の売上あるいは州内で全有形資産、給与支払総額又は総売上の25%超を占める、の3 つのうち、いずれかを課税期間に満たせば実質的なネクサスがあるとされる。例えば、カリフォルニア州では2011年1月1日よりこの概念を採用している( なお、①有形資産、② 給与、③売上の各金額基準についてはインフレ率を加味し、2014年度ではそれぞれ① ② については5万2956ドル超、③については52万9562ドル超と金額の改定が行われている)。

(3)クリックスルー ネクサス  
クリックスルーネクサスとは、インターネットを通じて州内の仲介業者から有償で顧客の紹介を受ける場合や、仲介業者が州外販売事業者に代わり直接または間接的に販売に係わる勧誘行為を行う場合にネクサスを有するとされ売上税の徴収義務を課されることとなるものだ。例えばウェブサイトのリンクを州内の事業者のホームページに載せてもらい、売上に応じて手数料を支払うようなケースである。全米では2008年にニューヨーク州が初めてクリックスルーネクサス規定を導入し、州最高裁判所でも合憲とされた。いわゆるアマゾン法だ。

(4)アフィリエイトネクサス
アフィリエイトネクサスとは州外の事業者が州内に拠点を置く1社又はそれ以上の自社の子会社等の関連会社が行った事業活動等について事業関連性を認め、州税の納税義務を負うことになるものをいう。最近の例では後述のニューヨーク州の事例をご参照。
( 1) 〜( 4)で見てきた課税の対象とされる事業関連性の要件は各州において個別具体的に規定され、各州ごとに異なるため、自社の取引が課税の対象となるか否か注意深く検討する必要がある。
又、事業関連性の概念拡大について実質的なネクサスの有無、違憲性が裁判で争点となることも多々あり、各州のネクサスの動向・適用状況について継続して注視していく必要があるだろう。 以下では最近のネクサスを巡る動向について見てみよう。

(1)ニューヨーク州
2014年3月31日、エコノミックネクサスの採用を含む2014年〜2015年予算がクオモ知事の署名によりリリースされた。ネクサス関連として挙げられるのは次の3点である。変更は2015年1月1日以後開始する課税年度より適用される。

①州内の物理的拠点の有無にかかわらず、課税年度中に州内の顧客に対して100万ドル以上の売上があれば州内で経済活動を行っているものとみなされ課税を受けることになった( エコノミックネクサス)。これに関連して、グループ企業の州内のメンバーが単独で100 万ドル以上の売上、もしくは州内の1万ドル以上の売上を有する数社のメンバーの売上合計が100万ドル以上となる場合にも同州に対しネクサスを有するとされる(アフィリエイトネクサス)。

②又、ニューヨーク州にてビジネスを行っているパートナーシップに対して持分を有している納税者は州内において経済活動を行っているものとみなされ同州に対しネクサスを有するとされた。従来の規定とは異なり、例外規定はない。

③加えて、クレジットカード事業者にもネクサス規定が拡大された。新規定の下ではクレジットカードがニューヨーク州の1000人以上の顧客に発行される、あるいは州内に一定要件を満たす加盟店を1000箇所以上有する場合には同州に対しネクサスを有するとみなされることになった。

(2)ニュージャージー州
ニュージャージー州では2014年6月30日、売上税についてクリックスルーネクサス法(2014年7月1日以降の売上から適用)が制定された。この規定は、前4四半期の州内の顧客への累計売上が1万ドル超となっているか否かで判断され、超えている場合には適用対象となる。

(3)イリノイ州
イリノイ州では2011年に導入され違憲とされたクリックスルーネクサス規定に変更を加える法案が、2014年8月26日、クイン州知事の署名によりリリースされた。今回の変更では、仲介者が州内で行う活動が、
合衆国憲法上のネクサスの基準を満たさないことを証明する証拠を提出すれば、ネクサスを有するとの推定に対して反証を挙げることが出来ることになった。新規定は2015年1月1日より適用される。

(4)その他
テネシー州、インディアナ州では2014年1月、売上税・使用税についてクリックスルーネクサス、アフィリエイトネクサス規定を加える法案を提出した。両法案とも年間売上が1万ドル以上の場合、ネクサスがあると推定されるものである。

又、オンライン販売業者大手のアマゾンは近年では主にテネシー州やフロリダ州などにおいて使用税の徴収を開始している。

 

注意) 本稿は米国法人税におけるネクサス等の一般的な内容について説明したものであり、参考目的の利用に限られます。

特定の目的への利用や専門的な判断材料としてのご利用はお控えください。

下村会計事務所 米国公認会計士
下村 昌樹 氏
www.shimomura-cpa.com
Tel : 212-974-6066

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