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9月よりNYブロードウェイ公演スタート

日本の伝統芸能「落語」を世界へ!
9月よりNYブロードウェイ公演スタート

日本の伝統芸能「落語」を世界へ!
どっかん、どっかん大爆笑する、お客さんの笑顔が見たい

 エンターテイメントの聖地ブロードウェイに、落語の寄席が登場する。座長はカナダ人落語家の桂三輝さん。9月19日から4ヶ月、オフブロードウェイの劇場「New World Stages (340 West 50th Street, New York, NY 10019)」で公演予定。できるだけ長く、そしてその先のワールドツアーへと繋げることを目標に、着々と準備が進められている。「こんなに面白い落語を世界に伝え、もっともっと笑いで包みたい」とサンシャインさんは目を輝かせる。

落語との出会い

 生まれはカナダのトロント。トロント大学でギリシャ古典演劇を学び、劇作家・作曲家として活躍していたある日、能楽に通じると書かれた論文をきっかけに、さらなるインスピレーションをと日本に渡った。能楽や歌舞伎はもちろん、宝塚歌劇団、アコーディオン漫談など貪欲に吸収し、日本語の扱いにもだいぶ慣れてきた滞在5年目、とあるやきとり屋で偶然に落語に出会う。「繁昌亭で聞いた文枝師匠(当時の桂三枝さん)の噺の技に、この師匠の弟子として落語家になりたいと強く思いました」。

 まくらで耳を引き寄せ、後半には全く違った世界観へと観客を導く。噺家と小さな寄席、あとは扇子と手拭いさえあればいい。声の調子や仕草で想像させ、興味が湧かせ、最後のオチへと一気に誘う。厳しいストラクチャーの中で、同じ話でも噺家によって内容も違えば、同じ噺家が同じ話を100回演じても、100回とも違った雰囲気となる。「私もこれをやってみたいと強く感じました」と、サンシャインさんは当時の様子を振り返る。

「三輝」に込められた想い

 何度も師匠の元を訪れ、弟子入りを志願して8ヶ月、少しずつ師匠の気に止めてもらえるようになり、2009年に弟子入りを許された。師匠から名付けてもらった「三輝」には、サンシャインの空のように、世界中で輝くような落語家になって欲しいという願いが込められた。

 約100年前にもオーストラリア出身の快楽亭ブラックという外国人落語家がいたが、その時とは時代も立ち位置も全く異なる。「ブラック師匠の時代は、人気に翳りがみられた落語界を、また盛り上げようと、海外から話を持ってきては落語として演じるという奮闘努力をしていた時代です。私がやろうとしているのは、今の落語を海外で、英語で広めることです。しかも、落語の人気が高く、めちゃくちゃ面白いこの時代にです」。

まくらが、観客と仲良くなるための道具

 日本を飛び出して気づいたこともある。日本の食べものや着るもの、当時の町人の生活などの日本の文化を外国人観客に伝えるのに、「まくら」の存在が、日本の数百倍、重要になる。「まくらは、観客と仲良くなるためにあるのだと、以前、兄弟子に教えられました。『これから、私が楽しい世界にお連れしますよ』という準備段階です。お互い見ず知らずの観客たちの一体感を作り、最後には、全員が笑顔で劇場を後にする───この空気感を作り上げる工程が最高なのです。

 今は、第2の修行期間です。肌で感じ、自分の中の落語をゼロから作る。ここが正念場です」とサンシャインさんは自ら飛び込んだこの状況を、心から楽しむ。

 「落語家は『話をする仕事』だと良く言われますが、それは違います。『見て、聞くこと』が仕事の本質なのです。その日の客層がどうなのか───若い人が多いのか、子供の数は、集中力は続きそうか、ダジャレは受け入れられるか─こうした判断を瞬時に行い、言葉のピッチや強弱を整え、繰り返し表現などの技法を駆使しながら話を進めるのです」。

 「将来、アメリカの各都市にいくつもの寄席が立ち、皆が『今晩、落語観に行こうぜ!』という時代になったら、どれほど楽しいでしょう。辿り着くには長い年月がかかりますが、私のパフォーマンスがきっかけとなり、もっと落語が世界で身近になってくれればいいなと思っています」。満足げな笑みを浮かべてブロードウェイの寄席から出てきた人たちが、その日の落語について意見を交わし合う───そんな光景が見られる日も
近い。

◇ 過去のニューヨーク公演では、「古典」「創作」「子供向け」「大人向け」「怪談」の5カテゴリー全9話を、週5回、曜日ごとにローテーションして演じていた。各演目は下記の通り。今回のブロードウェイ公演では、月ごとにカテゴリーを変えて公演の予定(変更の可能性あり)。

◯ 古典

 ・ちりとてちん(古典)
 ・桃太郎(古典)

◯ 創作

  ・宿題(創作・六代桂文枝作)
  ・生まれ変わり(創作・六代桂文枝作)

◯ 子供向け

  ・動物園(古典)
  ・味噌豆丁稚(古典)

◯ 大人向け

  ・試し酒
  ・風呂敷(浮気の話)

◯ 怪談

  ・死神

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日本の伝統芸能を、世界と繋ぐ

 「落語が、真のエンターテイメントとして海外で戦っていくためには、継続的にお金を産むビジネスとして成立させるシステム構築が重要となります。これまで大使館の方々のお力をお借りし、海外にて文化交流としての落語公演をさせて頂いてきましたが、一度きりの公演ではなかなか次のステップへ進むことは難しい。そこで、私たちの目指す『世界中の人たちがで落語を楽しむ時代』の実現のため、個人や団体の賛同者を集め、『日本のエンターテイメントは世界で十分に通用する』という大きなビジョンを一緒に描いて頂く必要があると考えました」と、株式会社カンパニー・サンシャイン副社長の福田麻里瑛さんは会社設立の意図を説明する。

 「文化交流としての無料公演でなく、しっかりとした劇場で有料の寄席を開いても、落語に価値を見出し、同じ拍手がもらえるのか」───2013年秋、北米ツアー中のサンシャインさんは小さな不安を持った。しかし、最終公演の場であるカナダ最高峰の劇場「ウインター・ガーデンシアター」で、この疑問を払拭することとなる。結果、50ドルのチケット1,000枚が完売、会場は大爆笑の渦に包まれた。「私は確信しました。落語は絶対に世界で通用すると──ここで、ブロードウェイ公演の夢が始まったのです」。

 会社を設立して1年半が過ぎ、10年先の在り方を2人で話し合うようになったと言う。「今回の公演から得られる体験が貴重なものになることは間違いありません。ネットワークはもちろんですが、ブロードウェイならではの契約システムや予算などのノウハウ、すべてが私たちの価値を高めてくれるはずです。また今後はこうした体験を、次に海外進出を目指す他の伝統芸能のために役立てたい。日本には世界に伝えるべき素晴らしい伝統芸能が、まだたくさんあります。何度も共演している淡路人間浄瑠璃もその一つです。こうした日本が誇る匠の技を、一つひとつ世界へと繋ぐパイプ役となることを目指し、しっかりとシステム構築をしていきたいと考えています」。

株式会社カンパニー・サンシャイン

代表取締役社長 桂三輝さん
副社長     福田麻里瑛さん


www.rakugo.lol

《企業概況ニュース 2019年3月号掲載》