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ポスト・コロナの新常識
今後のオフィスの在り方を考える

〜時代に取り残されず、チャンスを掴む〜
ポスト・コロナの新常識
今後のオフィスの在り方を考える

今現在、オフィスを抱える企業にとって最大のキーワードは「コロナ対策」ではないだろうか。経営者はどのように対策するかに悩まされ、社員はオフィスで働いても大丈夫なのかと心配しているだろう。簡単にCDCが提示するガイダンスを纏めてみると、気を付けるべきは主に下記4点。

① ソーシャルディスタンス…6FT以上確保 

② パーティションを高くする…パネル増設・アクリルスクリーン設置等で約66“H以上を確保 

③ 空気の循環…空調をつける、窓を開ける、空気清浄機の設置 

④ シェアスペースの除菌…キッチン、トイレ、複合機、ドアノブ等を小まめに除菌

小規模オフィスであれば兎も角、50人、100人といるようなオフィスでは実際何処まで徹底出来るか不安である。

さて、そもそもオフィスとは一体どういった場所なのか?オフィスとは一般的には事務作業を行う場所であり、組織人が集まり経営や企画、そして公的な執務を対応し、組織をどのように運営し進化させて行くかを考え、集い、実務を対応していく場所である。その昔オフィス…事務をする場所…という概念は14世紀ころから始まり、18世紀後半に現代のような仕事と家庭が分離した「オフィス」というスタイルが生まれたらしい。20世紀に入りオフィスはその時代・業種に合ったスタイルへとどんどん進化してきた。

米国、1960年以前は、徹底した管理主義の下、全員が同じ方向を向く教室型。その後個人主義の下、集中出来るという理由から個室型のオフィスが増えていった。1970年代に入り、キュービクルという現代スタイルのパーティション(間仕切り)での仮個室的なレイアウトが主流となる。2000年に入り、ITの進化、そしてPC機器の小型化に伴いコミュニケーション重視のオープンデザインが好まれるようになる。また、ITの進化だけでなく、不動産物価上昇に伴うスペース縮小の必要性もあり、8’x8’のU字型デスクから、6’x6’のL字型、そして現在のフリーアドレスタイプへと徐々に変化してきた。

では、ポストコロナと言われる、これからのオフィスはどのように進化していくのか?ウィズコロナとしては先に書いたよう、殆どの会社がテンポラリーにスクリーン設置による対策をしていくだろう。CDCは「距離が取れないレイアウトの場合、スクリーン等の設置が望ましい」と言う書き方をしているが、個人的には距離が取れて、且、スクリーン設置でやっと対策が取れていると考えた方が企業の為であろうと考える。ただ、やはりこれはテンポラリーの処置である。

アフターコロナでは、昔のような個室型や、高いパネルを使った8’x8‘ステーションへと退化するのか?今の物価を考え、また企業のニーズを考えると、そのようなレイアウトに戻る事はないだろう。今般のコロナ自粛に伴い多くの会社がテレワークや、ビデオ電話や会議の便利さとその有効性を見出しただろう。これからの時代、変わるのはオフィスの在り方と言う概念ではなく、働き方の変化だと考える。その中で企業が問われているのは柔軟な働き方をクリエイトすること、なのではないだろうか。社員のテレワークは一般的になり、いまよりも業務委託に頼り、フリーランスで仕事を請け負う人が増えるのは目に見えている。家で仕事をすると言うことは18世紀以前のスタイルに近い。ただ昔と現在の大きな違いはIT環境だ。21世紀に入りIT・Cloud・AI等はとてつもないスピードで進化している。その便利さの反面、セキュリティーの脆弱性も懸念されるが、今般のパンデミックは、そのセキュリティーよりも便利さを追求する為の良いきっかけになったのではないだろうか。先ずはネットワーク構築を見直し、簡単そうで中々進まなかったペーパーレス化を進める提案をしたい。オフィスもフットプリントを減らすことで、多様化していく働き方、人の動きに柔軟に対応する余白を作っておくべきだ。

現在の社会において、オフィスというものがなくなることはない。このように考えられないだろうか。今までのオフィスを「体」と例えると、そこで働く人みんなで体を動かしていた。アフターコロナのオフィスは「頭脳」となり、発信をしていく場所になっていくのであろう。

今般のコロナ自粛は、間違いなく新しい経営へのトリガーとなるだろう。ダーウィンの「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。」と言う名言が我々経営者の身に染みる。経済再開へと動き始めた米国ではあるが、今まだ多くの州で感染者数は増加している。自粛も大事だが、今こそどのように安全対策を考え、効率的に会社を運営していくのかを考えて欲しい。そして治療薬やワクチンが開発され安心して生活が戻った時こそアフターコロナ、新時代への突入だ。

最後に、オフィス作りを専門とする私としては、これから多くの企業のビジョンをより多くヒアリングし、新時代のオフィス作りを模索し続けるであろう。

 

日下部 仁
オフィス設計アメリカ 代表取締役社長
東京生まれ、NY育ち、現在LAにて全米のオフィス作りを統括。父の影響を受け中学時代からオフィス作りの現場に携わり、大学卒業後はMUFG Bank(旧三和銀行)NY支店にてアナリストとして経験を積み、現職へと転身し、日欧米のオフィス作り業務へ関わる。趣味は家庭菜園とDIY、人の為に作るものは厳しく、自分の為に作るものは緩くがモットー。好きな言葉は「I have a dream…」いつの時代も夢と希望をもって突き進んでいます。

《企業概況ニュース》2020年 創立記念号掲載