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【米国人事労務管理 最前線】 従業員とのコミュニケーション

7月も下旬に入り、COVID19の影響を受けて各地で外出制限令等が出され始めてから約4か月が経ちました。4月から5月にかけて米国全体で感染拡大のペースが鈍化してきていたことから、5月下旬には全米各地で何らかの形で経済活動が再開されましたが、今度は6月から感染者数が急激に増加した地域が出てきたために、一部では感染拡大抑止に向けて規制が強化されるなど、状況が落ち着く気配が見えません。これまでマスクの効果を過小評価してきたトランプ大統領でさえ、公の場でマスクを着用したり、約3か月ぶりに開いたCOVID19関連の記者会見でマスク着用を呼びかけるなど、選挙対策という声ももちろんありますが、それほど状況が悪い(もしくはそこまでしないと状況が悪化する可能性が高い)とも考えられます。

私が拠点にしているニューヨークでは、感染者数・死者数が爆発的に増えた3月以降、厳しい外出制限とマスク着用義務の徹底に加えて、データに基づく明確な再開基準の設定と、その基準を遵守した段階的な再開により、感染者数・死者数は減少し、現時点では感染者数拡大の抑え込みには一定の成果をあげていると言ってもよいと思います。そしてこれらの成果には、アンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事の記者会見も大きく寄与していると考えています。(ご存知の方も多いと思いますが、クオモ知事はニューヨーク州で初の感染者が確認された翌日の3月2日から6月19日までの111日間は1日も休まず記者会見を開き、現在は不定期ですが大事なアナウンスメントがある時には記者会見を開いて州民に注意喚起等をしています。)つまり、規制や基準を設定するだけでなく、それらを州民に伝える努力との両輪で動いたからこそ成果に繋がったと見ることができ、それは一般企業でも多いに参考にできる点だと考えています。

6月号の当コラムでも書いたとおり、オフィスの再開にあたっては従業員の安全と健康に配慮するのは最も重要で皆様も気にされていることと思いますので、DOL・EEOC・OSHA等の法規制やCDC等の公的機関のガイドラインに従って職場環境や安全規程を見直された企業もあると思います。(州によっては安全プランの整備を義務付けているところもありますので、確認が必要です。) ここでもう一歩踏み込んで、従業員に伝える努力、すなわちコミュニケーション方法や内容についても検討して実行すると、従業員の不安の払拭にも繋がりますし、エンゲージメント向上にも効果を発揮するでしょう。 たとえば、「1.職場再開前」、「2.職場再開直後」、「3.その後」の3段階に分けて、全員に簡単なアンケートに答えてもらいつつ、フォローアップで個別やグループ別に聞き取りをすることをお奨めします。

職場再開前:会社が考えている職場再開プランについて共有した上で、オフィス出社にあたって気になることや不安な点等についてフィードバックをもらい、環境整備に活かす。また、在宅勤務が継続される従業員がいる場合には、うまくいっている点や不便な点について確認し、可能な限りサポートする。

職場再開直後:改善点が見つかった時点で速やかに対応するのはもちろんのこと、週ごと等の短い期間を設定して定期的にフィードバックをもらい、タイムリーな修正や改善に繋げる。

その後(職場再開1か月後ぐらい以降):定期的なフィードバックから随時に切り替える。また、少し落ち着いてきたタイミングで、COVID19が職場に及ぼした影響と今後の働き方の変化等についての従業員の考えを聞き、いわゆる「ニュー・ノーマル」に向けた変革プランの立案に繋げる。

 皆様の不安が払拭され、安心して安全に業務を遂行できることを願っております。

 人事労務管理関係でご質問等がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

 

三ツ木良太 
HRM Partners, Inc. President and COO

《企業概況ニュース》2020年 8月号掲載