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《ダイキン U.S.コーポレーション》

目指すは、北米市場ナンバーワン
《ダイキン U.S.コーポレーション》

目指すは、北米市場ナンバーワ
3本目の柱「フィルター事業」構築へ

ダイキン U.S.コーポレーション
取締役社長 / ニューヨーク事務所長 植村 義之

2017年テキサス州ヒューストン郊外に、ボーイング、テスラに次ぐ北米3番目に大きな製造工場「ダイキン・テキサス・テクノロジーパーク」が竣工した。最新IoTのクラウド管理でも話題となった同工場では、北米の住宅用および業務用空調機器の製造が行われ、隣接する全長約1キロに渡る物流倉庫からは、完成したダイキン製品が全米各地へと出荷される。空調事業での世界首位を快走するダイキン・グループの今後の北米展開について、ダイキンUSコーポレーションの植村義之取締役社長にお話を聞いた。

2度の大型買収で、北米市場を加速

 ダイキンのアメリカ進出は1994年に、アラバマ州ディケータから始まりました。初めは空調機器ではなくフッ素化学製品の工場として進出し、自動車部品向けや石油用耐腐食性の樹脂の製造を開始しました。その後、『空調事業での世界トップ』という目標を掲げ、住宅用、業務用、ビル用セントラル(アプライド)全ての空調カテゴリーを取り扱う方針へと切り替えて、世界最大の空調市場であるアメリカでの空調事業に進出するタイミングを伺っていました。

 そんな折にアメリカの規制緩和が進み、2005年に住宅用・業務用空調のダイキン・エアコンディショニング・アメリカをテキサス州に設立しました。北米の住宅用空調市場は特殊で、ダイキンが得意とする日本式ダクトレスを持ち込み新たな市場を創造するよりも、M&Aで市場を広げていく戦略が有効と判断し、2007年に大型空調機器のマッケイ社を傘下に持つOYLマニュファクチャリング・カンパニーを、そして2012年には住宅用空調ナンバーワンシェアのグッドマンを買収することで北米展開の礎を築いてきました。実は、ダイキンの北米進出は、80年代と90年代にも2度行われ、失敗してきた苦い経験があります。それでも諦めずに、3度目の正直で北米市場を大きく伸ばせたのは、やはりこの2回の大型買収によるところが大きいです。

空調発祥の国でナンバーワンを目指す

 アメリカは既得権が強く、規制緩和が進みにくい国の一つです。空調業界も同様、海外プレイヤーに厳しく参入しにくい。ここを切り崩す方法として『M&A』が有効でした。成功のコツをお伝えすることはできませんが、普通の大型買収と違う点を挙げるとすれば、買収前からどちらの企業とも長い付き合いがあったという点でしょうか。ライバル同士の関係でありながら、共に色々なことを話し合いながら空調の未来を夢描いてきました。常に同じ方向を見て歩んできたのです。我々が目指しているのは『北米市場ナンバーワン』です。現時点ではグループ関連企業約270社、従業員数7万人と空調事業においては世界トップになることができましたが、空調発祥の地ここアメリカでナンバーワンにならない限り、真のグローバルナンバーワンとは言えないと考えています。

 現在の北米市場では、AIやeコマースの登場でライフスタイルが激変し業界再編が起こりつつあります。特に需要の多い住宅用空調の分野では、これまでとは異なるコンペティターが新規に市場に参入し、しのぎを削っている状態です。こうした中で、空調のプロとして我々が長年培ってきた技術力で、どういったソリューションを提供できるのか、常に我々は考えています。例えば、住宅用やライトコマーシャル(または中小型業務用)空調の分野では、VRV方式(バリアブル・リフリジラント・ボリュームVariable Refirigerant Volume=可変冷媒流量)というビル用マルチ(業務用マルチ)エアコンがマンハッタンの高級コンドミニアムやオフィスビル改装の現場などから多くの引き合いを頂いています。ダイキンの得意とするプレミアム商品なのですが、静かで高性能なだけでなく、ダクト工事も必要ないので短期間で設置でき、そして室外機をエレベータで運べるという点でも大きなメリットを感じて頂いています。

各国需要に合わせた空調システムを

 こうした我々の北米展開に欠かせないのが、テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)の存在です。2015年に大阪に開設したR&D施設なのですが、ここには約700人の優秀なエンジニアたちが在籍し、世界各国の拠点へとダイキン製品のベースモデルやコア技術、生産技術などを発信しています。このベースモデルやコア技術をもとに、各国の需要に応じた形で空調機器が現地化されていくのです。ダイキンは、グローバル企業というよりは『マルチナショナル・カンパニー』という感じでしょうか。現在は150カ国以上、90以上の生産拠点でビジネス展開し、グループ全体の約4分の3以上が海外からの売り上げとなっています。

 また、昨年ワシントンDCに事務所を開所しました。アメリカ市場でナンバーワンという目標を実現させるには、今後ジャパン・バッシングなどの不測の事態に見舞われることもあるかもしれません。特に工場を置くテキサス州、ミネソタ州、バージニア州ではそのリスクは高く、こうしたことを最小限に抑える為にも、ダイキンの存在意義を各州知事やアメリカ国民の皆様に理解して頂く必要があります。もちろん、これから新しい技術を取り入れていく上でも、規制の改正などの話し合いが必要になるでしょう。そのためにも、各分野の要人との関係を強化し、ダイキンという会社がアメリカ社会にどう貢献できるのかを、地道に伝えていくことが非常に重要だと考えています。

フィルタ事業を「第3の柱」に

 2016年に、エアフィルタ分野でアメリカトップシェアを持つフランダース社を買収しました。今年7月には日本本社にもフィルタ事業本部を立ち上げ、今後はフィルタ事業を、化学、空調に次ぐ第3の柱にしていこうと考えています。これまでの市場ニーズは、『冷やす』『暖める』『湿度を管理する』といったシンプルなものでしたが、近年では、それにプラスして生活のクオリティ向上や、綺麗な空気や快適な空気が求められています。IAQ(インドア・エアー・クオリティ)やIEQ(インドア・エンバイロメンタル・クオリティ)がキーワードです。我々には、省エネやインバータ技術、環境に優しい温暖化係数の少ない冷媒技術がありますので、このフィルタ分野でも、大きな活躍の場があると感じています。

 アメリカは、20年ほど前まで環境問題や省エネ規制における世界のリーダーとして君臨していました。現在では残念ながら少し歪んだ形をしていますが、今後もアメリカが果たすべき役割は大きく、この国がまたリーダーとしての威厳を取り戻す日が必ず来ると信じています。この20年で、ダイキンの置かれる立場も大きく変わりました。2007年の買収前には、社員の誰もが関わりたくない市場であったアメリカ───その認識を覆して、自らの出世をかけてこの国で挑戦したいたいと思える場所に変えたかった。アメリカがリーダーとして復活した時、ダイキンという会社がどんな立場になり、どんなサポートを提供できる会社になっていられるのか───考えるだけでもワクワクします。そのためにも、今できることを一つずつ進めていきたいと心に命じています。

《企業概況ニュース11月号掲載》