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酒酔い人 19 – 日本酒はこれからも素晴らしい飲み物としてまた人に感動を与えれるツール

NYで18年間日本酒のインポーターとしてアメリカのレストランに日本酒を卸し、また実際に日本酒バーでソムリエとして日本酒をアメリカで売ってきました。
昨年帰国して念願のお店を東京でオープンさせて感じることを今回は書かかせて頂きます。
今日までオープンしてから来店して頂いた約7000人のお客様に、日本酒と料理のペアリングを提供してきた中、様々な反応を頂きました。
その中でも印象に残ったのが、東京農業大学の学生さんカップルが来店してくれた時の話です。
料理のコースとお酒のペアリングを今までやったことがないので是非試してみたいとの事で来店してくれました。コース料理と日本酒がこんなに引き立て合うペアリングに感動して大変喜んでくれてました。
その時、男性の方から「赤星さん。お願いがあるのですが最後の一杯にこのお酒を飲んでみたかったのですが、お恥ずかしい話、お金が足りないので2人でひとつのグラスを分けていいですか?」
もちろん私は即答で「大丈夫です。」と答えました。その後小さい声で「暫くはラーメンはお預けでお金貯めようね」と彼女がうれしそうに喋っていました。
その光景をみて私は将来日本酒を背負っていくのはこういう若い人だと確信しました。どれほどうれしそうな顔で美味しいねといいながら日本酒を飲まれていたか。
帰り際には、「また来年同じ日に来てもいいですか?また今日のペアリングの感動をお願いします!とおっしゃって頂き、なぜかこちらが心が熱くなってしまいました。

前回の記事でも書かせて頂きましたが、日本酒とは人に感動を与えるツールのひとつだと考えます。料理がそこにあって日本酒が寄り添いそこに感動が生まれる。
私も麻布十番でお店を1年やらせてもらい、毎日の忙しさの中で途中で自分を見失ってしまったことがありました。
常に最高のサービスとレストランの質を上げることばかりに固執してしまい、本来の日本酒のすばらしさを伝えるということにどこかズレていました。
そんな時それを分からせてもらったのもお客様でした。

ある常連のお客さんから「赤星さんに紹介したい人がいるのですが」と言われました。その人は蕎麦屋さんで働いている方で最近、日本酒の素晴らしさに惹かれ、
日本酒をどうやってお客さんに広めていったらいいかをいつも考えている」という悶々をその方のFBの記事で見せてもらいました。
その純粋な日本酒を人に伝えたいとの気持ちが文章からも伝わってきました。思わず涙が溢れそうになりました。
私が本来やりたい、また日本に帰ってきて日本酒に携わる仕事をしたい原点がそこにあったことを気づかせてくれました。
現在若い方のアルコール離れや日本酒の消費量が減ってきていると言われますが、まだまだこの様な若い方々がいる限り、
日本酒はこれからも素晴らしい飲み物としてまた人に感動を与えれるツールとして広まっていくと確信しています。


赤星慶太
兵庫県神戸市出身。高校卒業後、日本ソムリエスクールに入学、きき酒師、ワインソムリエの資格を取得。
その後渡米2015年7月に東京麻布十番に厳選日本酒150種類を取り揃える。日本酒と料理のペアリングを重視したお店「赤星と熊谷」をオープン。