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《HRM Partners, Inc.》

米国人事労務管理 最前線
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新しい雇用・ 労働関連法

HRM Partners, Inc.
President and COO 三ツ木   良太

新しい雇用・労働関連法の法制化が動きを見せ始めていると感じています。オバマ政権時も連邦議会のねじれのために連邦レベルで新法案の施行が止まることは多く見られました。そのため、州や市のレベルで法制化を進める動きはありました。新政権になってからは連邦議会のねじれはないものの、政治・経済・外交等の国全体の動きを注視していたところから、いよいよ州や市が動きを再開させてきたといった感じです。中間選挙の結果次第では、連邦レベルを含めて、その動きが加速すると考えられます。その中でも特に大きいものとしては、女性の権利尊重・地位向上の動きがあげられるでしょう。具体的には「セクシャル・ハラスメント(セクハラ)防止の強化」です。

ご存知の方も多いと思いますが、昨年、ハリウッド大物映画プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタイン氏のセクハラ騒動に端を発し、その後、「#MeToo」ムーブメントとして全米にセクハラ反対の動きが広がりました。それ以前にも大企業幹部等のセクハラ問題がニュースで取り上げられることはありましたが、これほど大きく取り上げられ、今でもその余波が止まらないというのは、それだけ影響の大きい出来事であったと言えます。そして、その影響や他の様々な要因もあり、ニューヨーク州とニューヨーク市では、今年2018年中にセクハラ防止に関するいくつかの義務が雇用主に課されます。まだ正式に公開されていない情報もありますが、主な点は以下のとおりです。

1.セクハラ防止に関する規程の整備
2.セクハラ防止に関する情報の従業員への通知(社内掲示等を含め)
3.セクハラ防止研修の実施
4.その他の義務や禁止事項

連邦、州、郡や市のレベルで法令が異なる場合には、労働者にとって最も有利なものが適用対象となります。つまり、ニューヨーク市に従業員がいる雇用主は、ニューヨーク州とニューヨーク市の両方の法定義務を遵守しなければならないということになりますので、注意が必要です。

「PayEquity」の動きも大きいです。これは、男女が同じ仕事をしている場合は賃金も同じであるべきとするもので、男女の賃金レベル差を無くすための考え方として以前から存在しています。(統計上、男性よりも女性の方が賃金が低いため、女性の賃金を上げるという動き)日本でも「同一労働同一賃金」の議論がありますが、これは正社員と非正規社員との格差を埋める文脈で語られることが多いと思いますが、米国では「The Equal Pay Act of 1963」という法律によって男女の賃金レベル差を無くさなければならないとして以前から規定されています。

今年1月から正式施行されている「New York State Paid Family Leave」については、5月から適用範囲が拡大されていますし、ニュージャージー州では10月から「Paid Sick Time Law」として、それまでいくつかの市レベルで義務化されていた有給病欠法が州レベルに拡大される予定になっています。このように、雇用・労働関連法の法制化は活発になってきていますので、信頼できる情報源を持ち、常に正確な情報をタイムリーに得つつ、適切に対応できるような体制を整備されることをお勧め致します。

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