Home > コラム > 在米日系企業のための組織・人事マネジメント
第4回 各職務をいかに定義していくべきか?
中尾国際人事コンサルティング
オーナー/国際人事コンサルタント 中尾 和伸

在米日系企業のための組織・人事マネジメント
第4回 各職務をいかに定義していくべきか?
中尾国際人事コンサルティング
オーナー/国際人事コンサルタント 中尾 和伸

日本の伝統的な人事制度は役職と資格を分離する職能資格制度が中心であり、各職務の内容が明確に定義されない場合が多い一方、米国の人事制度は職務等級制度が主体であり、各職務が明確に定義されています。

そのため、米国ではジョブディスクリプション(職務記述書)の作成が不可欠になります(ただし頻繁に組織や職務の変更が必要な企業は例外)。ジョブディスクリプションの主な目的は、従業員に自らの職責を認識してもらうこと、その職責に基づき人事評価が行われること、その職責が基準となって基本給レベルが決められること、などです。

ジョブディスクリプションの作成には、事前に職務分析(Job Analysis)が必要です。職務分析は米国では「人事管理の要」と言われており、人事管理のあらゆる機能に影響を与えます。そのため、通常は客観的に職務を分析できる外部のJob Analyst(人事コンサルタント)を雇い、各部門の管理職や従業員を巻き込んで作業にあたります。

データの収集方法として最も一般的なのが質問表(アンケート)によるもので、管理職が管轄部門の各ポジションについて回答するか、各ポジションの従業員全員に書かせてから管理職が加除修正する形を取ります。質問表はジョブディスクリプションの作成を意識した内容にしておくことが大切です。

各部門から回収された質問表をレビューすると、記述の量と内容に相当なばらつきがあることが多く、また単純に必要な職責を書き忘れている場合もあるため、人事コンサルタントが一定の時間、各職務を観察・記録したり、追ってインタビューを行なったりして正確を期します。

このような作業によって集めたデータを分析し、組織・職務の適合性が確認されてはじめて、ジョブディスクリプションに落とし込めるようになります。もし組織・職務の適合性に問題があれば、職務内容・レベルの修正、職務の併合や廃止もあり得るでしょう。

ジョブディスクリプションの内容としては、タイトル(肩書き)、上下のレポーティングライン、職責のサマリー、具体的な職責、要求されるコアコンピテンシー・スキル・知識、必要な経験・学歴、労働環境などを含めるのが一般的です。

——————————————————————————

中尾 和伸

中尾国際人事コンサルティング

オーナー/国際人事コンサルタント

関西学院大学社会学部卒、ピッツバーグ大学経営大学院にてMBA取得。関西経営者協会(現・関西経済連合会)、デロイト・トウシュ・トーマツ等勤務を経て現職。米国、日本を中心に国際環境下での組織・人事コンサルティングを提供。

連絡先: 201-947-3651

knakao@nakao-ihr.com

%d