Home > Featured > IT物流変革

新時代のグローバルロジスティクスソリューション

あらゆる業界がテクノロジーの進化によって大きな変革を迫られている。その業界すべての基盤ともいえる「物流」業界にも新たな動きが見られる。新時代へ向けた様々な企業が挑むグローバルロジスティクスソリューションの最新動向に注目してみた。

オンラインショッピングなどの米国のeコマースの市場規模は、*2020年までに5,300億ドルにまで成長が見込まれ、物流業界でも持続的な市場拡大が期待されている。それと同時に配送サービスの迅速化、効率化、在庫管理の整備などのシステム向上は加速しているのが現状で、配送サービスへの期待値は全体的に底上げされ、費用対効果も限界に到達しているという側面もある。同時に荷量の増加、人手不足という問題が上がる真っ只中、大きな変革をもたらすソリューションとしてロボット化やデジタル業界との業務提携や新事業の参入により、物流業界全体に荒波が起きている。これまでのロジスティクスという概念を覆し、社会的基盤をも揺るがすほどの変革が業界全体に求められている。
資料:* 「Forrester Research」 Uber-ization of freight ” or about” sharing economy ” delivery models.

人とスマートフォンの距離はさらに身近なものとなり、いまや全世代の半数以上がスマートフォンを持つ時代。こうしたマルチデバイスと物流システムのコネクトは避けられない。さらに、IoTやAIを駆使したロジスティックはさらにユーザー体験に大きな変化をもたらすといわれている。「IDC Manufacturing Insights report」によると、2018年までに製造業界全体の30%がデジタルを駆使した物流に投資拡大する計画があり、2019年までには75%の大規模な製造業者がIoTのオペレーティングモデルへのアップデートを実行するという予測分析を出している。

米国のトラック輸送市場は約7,250憶ドルといった大規模の市場を誇る。トラック市場でもデジタル化は進んでいるが、まだ黎明期に突入したところだ。サプライチェーンの効率化や可視化や質や安全性の高さが求められ、顧客の多様化、過度なカスタマイズ、人手不足といった様々な課題を抱える同業界は、これらに対応できるIoTやデジタル技術革新は、激しい競争に打ち勝つための絶好の機会を与えると言われている。


デジタル × 物流の次世代をリードする
新事業とスタートアップ企業

輸送車両の安全機能や効率化を実現するための双方向通信システムを搭載し、リアルタイムで情報提供を行う『テレマティクス』は、物流市場の未来を明るくする最強のサービスとして、急成長している分野である。**主要先進国におけるテレマティクス市場は今後10年で約1,800億ドル近く拡大すると予測されている。スタートアップ企業をはじめとして大手の情報通信プロバイダーが市場拡大を狙ってしのぎを削っている。米国では通信業界で最大手のAT&T、Verizonをはじめ、TomTom、Trimble Navigationなどが主要プレーヤーだが、最近ではレンタカー会社のエンタープライズ社がテレマティクスを駆使した商業用トラックのレンタルサービスを開始した。安全性を確保したドライバーのコーチングやパフォーマンスのレポート、燃料量のモニタリング、ルート検索サービスなどトラックをリアルタイムのトラッキングが可能になり、モバイル機器から簡単にアクセスができるというサービスが売りとなっている。

米国のスタートアップ企業も物流業界に参入し、新風を巻き起こしている。Expeditorsは、シアトルに本社を置くグローバルロジスティックスのサービスを提供するサービスベースの企業で、現在は107か国にオフィスを構え、グローバルネットワークを通じて、一元化技術システムにより、顧客のニーズにカスタマイズしたサプライチェーン・ソリューションを提供している。倉庫や在庫管理から輸送・配達を合理的なコストで手配、ロジスティックスシステムを構築。ロジスティックスを専門とするIT技術者がトータルでサービス提供を行うことを強みとしている。サポートする業界は小売、製造、ヘルスケア、自動車、エネルギー、航空・宇宙まで多岐に渡る。

近年Uberなどで話題のビジネスモデル『シェアリングサービス』も物流業界に参入してきた。Cargomaticはリアルタイムでトラックドライバーと送り主をマッチングさせ、集荷・配達のシームレスサービスを提供し、成功を収めているスタートアップ企業だ。今後もこのビジネスモデルはさらに広がる可能性を秘めていると言われている。
資料:The Global Automot ive Telematics Market

