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米州三井住友海上火災保険 社長兼CEO・尾之内 蔵夫氏

保険会社の目指す新しい形
米州三井住友海上火災保険 社長兼CEO・尾之内 蔵夫氏

正味収入保険料で日本国内首位に立つMS&ADホールディングス。2010年に、世界トップ水準の保険金融グループの創造を目指し、独自の強みを持つ三井住友海上グループ、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の3社が経営統合し誕生した。あえて合併という形は採らず、過去に例のないビジネスモデルで統合した同グループ、そして三井住友海上火災保険の戦略とは。

機能別再編
2013年の保険業法改正で、「機能別再編」というビジネスモデルにより、グループ保険会社各社の強みを活かしつつ事業再編を行うことが可能となった。お互いの強みを生かし、お互いが併存しながら統合していくかたちで、成長のスピードを止めずにお客様にサービス提供をできることが強みだ。海外事業や航空・貨物・船舶保険は、これを得意とする三井住友海上に、モーター関連や自動車整備工場のチャネルではあいおいニッセイ同和に集約し一元化する。ひとつのグループにふたつの会社があり、それぞれが強みを発揮できる場となる。お互いの強みを生かし、新しいシナジーを生み出していくことに成功した同グループは、グローバル社会において高い評価を得られるまでに成長した。

リスクマネジメント
どんな企業にとっても、避けられない何かしらのリスクというものが潜む。そのリスクをいかに未然に防げるかが企業の成長にとって重要となる、特に巨額な賠償責任リスクが潜在する米国では。そこでリスクの移転・回避・低減、この三つのバランスをよく考えたリスクマネジメントを提案し、お客様の企業活動をサポートする。
「例えば物流に関わる保険では、リスクの低減を図るため、我々が実際にトラックの助手席に乗ってカメラを回し、お客様に調査結果をレポートすることもあります。そうすることでよりリアルに道に潜むでこぼこやテロなどの危険区域があることを、お客様に伝えることができます。身をもってリスクの回避を全力でサポートしているのです」。

米国において注目度の高い保険、これからの新時代に向けた保険
賠償責任問題、特に生産物賠償責任保険(PL保険)や会社役員賠償責任保険 (D&O保険) に注目する企業が増えている。賠償リスクの高い米国では、こんな些細なことがこんな展開になってしまうのか、と目を見張ることもしばしば。万が一に備えることがとても大事だ。日本以上に、賠償責任問題においては過敏になっておく必要がある、と尾之内氏はアドバイスする。また、今後は車の自動運転に関する保険や企業の日常業務が電子データやコンピュータネットワークに依存する度合いが高まるにつれ、サイバー攻撃やデータセキュリティ侵害、データ流出対策に対するサイバー保険に企業の注目が集まると予測する。
「今までは自動車事故が起きた場合は運転手に責任がありましたが、自動運転の場合、どこに責任の所在があるのか判断するのが難しくなりますね。全てがプログラミングされた自動運転ですと、そのシステムを作ったメーカー側の責任になる恐れもあります。自動車保険をどう変えていく必要があるかは、我々がこれから考えるべき課題です」。

10年後に描いているビジョン
「どの国のどの地域のどのお客様が発した保険のニーズに関しても、同じレベルのサービスを提供できることがあるべき姿だと思っています。シンプルだけど簡単なことじゃない。企業品質の統一や事業の健全性を各地域で同じレベルに積み上げていき、強固な基盤と安定したビジネスが10年後にもできているよう、将来を見据えた人材育成や各国での企業価値を高める活動を着実に進めています。各地域で規制やニーズも違ってきますので、均一のサービスを追求するのは難しいのですが、それができたら10年後には全世界の名だたる企業に成長していると信じています」。

同社が行動指針として掲げている「お客様第一、誠実、チームワーク、革新、プロフェッショナリズム」を元に、きめの細かいサービスはもちろんのこと、米国でのプレゼンスを高める活動も精力的に行う尾之内氏。5月にセントラルパークで行われたイベント「JAPAN DAY」ではプレジデントを務め上げ、日系コミュニティの絆や日米市民の交流促進に一役買った。「ジャパンデー前日は大雨で心配していたのですが、当日は見事に晴れました。私は晴れ男って言われてますから(笑)。多くのお客さんが参加してくれて素晴らしいイベントになりました。またたくさんの日系企業が協賛してくれて、とても感謝しております」。

週末は家族でラグビー観戦を楽しむ元ラガーマン。一本、筋が通っているその姿勢は、学生時代にスポーツを通して磨かれた行動指針が今活きているのだろう。