Home > Featured > 創業210年の老舗食品メーカーがパスタソースに挑む ミツカン アメリカス

創業210年の老舗食品メーカーがパスタソースに挑む ミツカン アメリカス

創業210年の老舗食品メーカーがパスタソースに挑む

企業概況ニュース8月号掲載

MIZKAN AMERICAS, INC.
Vice Chairman & CEO 小林 一三 氏

ブランドを育成し おいしさを広げたい

日本食ブームが追い風となり、今では日本の調味料が米国でも簡単に手に入る時代となった。なかでも圧倒的な存在感を見せつけるのがミツカンの調味料だ。その代表とも言える「味ぽん」は、長年日本の食卓には欠かせない商品となっている。また1997年には納豆事業にも本格参入し、日本国内での高いシェアを誇る。そんな純日本食材を扱うイメージの強い同社が昨年、北米のパスタソース事業を巨額にて買収し、このニュースは意外性とともに食品業界において大きな話題となっている。

ユニリーバから買収したパスタソースは、北米市場においてトップブランドである「Ragu( ラグー)」と「 Bertolli(ベルトーリ)」。両ブランド併せて米国内パスタソース市場にて33%のシェアを持ち、その他、クッキングワインでトップシェアの「Holland House( ホーランドハウス)」、ライスビネガーでトップシェアの「NAKANO (ナカノ)」、マリネード&ソースを扱う「World Harbors(ワールドハーバーズ)」など数々のブランドをウォールマートなど大手小売店で展開する一方、大手小売店へのプライベートブランドの食酢供給、床やキッチンのクリーニング、コーヒーポット用の洗剤など非食品用途としての酢の活用提案、伸長するHOT&SPICYトレンドに対応した加工唐辛子やメキシカンソースの販売など、北米事業は拡大の一途を辿っている。今回の買収劇の裏には、少子化に直面する日本では、この先の成長が見込めないことも1つの要因のようだ。M&Aにより海外に活路を見出すことは、食品メーカーにとって生き残りをかける重要課題。買収後、海外売上比率が約50%にまで上昇したことは、同社のグローバル展開強化を裏付けている。

パスタソース買収の直前にミツカンアメリカの社長に就任した小林氏。今は、買収後の新会社を、いかにミツカンらしく成長させていくか、というブランド育成に注力している。「ある特定のカテゴリーでナンバー1ブランドを買収し、そこにミツカンらしさを加えて強化していく。ミツカンのブランドバリューの底上げを図ることが今回の買収の背景にあります。事業規模の拡大よりも、買収した企業をしっかり引き継いで育てていき、商品品質や経営の質、サービスの質などあらゆる品質を高め、ミツカンらしい価値を提供することで、ミツカンブランドを全米に根付かせ、おいしさを広げていきたいです」。

30年以上前から米国の地で事業を始めた同社が利益を確保できるようになったのは、ほんの10年くらい前のこと。日本での長い歴史と比べると、米国での事業はまだ始まったばかりだ。米国におけるパスタソースは、売場の棚に並ぶその商品数の多さから分かる通り、どの家庭にも常備される日本の味ぽんに近い存在かもしれない。
「ラグーとベルトーリを販売するために立ち上げた新会社『R&B FOODS INC.』では、新たに100名ほどの人材を採用し、ミツカンのノウハウを活かした戦略で市場を拡大していこうと思っています。今後は日本にもこのパスタソースが、もっと輸出されることになると思いますよ」。

日本の家庭にミツカン製老舗商品とパスタソースが並ぶ。一見ミスマッチにも思えるその光景。だが、ミツカン(三ツ環)ロゴの三本線は、味・利き・香り、○印はそれらをバランス良く提供するという想いと、天下一円にあまねし(世間にひろまる)という易学上の理念が込められている。日本と海外の垣根を越えた商品の広がりは、まさにロゴマークに込められた想いそのものだ。