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コロナウィルスによる商業不動産市場への影響

【NY商業不動産ウォッチング】
コロナウィルスによる商業不動産市場への影響

3月中旬における現時点で新型コロナウィルスの世界的規模の感染拡大の影響が多くの分野にわたって深刻な影響を及ぼしている。世界経済は9.11 及び2008年の金融危機以来の混乱に転じた。アメリカ合衆国は、昨日国家非常宣言を発した。海外からの渡航制限、集会やスポーツイベント、ブロードウェイミュージカル、美術館、パレードのキャンセルが毎日のように伝えられる状況下において商業不動産市場に与える影響は、株価のようにすぐ実害がでるには時間がかかるが、ホテル業界は現実にすでに直接的な打撃を受けている。
特に中国や欧州からの観光客に大きく依存するニューヨークのホテル業界のパーフォーマンスは劇的な低下を示し、厳しい状況下になるのは必至であると警告している。ニューヨークの大手のホテルデベロッパー及び経営者であるラムグループによると、毎日多くのキャンセルが続き通常90%を超える占有率は30%に落ち宿泊料金は50%も低下しているそうである。これは9.11の時期よりも悪いパーフォーマンスであると言う。

リーテイル業界においては、消費者は公共の場を避け特にショッピングセンターやモールなどの人が多く集まる大型施設での買い物を控えているため、大きな打撃を受けている。消費者は益々オンラインショッピングの市場へと移っている。
レストラン、映画館、インドアスポーツセンターやエンターテイメント施設におけるビジネスの損失は大きく、回復にどの位の時間がかかるか不確実性な領域に入った。

オフィス市場は、短期間においての直接的な影響はほとんどないと見ており、労働市場の需要が強い限り危惧はないと思われるが、一方ウィワークなどの共有オフィススペースのビジネス業界にとっては厳しい展開となるのが予想される。もともとビジネスモデルが多くの人々と交流できるように作られたスペースをストレンジャーと共有し、隣のワークステーションで働いている人がどのような人か、健康状態など知る由もない。現状下では、対策として清掃を増やして消毒の強化をはかり、サニタイザーの設置を増やすことが 指摘されている。ビルの所有者は清掃費にかかる大幅な出費が避けられないであろう。

建設業界では、現在アメリカは原材料を中国に大きく依存しているため、建設請負業社が中国から製鋼を輸入するのを縮小し価格の高いアメリカ製鋼に切り替えることにより建設コストが急騰する危惧が高い。また建設プロジェクトが大幅に遅延する可能性がある。

投資物件市場においては、現在のところ商業不動産投資の動きに大きな変化はみられない。金利の低下がリファイナンスや投資家の購入を促進する可能性もあるが、多くのバイヤーは将来の不確実性を考慮して動きを見る姿勢になるとみられる。

商業不動産セクターは株価市場とは異なり、毎日動きが変動するものではないので結果がでるのに時間がかかる。現状下では短期間で直接的な打撃が見られるホテル業や小売業以外の他に今後オフィス市場や投資物件市場に与える影響は不確実で計り知れないものがある。

Masubuchi Realty LLC
社長 増渕 敬子
keiko@masubuchirealty.com

《企業概況ニュース》2020年 4月号掲載

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