シャープ・エレクトロニクス・コーポレーション
会長 シャープ・アメリカス CEO 河村 哲治 氏
1912年の創業以来、鉱石ラジオ、早川式繰出鉛筆、世界初ターンテーブル方式電子レンジ、太陽電池、電子式卓上計算機と、次々とヒット商品を世に送り出してきたシャープ。経営悪化により2016年には世界最大の企業グループ鴻海科技集団（フォックスコン・テクノロジー・グループ）傘下に入り、米州における「シャープ」、「ＡＱＵＯＳ（アクオス）」のブランド使用権も中国電機大手の海信集団（ハイセンス・グループ）に売却した。
一時は、米国での液晶テレビ事業撤退を余儀なくされたが、親会社フォックスコンによる北米での液晶ディスプレイ生産工場の新設が発表され、世界第２位の規模である北米市場への再参入に向けたシャープの動きに注目が集まっている。この大きな変換期の指揮を執るシャープ・エレクトロニクス・コーポレーション（米国シャープ）会長の河村哲治さんに、今後の展開についてお話を伺った。
液晶技術をＢtoＢ領域に活用
ハイセンス・グループに供与したブランド使用権の買い戻しなど、今はまだ係争中の案件ですので具体的には動けない状況ですが、新ブランドの立ち上げも視野に入れて着々と準備を進めています。問題が解決した暁には、シャープの技術を盛り込んだプレミアム・ラインで、一気に展開していくビジョンを描いています。最先端の８Ｋ高画質技術はもちろん、４Ｋも交えた幅広い商品群での展開です。
液晶を活かした技術としては、家庭内のテレビだけでなくプロフェッショナルＡＶと
呼ばれる世界にも注目しています。街に出れば、ホテルや駅、飲食店の固定ポスターやブリテンボードなどのサイネージが次々とデジタルスクリーンに置き換えられ、オフィスでは、テレビ会議システムがいつでもどこでも世界を繋ぎ、必要な資料を電子白板に表示し、共有を可能にさせています。液晶といっても、必ずしもテレビだけがオポチュニティではなく、こうしたＢtoＢ領域 ───「パブリック・サイネージ」や「スマートオフィス」分野での液晶応用商品に大きなビジネス・チャンスを感じています。
リソースを集約し、成長軌道へ
ここ数年は構造改革や経営再建で、「成長」に関しては目を瞑るほかありませんでした。しかし、フォックスコンの大きなコスト力、生産能力を支えに、今もう一度成長軌道へと舵を切るタイミングにきています。規模もバリューも共に伸ばすために、シャープ本社、工場に限らず、親会社フォックスコンのリソースも上手く呼び込み、集約し、それらを最大限に活用しながら成長スピードを一気に加速させていくことが、私の大きなミッションの１つとなります。
昨年の９月に３度目のアメリカ駐在となり、米国シャープとの付き合いは16年目です。これまではヨーロッパ地域のＣＥＯとしてロンドンに６年半駐在しておりましたので、海外生活は約23年となります。ヨーロッパと比べてアメリカは、「ワンサイズ・フィッツ・オール」─── 非常にシンプルでダイナミックだと思います。それ故のチャレンジも多くありますが、北米市場での主力事業となる ＭＦＰ複合機事業を中心に、新しい領域でのシェア拡大を図っていくことが、我々の成長には欠かせないのです。
ＡＩｏＴで、時代の流れに乗る
シャープの経営信条の一つに「誠意と創意」というものがあります。資本関係は変わりましたが、このＤＮＡだけはしっかりと受け継ぎ守っていく─── 社員全員が持つ認識です。「なるほど、シャープはこうきたか！」と唸らせるような製品を、もっと消費者の皆様にご紹介していきたい。オフィスの事務機器だけでなく日常生活でも、スピーカー、エアコン、照明、冷蔵庫と、電化製品が次々とネットワークで繋がっていく時代です。シャープではＡＩとＩｏＴを組み合わせた「ＡＩｏＴ」というコンセプトの下、巻き起こるこの大きな流れをしっかりと受け止め、うまく波に乗っていきたい。流れ込んで来る膨大な情報をどのように処理し、そしてどのように職場や生活改善に役立つアイデアへと昇華させられるか ─── 電機メーカーとして常に意識を持ってウォッチしていこうと、いつも自らに言い聞かせています。
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昨年、米国シャープは、ニュージャージ州マウワーからモントヴェールへと本社を移した。ディスプレイやＭＦＰ複合機をはじめとするシャープ製品群をネットワークで繋ぎ、社員自らが実際のスマートオフィス環境をライブ感覚で体験しながら働く。会議室の予約やテレビ会議は当然ながら、広々と設けられた共有スペースからでも必要なデータに自由にアクセスできる。こうした従業員一人ひとりのポジティブな意識や姿勢が、より効率的で快適な空間を作っていく。
2018年、シャープの目指す未来へと、時代が一気に動き出す。
