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《八木フィルム》

捕鯨だけの問題ではなく、様々な国際社会の縮図
《八木フィルム》

合同会社八木フィルム
監督 八木景子 氏

Paul Watson氏(左) 八木景子監督(右)

Paul Watson氏(左) 八木景子監督(右)

5月29日にニューヨーク国際映画制作者映画祭が開催され、捕鯨問題の実態を描いたドキュメンタリー映画「Behind THE COVE(ビハインド・ザ・コーヴ)~捕鯨問題の謎に迫る~」が審査委員特別賞を受賞した。

2010年、アメリカのルイ・シホヨス監督による映画「ザ・コーヴ」がアカデミー賞を受賞し、和歌山県太地町で続けられる伝統的イルカ追い込み漁が、残虐で酷いものだと世界に伝えられた。そんな折、オーストラリアから日本の調査捕鯨が訴えられた。日本が鯨を乱獲した訳でもなく、調査用の鯨を規定の数より少ししか捕獲していないことが違法とされたのだ。

真実が知りたくてインタビューを開始した。調べるほどにその理不尽さを知り、1つの疑問が100へと繋がった。その謎を追いかけていくと映画ができあがっていた。「イヌイットは絶滅危惧種に近いホッキョククジラ捕鯨をアメリカから認められています。しかし、個体数が 50 万~70 万もいるといわれる資源が多いクロミンク鯨を捕る日本は世界から叩かれる。科学的根拠や自然環境の理念からかけ離れています。これは捕鯨だけの問題ではなく、今、起きている様々な国際社会の縮図です。国連や国際会議がどう運営され、地球資源はどうなるのか。各国が自国の利益のために動き、敗戦後にモノを言えなくなった日本の姿がこの状況を作っているのです」。

勤務先のハリウッド映画会社が日本から撤退モードの際に退社、その後、本作を製作するための資料を借りるために「合同会社八木フィルム」を立ち上げた。スポンサーも映画製作の経験もない、色々なタイミングが重なり映画の撮影に踏み切った。太地町に住み込み、キャンプを張る反捕鯨活動家や、ザ・コーヴ主演リック・オバリ、シーシェパード最高執行責任者ディビット・ハンス、そして国際捕鯨委員会の日本政府代表や調査員など、双方のキーパーソン約100名に取材を行った。一方的ではない双方の主張をバランス良く聞いていった。映画完成後に、八木さんは世界に真実を訴えようと世界最大のマーケットであるカンヌ国際映画祭へ向かう。そこで、偶然シーシェパードのカリスマ的存在である創立者のポール・ワトソンと遭遇し、「なぜ日本ばかりを攻撃するのか」と質問を投げかけ、友好的なコミュニケーションも試みた。

「世界に知って欲しいのはもちろんですが、これは日本人にこそ観て頂きたい映画です。『黙っていても神様は見ていてくれる』と日本人は呑気ですが、こうした姿勢が問題を深刻にしてきたのだと感じます。プロパガンダに侵されていることに黙っていてはいけません。物事の裏側で、実際には何が起きているのかを必死に想像し、問題意識を持って捉えていくことが大切なのです」。

同作品は、ネットフリックスにおいて各国23言語で世界189カ国に配信されている。

http://behindthecove.com