昨年12月中旬、49丁目と7番街のコーナー近くを歩いていた女性が、落ちてきたビルの外壁の破片が頭に当たって死亡した。一蘭レストランがある通りである。事故が起こる数カ月前から、ビルの所有者には市から外壁の危険性を理由に罰金が課されていたが、外壁の修理のためのスキャフォード(足場)の設置はこの時点でされていなかった。
危険な状態の建物の外装をそのまま放置していたために起こった、防ぐことができた悲劇である。犠牲者は社会的な活動、役割りもあった女性でメデイアは大きく扱かったのでご記憶の方も多いと思う。
マンハッタンの歩道を歩くのは本当に危険だ。
出来るだけ建築工事現場だとか、足場が組まれている歩道の下や周辺を歩くのを避けるように心掛けても、この濃緑色の見苦しい足場は街の至る所でみかける。
マンハッタンの見慣れた代表する風景のひとつである。
なぜこんなに足場が多いのか? 勿論ニューヨークはいつも新しいビルの建設をしているのも理由だが、さらにローカル・ローII と言われるニューヨーク市の法律により5年毎に6階建て以上のすべてのビルはライセンスを持ったエンジニアあるいは建築家から、外壁のインスペクションを受けることが義務付けられており、危険な状態が発見されたらビルディング・デパートメントに報告がいき、ビルの所有者は外壁の修理をする責任がある。ただしビルの所有者によっては、多額な修理費を払うよりは、月々の罰金を払い続ける方が安くつくのでそのまま修理を怠っているケースも多い。
本来通行人の保護の目的に置かれたこの足場だが、ときには安全性より危険な場合がある。足場自体が壊れたり一部が落ちてきたりするケースも数多く報告されている。
ビルディング・デパートメントの記録によると、12、13年もほったらかしされている状態のビルもある。ビルの所有者によっては、何年か毎に足場を解体して再度組み立てるコストを回避するために、常時残しているのも理由のひとつである。
昨年12月のこの事故を機に、市当局のずさんな管理も問題視され、今後市はビルの所有者に対して、外壁の修理と足場の安全性を厳しく取り締まることになるだろう。
以下の5つのビルが、市の記録によると最も長く足場が設置されたままの状態となっている。住所はすべてマンハッタンである。
- 409 エッジコム・アベニュー (13.6 年間)
- 191 E. 115 丁目 (11.9 年間)
- 66 リード・ストリート(11.7 年間)
- 280 ブロードウェイ(11.3 年間)
- 360 セントラル・パーク・ウェスト(11.1 年間)
Masubuchi Realty LLC
社長 増渕 敬子
keiko@masubuchirealty.com