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ニューヨーク大学 歯学部 歯内療法科 准教授 岡﨑 勝至 氏

「予知性の高い治療」という 概念を日本の歯科界へ
ニューヨーク大学 歯学部 歯内療法科 准教授 岡﨑 勝至 氏

‖ NYU歯学部の質の高い歯科治療

全米で3番目に古い歴史を持つNew YorkUniversity (NYU)歯学部。大学施設内にクリニックを置き、歯の病気に悩む多くの患者の治療を続けてきた。研究・教育機関を目的とするため、その治療費は、開業歯科医の値段と比べて安めに設定され、歯科保険を持たない人や、低所得者層にとって非常にありがたい存在として知られる。もうひとつ、一般の開業歯科医と違う大きな点は、患者を治療するのがNYU歯学部の学生ということだ。
治療に当たる学生は、①まだ経験の浅い学生、②すでに歯科医のライセンスを持つが、専門医としての資格習得のために学ぶ学生の2通り。治療の難易度や状況に合わせて担当が決まり、治療ごとに教授のチェックが入るため多少時間がかかるが、費用を抑えながら質の高い治療を受けることができる。
岡﨑先生は、このNYU歯学部に所属する日本人ファカルティ4人の内の1人。歯内療法(ルートキャナル)を専門としている。一般歯科の先生では手に負えないような難しい症例、全身疾患を抱える患者はもちろん、歯科保険を持たず治療が受けられない患者、また英語での治療に不安を持つ日本人患者から寄せられる相談まで親身に相談に乗る。

 

‖ アメリカ歯科専門医プログラム

アメリカと日本歯科界の根本的な違いが「歯科大学院専門医プログラム」の存在。アメリカでは、米国歯科協会(ADA)が認める歯内、歯周、補綴、矯正、小児、口腔外科、口腔病理、放射線、公衆衛生等、全部で14分野に関して資格認定制度がある。特別な教育を受けた資格認定医でなければ、専門医として仕事をすることが禁じられている。現在、アメリカ歯科医全体の約20%が専門医の資格を取得しており、専門医を目指す歯科医師の数も年々増え続けている。
日本には、こうした臨床(患者の治療)に特化した大学院専門医プログラムや教育システムが十分に確立されておらず、ごくひと握りの勉強熱心な歯科医師が、その治療に当たる。
日本の歯科技工士の技術や研究論文は世界的にも高く評価されているが、臨床専門医養成教育に関して言えば、まだアメリカの水準には及ばない。「その原因は、社会制度や医療システムの違いです。日本にはごく一部の歯科専門医制度を除き、一般的な歯科治療でも 難しい病気の治療を担うトレーニングされた歯科専門医が諸外国には存在するという概念、そしてそのような専門的にトレーニングされた歯科医師が育つ土壌がありません。一般歯科医で治療が困難であれば、その道を極めた専門医に治療を任せる。この考え方が必要なのです」。

 

‖ 見た目と違う背景に気付けるか

セントラル・テンデンシー」という言葉がある。病気には、頻度と症状の幅があり、そのピークに当たる部分が「典型的な症状」として現れる。歯茎から出血し、歯がグラグラ動くといった症状が見られれば「これは病気だ」と容易に診断できる。
しかし、実際の患者は鑑別診断のグレーゾーンが広く、こうした典型的な患者には当てはまらない場合も多い。
こうした背景を念頭に患者を診察し、議論を重ね、ケーススタディを増やし、これまで大学で学んできた知識の枠から一歩も二歩も抜け出した、教科書には掲載されないようなことを教えられる教育の場が大切となる。
「見た目と違う背景に気付けるか。一般歯科医では診断が難しい症例を、専門医の先生と一緒に、患者を見ながら学ぶ。こうした教育の場の必要性を日本に伝えていきたい」。

 

‖ 予知性の高い治療

「診察には十分な時間をかけ、高品質な治療を行なう。そして長期スパンで見て、患者にとって最善の治療とは何か。最善の結果に少しでも近づけるために、医療者側である歯科医たちに『科学的根拠に基づく、予知性の高い治療を施す』という認識が必要です」。
若き日の岡﨑先生がそうであったように、アメリカに渡り貪欲に学び、そこで得た優れた教育や 知識、経験、そして人脈を日本歯科界の次世代を担う若い歯科医たちに教え伝えていく。そして、それが日本歯科界の活性化に繋がる。岡﨑先生の成し遂げたいことは容易ではないが、ゆっくりと着実に進んでいる。