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豊かな社会を作る
サイボウズUS 山田 理 社長

チームワークが
豊かな社会を作る
サイボウズUS 山田 理 社長

「風土」と「人事制度」と「ツール」のバランスが重要

ニューヨークの日系人ビジネスウーマンの会では9月5日(水)、サイボウズ取締役副社長/サイボウズUS社長の山田理さんをスピーカーに迎え「働き方改革:楽しくないのはなぜだろう?」をテーマとした講演会を行った。

「僕らは、昔から高い志を持って『働き方改革』を推進してきた訳ではありません。その時、その時で必要だったことをやってきたからこそ今があり、その話をさせて頂く機会をこの場に得ています」と語る山田さん。

大阪外大ペルシア語学科を卒業し日本興業銀行に入行した。その後、設立間もないサイボウズに転職をし、最高財務責任者として財務、人事、法務、内部統制などを任される。2005年に 28 %という高い離職率に直面したことを機に、働き方改革へと動き出した。「サイボウズで世のために良いことをしたい一心で転職したけれど、人は辞めるわ業績は上がらないわという状態でした。もっとワクワクしながら、社員たちと一緒に夢を目指していけるチームワークある会社を作ろう。それが働き方改革を始めたきっかけです」。

掲げたビジョンは「チームワークが社会を作る、チームワーク溢れる会社を作る。チームワークで生産性を効率化し、世の中を豊かにしていく」というもの。まずは、フレキシブルな働き方を提案することで、大企業で冷遇されがちな優秀な女性たちに入社してもらおうと考えた。「ワーク重視なのか、ライフ重視なのか。短い時間で効率よく働きたいのか、長くじっくり働きたいのか。そしてオフィスで働きたいのか、リモートで社外のどこかで働きたいのか。性別問わず、ポジションに関わらず、社員一人ひとりが自分で選択できる仕組みを作り始めました。ワークライフバランスを自分たちで選択する制度です」。

サイボウズでは、他にも複業推奨や6年の育児休暇、育自分休暇といった興味深い制度も設け、社員それぞれが働きたいスタイルで働ける環境作りを目指す。「始めてみると良い効果がありました。一つの会社でずっと働き続けていると外を見る機会もなく、退職後にどうして良いか分からなくなってしまいます。若い時から外をみることで、市場で必要とされているスキルも認識し、時には本当にやりたいことで出会えるかもしれません。社員だけでなく、会社側も評価される時代です。ここで働きたいと同調してくれた人が、一緒に働いてくれる組織でありたいのです」。

個別の働き方を認めていく上で問題となるのが評価だ。サイボウズでは、その人の市場価値で評価をする。市場価値を見ながら社内価値を測り、そして評価を決めていく。しかし社員のモチベーションとなるのは報酬だけとは限らない。やりたいこととのバランスも一つの重要な指標となる。バランスを取りながら、働きたい場所で働きたいように働く。「今後、働き方が多様化していくことは間違いなく、中心となるオフィスの他に、外に小規模なハブオフィスを設けることや、自宅でも快適に働けるような環境作りがとても重要になってきます」。取り組みを続けていった結果、離職率は下がり始め、売上は上がっていった。また、女性の働きやすい会社2連覇、産後復帰率100%、中途採用の倍増など、プラス要素も増えていったという。

こうした「100人100通りの人事制度」を進めていく上で、大切なのはチームワーク。ベースとなるのは公明正大であり、自分の意見を大きな声で言えるような「風土」を企業経営者が作ること。そして在宅勤務や人事評価、育児休暇や複業などの「人事制度」と、それを可能とさせるセキュリティやリモートシステムといった「ツール」。これら3つが三位一体バランス良く組み合わさって運用され、はじめて会社組織は変わっていく。「人生100年時代の現在、複業禁止であったり年功序列だったりといったことが未だに行われています。多様性を認めるマネジメントをしていかなければ、今後は生き残ることが難しい。偉い誰かが動かないと変わらない時代は終わりました。SNSで誰でも声をあげられるのです。イイネの数や一つのコメントで世の中を変えられる世の中になったのです。情報といかにうまく付き合い、いかにうまく使うかがポイントです」。

「僕らが求めているゴールは、チームワーク溢れる社会です。チームという括りは世界中にたくさんあって、皆さんはそのいくつにも属しています。こうした、ありとあらゆるチームワークを良くするためにサイボウズがある───こうした、自分たちのやりたいことをサスティナブルにやっていくことが私たちの目標です」と山田さんは話を締めくくった。

《企業概況ニュース 2018 年 10 月号掲載》