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【茶の湯入門 さあさ一服】⑥ 茶の湯の歴史

 皆さんは茶会に参加された経験はありますでしょうか。広い畳の空間に人々が集い、季節にちなんだ道具類を楽しみながらお菓子とお抹茶をいただく。春や秋を中心に日本では全国各地で誰もが気軽に参加できる茶会が多数催されます。手軽な金額で非日常の伝統の雰囲気を楽しめるこういった茶会は、一日で千人近くのお客様が来られることもあり、非常に人気があります。しかしこの「茶会」、実は「茶事」と呼ばれる茶のもてなしの略式にあたることは、一般にはほとんど知られていません。今回は、この「茶事」についてご紹介致します。

 「茶会」と「茶事」は、言葉の響きこそ似ているものの、その意味は異なり、はっきりと区別して使用されます。一般的に茶会は30分程度が主流なのに対し、茶事は4時間にわたり行われます。その内容は、前22時間、後半2時間に分かれており、前半は客人の前で炭に火をつけ、湯を沸かす炭手前が行われたのち、懐石料理と酒が振る舞われます。その後中立と呼ばれる小休憩ののち、後半で茶事のメインである濃茶を回し飲みし、最後に薄茶が振る舞われるのです。略式である茶会は主にこの後半の薄茶のパートを茶事から抜き出したものです。

 茶事は茶を媒介にした深い心の交流を求めることに加え、4時間のうちに亭主、客人双方に決められた所作や作法が多数あります。そのため、客人は茶の湯をよく知り、一度に数名しか招かれないところも、大人数をもてなす茶会と違うところです。また、茶事は茶の湯の最高のもてなしの形ですから、細部にまで配慮が求められます。千利休が説いた茶事の心得「利休七則」のなかの一節に「降らずとも雨の用意」とあります。思いがけないことが起こっても良いように周到に準備をしておくことの重要さが端的に示された名文です。

 これから始まる春の季節、アメリカでも各地で茶会が開催されます。ぜひ略式である茶会から気軽に茶の世界を体験してみてください。茶事に通ずるもてなしの一端を感じていただけると思います。

 

長野佳嗣
茶道家・現代美術家
武道茶道上田宗箇流正教授者
info@y-nagao.jp
https://www.y-nagano.jp

《企業概況ニュース》2020年 3月号掲載

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