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大混乱の教育現場

教育現場におけるデジタル格差が明確に

新型コロナウィルスにより全米の主要都市では学校閉鎖が相次ぎ、授業日数が大幅に減ることがないよう、そして年度末の補習授業が増えすぎないようにとの配慮から「リモート学習」への取り組みに注目が集まっている。

 ニューヨーク市でも学校の無期限閉鎖が決まり、1週間後の3月23日から遠隔教育が開始され、公立学校に通学する110万人の学生は、Googleクラスルーム、Cromebook、各種タブレットなどのITツールを活用しながら、オンラインでの教育を受け始めている。しかし、教育委員会は、約30万人の学生がリモート学習に必要なツールを備えていない事実を認め、これら学生のためのツール調達を急ぐ。

 ニューヨーク市教育委員会は、シェルター生活などのホームレス家庭の学生を優先し2万5,000台のiPadを生徒に配布開始したが、現実的には何十万人もの学生に必要なツールを確保するには、まだ数週間かかる可能性がある。3月23日時点において、デブラシオ・ニューヨーク市長は、市内の学校は学期末(6月下旬)まで開校は難しいと話す。

 こうした状況下、全米の学校機関には、「遠隔技術をどのように授業に取り組んで教育していくか。教える能力だけではなく、それをデジタルというツールを通じて遠隔で遂行する能力が試される。もう一つ試されているのが、授業を受ける生徒たちのいる家庭側の能力。バーチャルで授業に参加するための技術的な能力はもちろん、それを受け入れる家庭のデジタル環境が大きな障害となっている。

 Googleクラスルームなどは無償で利用でき、誰でも簡単にセットアップが可能だが、宿題管理、スケジュール管理、簡単なチャットのみとなり、ウェビナーや授業内容をウェブビデオで開催するには、他の有償のビデオ会議サービスとの組み合わせが必要となる。そのため、安定した高速インターネットへの接続や対応可能なPC端末が必要となり、要件を満たすことができない家庭向けの端末貸し出しや、Wi-Fiホットスポットの提供が、予算的にも、その準備においても学校側にとって大きな負担となっている

 こうした状況下、リモート学習の環境整備により、経済格差だけでなく、学校や教師陣のデジタル対応能力、都市部と地方のインフラ(高速インターネット接続性)の格差などが浮き彫りになるのではと、不安視する声も日に日に高まっている。

 ニューヨーク州クイーンズ地区に住む6歳の子を持つ男性は学校の先生の準備が十分でないと感じ、リモートで授業を受けるには親が横でつきっきりで対応しないと成り立たない状況だと話す。自らも在宅勤務で業務を行っているため、これが続くとなると厳しいなと苦笑いする。ブルックリン地区にあるミドルスクールでは、普段からGoogleクラスルームを活用し、宿題の提出管理などを行うなどデジタル導入に前向きだった。そのため、リモート学習となった初日は、「お気に入りのパジャマで参加して」などのメッセージが教師から送られるなど、リラックスしたムードの中スムーズに切り替えが行われたと言う。

 技術面に関しては慣れもあり、時間が解決する部分も大きいが、軌道に乗った後にも、課題は山積みとなる。

・電子授業や引きこもり状態が、児童たちの精神面に与える影響

・児童のITリテラシーが向上する事によるセキュリティー対策

・オンライン時間が増え、目や姿勢など体への影響

・教師や他の児童との対面コミュニケーションが減ることの影響

・音楽や情操教育、体育など体を動かす教育の実施が難しい

・集団の中にいないため、学習に集中できないことから起こる成績の低下

 今回の新型コロナウィルスの出来事で一気に動き出したリモートワーク、リモート学習という領域。こうした動きに対し、新たな課題に向けた取り組みや対策、議論が続けられている。

 

 

《企業概況ニュース4月号掲載》

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