 

住友商事も今年の夏に米国事業用トラック輸送向けのデジタルマッチング型物流ブローカーへの出資を行っている。出資先は「Transfix,Inc.」という、ニューヨークに拠点を置くスタートアップ企業だ。オンラインで荷主とトラック業者の需給をマッチングしてくれるだけでなく、荷主やトラック業者がPCやタブレットや携帯端末を使って貨物の所在地をリアルタイムに確認が可能になり、業務管理や改善が実現できるという画期的なシステムだ。住友商事による投資額は数億円規模に及ぶという。

豊田自動織機も北米の大手物流システムインテグレーターのBastian Solutions LLC を買収し、北米での物流ソリューション事業に本格参入することを今年の2月に発表した。Bastian社は、米国に拠点を置く物流システムインテグレーターとして、倉庫内物流機器の制御および管理を行う優れたソフトウェアの開発力を有している。世界シェアナンバーワンのフォークリフトメーカーである豊田自動織機が、デジタル領域での物流ノウハウを持つこうした米国企業との事業提携により、さらなる事業拡大をグローバルネットワークを基盤に図っていく。

そして、楽天も米国の物流会社Webgistix社を買収した。子会社である楽天物流株式会社を2010年に設立している楽天だが、クラウドベースのフルフィルメントサービスを提供するWebgistix社のサービスを取り入れることによって、米国で展開する「Rakuten.com Shopping (https://www.rakuten.com/)」における、出店店舗の物流・配達面のサービス向上の強化を日本を含めた全世界規模で行っていくという。

 

今年の11月に日本で開催された「EC物流フォーラム2017」で、バックヤード業務を一元化したフルフィルメントサービスで注目を浴びているアッカ・インターナショナルの加藤大和社長は、「AI搭載ロボット導入は人件費などのコストを30%削減、また約5億円に相当する500台のロボットの投資で年間3億円の削減ができる」とコメントした。アッカ・インターナショナルは、小売業を主にフルフィルメントサービスを提供するプロバイダーで、今年の秋に中国の最大手のEC事業を保有するアリババグループが採用しているAI物流ロボットを導入したことで話題となった。

今年の9月にアリババは今後5年間で約152億ドルを物流ネットワークに投資すると発表したが、今後も効率化、コスト削減を目指すべく、ロボティック・ロジスティックスの展開を積極的に行っていく姿勢だ。このアリババとアッカ・インターナショナルが採用したAI物流ロボットは、中国のギークプラス社が製造・販売を行っており、在庫のピッキング作業と入荷時の棚入れ作業を自動化。人材削減と作業効率が6倍以上に改善されるという。同社は今年の8月に日本法人を設立しており、世界各国で注目されている。配達業務におけるロボット化の開発も進んでいる。アマゾンがいち早くドローンの採用を試みているが、様々な企業が宅配活用を視野に入れており、また、自動運転技術を駆使した自動宅配ロボットの実用化も進んでいる。技術向上、安全性の確保や法的整備にもう少し時間を要するが、成長余地が大いに期待できる分野である。

日本でもアマゾンなどの大型ネットショッピングサイトの売上増加により、ヤマト運輸や佐川急便の配送運賃の値上げで騒然となっているが、米国も同様の問題を抱えている。数年前にもeコマースで購入した商品の配達がクリスマスに集中し、UPSが20%弱、フェデックスが約10%の荷物を希望の届日に間に合わないという事態が起きた。こうした事態を未然に防ぎ、年末商戦においての売上増加への対策として、UPSは今年、約9万5,000人の人員増加を行ったが、それでもまだ問題解決には至っておらず、配送の遅延は避けられないという。こうした深刻な市場環境はさらに今後も表面化されていく恐れがある。これに対して、物流業界はデジタル化へ対応、そしてロボット化への対策は急務に迫られてる。

今後は、最先端の技術をどのように従来の業務やシステムに取り入れていくか、それに対する導入費用をどう回収できるかが、物流業界において中核テーマとなることは間違いない。