「アメリカの不動産は歴史的に見ると7〜10年の周期で上下を繰り返しながら、長期的には右肩上がりに価格が上がって行きます。」
米国住宅市場を解説する時の常套句です。前回リーマンショックのリセッションからオハイオ州コロンバスの住宅市場が底値をつき価格が上昇し始めたのが2012年ですので2019年頃から下方修正が入る時期に差し掛かっていました。ところが、今年初めに全米不動産協会(NAR)のサミットでエコノミストが発表した今後3〜5年住宅価格が上昇するホットな街全米トップ10の4位にコロンバスが選ばれたように、その兆しは全く見られませんでした。武漢でウィルス騒ぎが始まった時、「リーマンの次はこれかもね。」なんて冗談混じりで話していたことが現実となりそうです。
3月のコロンバスを含むセントラルオハイオの住宅市場は同月前年比で、販売戸数11・8%増(2,431戸)、販売平均価格10%増($255,337)、販売中央価格11・3%増($220,000)ですが、新規売出戸数(3,086戸)4・4%減、新規に契約に入った戸数が7・2%減(3,039戸)、総売出戸数(3,405戸)6・1%減となりました。
この数字を見られてどう感じられましたか?先行き不安の新規戸建建設の伸び悩みを含めた供給不足のために、販売件数は今後減っても販売価格は下がって行かない可能性もあります。
オハイオ州は3月16日に全州でデイケアも含め全校が休校になり、一週間後23日に自宅待機命令が出ました。不動産は「エッセンシャルワーク」に部類され、営業は継続されました。本来であれば日本からの駐在員の賃貸物件探しで忙しい時期ですが渡航制限で全面的にストップしました。でも実需の動きは止まっていません。自宅購入時期を見計らっていた人、夏に他国からの帰国が決まっていた人、他州への転職で引っ越しが決まっていた人などがコロナの影響で金利が下がったことも手伝って前倒しで自宅の購入や売却をしています。これはリーマンショック後に住宅バブルが弾けた時もそうでしたが、全ての人が影響を受けるわけではないので実需の売買は残ります。
元々コロンバスが全米4位のホットな住宅市場になった背景には、長期の好況から全国で不動産が上がり、住宅取得価格や生活コストが安い地域に移動する人が増えているからです。この傾向はコロナで停止した経済が再開後も止まらないのではないかと思います。コロンバスは、その立地条件からホンダを代表する車を始めとする製造業のみならず、物流・Eコマース、金融・保険業、外食、食品・飲料産業、全米7位の経済州の首都機能、大学、IT、アパレルノと他業種に渡る産業で経済が成り立っており、一つの産業に大きく頼る経済圏と比べ前回のリーマンショックからの住宅価格の立ち直りも早い地域でした。
ジャック・ニクラウスが大会のホストを務めオハイオ州ミュアフィールドで開催されるPGAツアーのメモリアル・トーナメントも7 月16〜19 日への延期開催が決定されました。2020年は無観客試合とは言え、松山英樹選手など日本人選手も出場活躍して来たオハイオが世界から注目を受ける大会です。先が見えない中大きな大会の開催決定に州、日米、そして世界が元気を取り戻してくれたらオハイオに住む日本人の一人として、とても嬉しいです。
Keller Williams 不動産仲介士 宮本 亜希子 614-327-1938 akiko@nihongo-de-columbus.com