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きもの生地でつくる紳士服で世界に挑戦―

“着物”を“着れる物”へ
きもの生地でつくる紳士服で世界に挑戦―

浅井広海 Hiromi Asai
Mode & Classic LLC 
代表浅井 広海  氏 
https://www.hiromiasainy.com

 きものとは、その形なのか生地なのか。Mode & Classic LLC代表の浅井さんは着物の”生地“に着目し、手描き友禅、西陣織、栃尾紬、伊勢木綿など日本の伝統的なテキスタイルを使った紳士服を2016年からデザインし、欧米のコレクションなどでHIROMI ASAIブランドを発表している。浅井さんが生地そのものの製作・デザインから携わり、デザインしたスーツやジャケットは、形こそ異なるが確かに着物であり、それでいてジャポニズムを押し付けないハイエンドな紳士服である。

 「今の着物の形状は、たった150年前に作られたに過ぎませんが、多くの人が着物と言えばあのT字型を思い浮かべるでしょう。生地自体には千年の歴史があり、いまその技術が失われつつあります」と、注目すべきは生地であるという浅井さん。アメリカで、スチール、映像、舞台などの着物の着付けやスタイリングを手掛けるうちに、海外の人たちが求める着物像は、自由さとファッション性であることを体感した。更に浅井さんは、「 職人技である“自国の伝統技術の伝承”は、日本だけでなく世界の国々が抱える課題」だと話し、2015年に京都の着物職人と一緒にニューヨーク・ファッション・ウィークへ正式出典することを目指し、クラウドファンディングを立ち上げた。浅井さんが掲げた“職人”というテーマへの共感や、世界中のきもの愛好家の支援により、資金調達を実現。着物がニューヨーク・ファッション・ウィークに出展されたのはこれが初めてであり、来場者にインパクトを与えられたという実感はあったが「12万ドルかかったファッションショーで発表した着物は一着も売れませんでした。着物の形ではアメリカでは需要があまりに少ないですね(苦笑)」。

 「“売れる形“でなければ、新しい生地の需要が生まれず、需要が無いから着物の値段が高くなってしまう」と浅井さんが言うように、着物は負のループに陥っている。着物がアンティークとして扱われ、リメイクされて流通していることもあるが、それでは新しい生地の需要が生まれない。「着物職人さんが廃業に追い込まれている現状、新しいもの、そして”世界中の人が着れる形状のファッション“を作ることが彼らの支援になります」という浅井さんの想いが、紳士服という着物にとっては新しいフォーマットを創る経緯となった。「日本国内の基準に至らなかったために、日本の繊維業界のとある革新的な技術開発が打ち切りになったという話題を最近聞きましたが、それは既に欧米のコレクションでは採用されている技術です。国内基準に囚われすぎない方が良いなとショックを受けましたね」。現在、HIROMI ASAIブランドは欧米市場中心に展開しており、店舗としてはマンハッタンはソーホーのセレクトショップ、Flying Soloで取り扱われている。

FLYING SOLO  ジュエリーデザイナーであるエリザベス・ソロメイナ氏が自らのデザイナーとしての苦悩を基に立ち上げたセレクトショップ。インディペンデントなデザイナーが直接顧客と繋がれる、デザイナー本位の空間がコンセプトである。デザイナーは同店の審査を通ると登録料を支払い、一等地であるソーホーの店舗内にスペースが与えられ、売り上げは全額デザイナーの収益となる。また、店舗内でイベントを開催出来たり、ファッション・ウィークの時期には同店がプロデュースするランウェイに参加できる。浅井さんは店側からのオファーで自身のコレクションを展示することになった。「ファッション業界やメディア業界人がこの店を出入りし、衣装として借りていくことも。世界中のデザイナーが登録しており、一点物のデザイナーの服を着たいというセレブからの需要があるようです」(浅井さん)。

 

2020年春夏コレクションのテーマは“天地創生”。

 

自然界の“美”を表現した薔薇の模様をはじめ、生地の模様の意匠権はデザインした浅井さんのもの。
この青いバラのタキシードの素材は100%シルクである。

《企業概況ニュース》2020年1月号掲載

 

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