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《株式会社コーチ・エィ》

リーダーと共に 伴走者としてのコーチング
《株式会社コーチ・エィ》

株式会社コーチ・エィ
最高執行責任者・COO
エグゼクティブ・コーチ
竹内 健 氏

リーダーとは、道なき道を行き、新しい企業の形をつくる任務と責任を背負うものである。会社を運営する上で、トップとしてどのようなビジネス・ビヘイビア(企業行動)をつくれば、会社が目指す方向に強化できるか、また到達するのか。リーダーたちは、パーフェクト・ソリューション(正解)のない世界で、日々大変なプレッシャーと奮闘している。トップリーダーたちと一緒に話をし、自身の思考の中を探求していくうち、進みたい方向やゴールを明確にし、自分自身でいち早く到達してもらうこと。それがエグゼクティブ・コーチングのあり方だと、コーチ・エィ最高執行責任者・COO竹内健氏は話す。竹内氏もはじめは、大手会計コンサルティングファームPwC所属で、米国テキサス州ダラスに赴任した駐在員だった。その後ロサンゼルス、スタンフォードと全米にわたり次々と成果をあげた後、2008 年ニューヨークへ移ることになった。そこで携わった企業買収案件でのクライアントがコーチングを受けることになった。そこで目の当たりにした変化が、2012 年に竹内氏がコーチ・エィに入社するきっかけとなった。会計士とは異なる分野ではあるが、コーチングが経営者や幹部にとって新鮮で必要不可欠なアプローチであることに興味をもったからである。近年日系企業による企業買収が増加していく中で、数字だけでは割り切れない様々な問題も深刻になっていった。日米のビジネスの違い、文化の違い、そして人と人の関わり。予想もしないところから湧き上がる問題を、一つ一つ丁寧に、忍耐強く、粘り強く交渉していかなければならない経営トップへのプレッシャーは、とてつもなく大きい。ますますエグゼクティブ・コーチングの需要が高まってくるのを感じるという。

「アドバイスはしません、と言うと、それでは一体、何をしてくれるのですか?と言われます」 竹内氏はにこやかに答える。コンサルティングは知識やソリューションを与えるが、コーチングは知識や情報を提供するわけではない。コーチングは、その経営者が日常的に考えていることではない領域の事柄を探索するプロセスであるという。その領域は人によって異なる。事業に対する関心が高いのか、人事や組織に対する関心が高いのか、戦略なのかなど、人によって偏りがあるものだ。コーチングを初期に導入した一人であるGEのジャック・ウェルチは、周囲の驚く中、当時 20 歳代の女性をコーチとして指名していたともいう。彼女から出る全く想像もしたことのない新たな視点をもたらす質問が、彼を世界のトップ企業のトップ足らしめるビヘイビアを作りあげていたのかもしれない。

日本本社をはじめ、ニューヨーク、上海、バンコク、香港に拠点を広げるコーチ・エィが、世界のコーチング界で注目されるのは、コーチ・エィが提唱し、全社をあげて組織的に 20 年以上フォーカスしてきた、システミック・コーチングの有効性が認識されてきたからだ。昨年 11 月コロンビア大学で開催された第三回コーチング・カンファレンスのテーマもシステミック・コーチングだったが、コーチ・エィは2014年の第一回カンファレンスにおいて、システミック・コーチングの具体的なアプローチと効果を豊富なデータとともに発表している。

「私達には長年培ってきたノウハウと、リーダーシップや組織における人と人の関係性に関する大量のデータがあります」と竹内氏は言葉の端に自信のほどを顕す。また組織全体をコーチングするには、均質なコーチングを提供する必要がある。コーチ・エィ全社では約 100 名以上のコーチが在籍し、いつでも、どこからでもコーチングを受けることは可能であるという。「対面の方が電話よりも有効なのではないかと思われてきましたが、コーチングの成果には少なくとも差がないというデータもあり、実際、電話でのコーチングを希望するエグゼクティブもいます。」事実、人は目からの情報取得率が一番高く、記憶をたどる時や考えをまとめる時には、目からの情報を遮る方が有効であることも理由の一つ。「私もコーチングを受けるときは、一人会議室で遠隔のコーチに電話をかけ、部屋のブラインドを下げて他の人に見えないようにし、テーブルの周りをぐるぐる歩きまわりながらコーチと話をしています」。オバマ元大統領も、側近と話をしながらホワイトハウスの裏庭を歩き、頭を整理していたという話もある。

コーチングを体験し、思考の探索と行動への反映を実践していくうち、少しずつ意識や行動に変化が現れる。ほんの少しのでも意識やビヘイビアが変わっていくと、徐々に周囲との関係性にも変化が表れるようになる。そして居心地がよくなるとか、関係性が良くなるとか、もっと深い話が出来るようになってくるとか、頭が回りやすくなるとか、その基盤を作ることを支援する。それがコーチングだという。

21世紀に入ってから企業のグローバル化やローカライゼーションなどの重要性が叫ばれているものの、竹内氏は実感として、実際にはどちらもまだまだ進行しておらず、多くの企業経営者や管理職の方々は苦労しているのではないかという。「コーチングはまだまだ発展途上なので、今後も最新のデータを取りながら、進化していくものです。多くの方々にコーチングを深く体験していただきたい」。そう話す竹内氏の言葉には、濁りがない。

《企業概況ニュース 2019 3月号掲載》