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『マンガ』が変えた米国市場と拠点の役割
講談社 代表取締役社長 野間 省伸 氏

米国からの世界への発信威力は絶大――
『マンガ』が変えた米国市場と拠点の役割
講談社 代表取締役社長 野間 省伸 氏

米国からの世界への発信威力は絶大――
『マンガ』が変えた米国市場と拠点の役割

講談社
代表取締役社長 野間 省伸 氏

講談社USA., Inc.
代表取締役社長 CEO 古川公平 氏

「セーラームーン」「進撃の巨人」「攻殻機動隊」や村上春樹の英訳文学などで、米国の出版業界でも大きな存在感を示す講談社が、2016年9月、米国進出50
年を迎えた。それを記念し、ニューヨークパブリックライブラリーで祝賀パーティが開催され、同社第七代社長の野間省伸氏が訪米。現在の米国出版市場について、講談社USA., Inc.の社長、古川公平氏と共に話を聞いた。

 

――御社における米国市場についてどう見ていますか?

野間氏:「やはり電子部門はマンガを中心に順調に伸びています。*コミックソロジーなどでの電子配信や、公共図書館などが電子部門でマンガを読めるといった米国には日本にはない環境があります。米国市場は非常に重要です。昔、英国に住んでいたことがあるのですが、米国は日本でいう東京みたいな存在です。東京で成功すれば全国区になるのと同じで米国は世界の中心で、市場をきちんと形成すれば、それが世界にあっという間に広がっていきます。マンガの情報発信も拡散される威力が大きいですね。」

 

――コンテンツ産業の現状については?

野間氏:「紙の出版は確かに売り上げは落ちています。しかし一方で電子書籍は伸びています。紙の落ち込みを電子書籍がカバーするくらいの勢いです。もちろん、このまま紙が減り続けて電子が増え続けるということもないと思いますが、そこから我々がさらにアニメ、映画、商品、舞台といった作り出すコンテンツを多面的に展開していく。そのことによって収益に結びつく。いろんなカタチでコンテンツを認知してもらうということが重要になってきています。」

 

――やはりマンガやアニメの影響は大きいですね。

古川氏:「米国のマンガも2007年には一度落ち込みました。そこからの復活です。しかし、弊社から出版した『進撃の巨人(英題:Attack on Titan)』が全てを変えてしまったんです。アメコミファンが日本のマンガに興味を持つようになった。これは我々だけの改革じゃなくて他の場まで変えた、まさにエポックです。実は今、少女漫画の人気が凄いんです。『壁ドン』も理解してくれています。そういった漫画から生まれた日本独特の文化はすべてネットで広まっている。動画などから入って今まで一度も見たことがなかった人たちや2世代目のセーラームーンファンといった、新しい層を取り込んでいるような感覚があります。」

 

―――今までの講談社の米国拠点としての立場を振り返ってみていかがですか?

野間氏:「米国拠点の開設当初は生花、空手、和食など日本の文化を知ってもらうという使命で出版業を行っていました。そうしているうちに今では日本文化もだいぶ認知されるようになり、今ではマンガが主体です。弊社からも出版されていた村上春樹氏の英訳小説は、そういった文化交流から始まったことが効果を上げてきていると言えますが、ここ10年ぐらいで収益化への仕組みに作り変えています。日本文化の需要もここ50年で変わってきています。マンガや小説で財務的基盤も確立されるからこそ、そういった意味でも米国の拠点の役割というのが大幅に変わりました。」

 

――米国市場への今後の期待はいかがですか?

野間氏:「米国の規模はとにかく大きい。今はフランスを抜いてコミックの売り上げは1位です。アメリカ全体で広がりつつあります。来年の3月に弊社が原作を出版している『攻殻機動隊/ Ghost in the Shell』のハリウッドによる実写版が公開されるので、ここからさらに各国、各地域で新しいコンテンツが生まれると良いですね。それが日本に逆輸入できたらもっと面白いと思っています。」