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TEIJIN FRONTIER (U.S.A.), INC.
President 杉本 泰樹氏

独自素材で巻き返しを
TEIJIN FRONTIER (U.S.A.), INC.
President 杉本 泰樹氏

代表を務める杉本氏が初めてニューヨークに赴任した2000年当初、ニューヨーク界隈ではスーツをカッコよく着る女性が街を闊歩し、婦人衣料業界には活気が溢れていた。しかし近年、アスレチック(運動競技)とレジャー(余暇)を組み合わせた「アスレジャー」という造語まで生まれるほど、ファッションの流行はカジュアル志向だ。ジムで着用するスポーツウェアを普段着として着ることがカッコいいという時代。カジュアル化へと移行する流行に伴い、とりわけ婦人衣料のキャリアスーツに使用される生地を多く取り扱ってきた同社では、当時の活気が薄れてきていると危機感を感じている。そんな中、救世主として今注目する素材が「ソロテックス」だ。

「ソロテックス」とは帝人フロンティアが開発した無限の可能性を秘めた繊維の名称である。ポリエステルの仲間で、ソフトな肌触りや快適なストレッチ性などの特徴をもち、形態回復性やクッション性にも優れている。そのため、シャツやインナーからスポーツウェアまで幅広い用途の商品に使われている。現在、日本では特にメンズブランド商品を中心に広く浸透し始めている素材だ。「日本では需要が高まり、『ソロテックス』の露出が増えています。このいい波をアメリカもに持ってきたいですね」と杉本さん。米国ではテキスタイル・アパレル部門と産業資材の2本柱の売上比率は4対6程度。テキスタイル部門の巻き返しを狙う。帝人フロンティア入社前は、あるスポーツメーカーでスキーウェアの開発にも携わっていた杉本さんは、衣料がいかにして出来上がっていくのかという工程を熟知したテキスタイルのプロだ。「ソロテックス」なら十分アメリカで戦っていける、とプロの目が光る。

今回が3度目の米国赴任。若い世代が海外で活躍したいと憧れるような会社にしていきたいと展望を語る。それを実現するために掲げるキーワードは「フェア」「透明性」「サステナビリティ」。
「渡米前の数年間、日本でCSR調達プロジェクトの室長を務めていました。縫製工場の労働環境や最低賃金などの改善に取り組んでおり、サプライチェーンの労働環境にまで配慮することの大切さを痛感しました。営業活動に負けないくらい意欲的に活動しており、ここで学んだ精神を、アメリカでもことあるごとに社員に伝えるようにしています。『安ければいい』はもう通用しません。いい労働環境がいい品を作るんです」。

米国では徐々に西海岸を中心として、衣料商品の価格の透明性が活発化している。ひとつの商品を作るのにかかった各々の価格を、全て消費者に開示するブランドまで現れている。過渡期を迎える衣料業界。開発力を強みとする同社にとっては、この流れは追い風となるに違いない。