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従業員と独立請負人誤区別に注意!
~法的リスクを最小限に抑えるために~

第45回【リーガル塾:3分で学ぶ米国ビジネス法】
従業員と独立請負人誤区別に注意!
~法的リスクを最小限に抑えるために~

2019年9月18日、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事の署名により、独立請負人の条件を示す州法(以下、「AB5」)が法制化され、2020年1月から施行された。これにより、事業主は、今まで柔軟的に採用していた独立請負人や、インターネット経由で、単発、短期、またはフリーランスで仕事を依頼・受注するギグ・ワーカーが、AB5に従って区分されているかを見直す必要がでてきた。  

概要

AB5は、事業主が労働者を独立請負人として扱うための3つの条件を定めている。その条件とは、労働者が(A)業務に関する契約または業務の遂行中に、事業主の指揮命令下にないこと、(B)事業主の通常業務の範囲外の業務を行うこと、(C)従事している業務と同じ性質の独立した商売、職業、事業に従事していることである(これらの条件は、「ABCテスト」と呼ばれている)。事業主は1つでもこれらの条件を証明できない場合は、その労働者を従業員として扱わなければならないことになる。具体的には、事業主は最低賃金を保証し、オーバータイムの支払いに加え、社会保障税、失業保険税、障碍者保険税の支払いや労災保険に加入しなければならないので、事業運営上の大きな負担となる。  

AB5の対象外となる職業とその拡大化

一方で、医師(内・外科、歯科、足病、獣医、心理学者)、弁護士、会計士、建築家、エンジニア、私立探偵、証券仲介人、投資アドバイザー、グラフィック・デザイナー、マーケター、人事・労務コンサルタント、トラベル・エージェント、フリーランス・ライターや写真家などの職業はAB5の対象外とされているので、今まで通り独立請負人として区分することに問題はない。 ただ、AB5が可決される以前まで独立請負人として一般的に区分されてきた、ライドシェアや配達業の運転手やその他のギグ・ワーカー、運送業者やトラック運転手、翻訳者、通訳者、ヘルスケア業界の労働者(検眼医、看護師、作業療法士、放射線療法士、言語療法士、聴覚機能訓練士、フィジシャン・アシスタント、在宅医療助手など)、清掃業者、エンターテイメント業界のタレントや音楽家などは、AB5の対象外となっていないため、事業主は、今まで通りに独立請負人として扱うためには、ABCテストを満たす必要がある。 しかし、トラック運送協会やギグ・エコノミー業者のUber、Lyft、DoorDash、Postmates、Instacart等は、職業柄、労働者はAB5の対象外とされるべきであると主張し、カリフォルニア州を相手取って提訴している。既に、2020年1月現在で、トラック運送協会は、最終判決が下されるまで、運転手を独立請負人として扱うことを暫定的に認められた。加えて、ギグ・エコノミー業者は、2020年11月の加州選挙時にAB5に対抗するハイブリッド型労働者区分を規定し法案を提出する意向で、これによりAB5の線引きが更に困難になる可能性がある。  

違反のリスク

事業主は、労働者を誤って独立請負人として分類した場合、未払賃金(オーバータイム、食事や休憩時間を含む)、事業主に課される給与関連の連邦と州の諸々税金、及びペナルティーを支払わなければならない。例えば、従業員を独立請負人とした意図的な誤区分の違反1件につき、5千ドルから1万5千ドルのペナルティーを支払う必要があり、誤区分が継続している場合には、1万ドルから2万5千ドルのペナルティーに増額されうるため、注意が必要である。  

事業主の対応

事業主としては、AB5に則って再区分が必要となるかもしれない独立請負人契約を特定し、契約の業務内容と受託者の事業運営の実態がABCテストの条件を満たしているか否かを注意深く分析する、再区分が必要な場合に発生しうるコストを精査する、再区分後に必要な手続きを遵守するなどの対応が必要である。カリフォルニアで事業を行う事業主は、専門家のアドバイスの下、適切な労働者の区分を改めて整理し、雇用法上のリスクを下げることをお勧めする。  

*ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

Yorozu Law Groupは、サンフランシスコに拠点を置く国際法律事務所で、企業法務、国際税務、M&A/戦略的提携、ライセンシング、国際商取引、雇用法において日本語と英語で法務サービスを提供している。© Yorozu Law Group  

 

萬 タシャ 弁護士
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略歴

萬(よろず)タシャ

Yorozu Law Group 代表弁護士

オレゴン生まれ関西育ち。カリフォルニア州・オレゴン州弁護士、MBA取得。米国で20年以上の弁護士経験を有し、日米の商慣習や法制度等の違いを踏まえた法務・税対策両面からの戦略的アドバイスを提供する。日系企業の外部顧問を多数務めるほか、北加日本商工会議所と米日カウンシルの常任理事等を務める。家族とトライアスロンに参加するのが趣味。

《企業概況ニュース》2020年 3月号掲載

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