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【DIGITAL MARKETING特集】異文化を尊重し、 アプローチ法の違いを認識

ARTISAN CREW(アーティザン・クルー)               https://www.artisancrew.com
社長 日比野 泰   氏 

 北米市場でのマーケティングに本気で取り組む覚悟のある企業が「アーティザン・クルー」の扉を叩く。ウェブサイトはあくまでもツールの一つ。それを使ってどうしたいのか。日系企業では、アメリカ市場開拓をする際にまず英語サイトを立ち上げるのが一般的だが、単純に日本語サイトを英訳しただけであったり、日本人視点で作られたものが多く、ネイティブの目から見ると不自然で読む気を引き起こさせない。「誰をターゲットとして、どういうコンセプトでやっているのか。相手を知らずに闇雲に進められているのが現状です」。異文化でリサーチを重ね、ブランディング戦略を立て、全体としてマーケティング成果を上げるには専門的スキル、ノウハウ、センス全てを兼ね備えた、英語圏ネイティブの人材が必要不可欠となる。

 デジタル・マーケティングというと、検索エンジン最適化(SEO)をイメージする人も少なくない。施策の4本柱と言われるSEO、PPC、SMM、バイラルの一つであり、比較的取り組みやすいものとして知られるが、広告費を払い表示されるトップ3のスポンサー枠は別として、自然結果で得られるトップ5までに表示されなければSEOの意味はないと日比野さんは言う。「SEOを施して100位から20位に順位が上がっても、それは自己満足でしかなく売り上げに大した影響はありません。検索結果トップ5、それはアメリカ市場すなわち世界選手権でトップ5にいることを意味し、その小さな枠を世界の企業が奪い合う───それも日本語ではなく英語で───それがどれほど過酷で熾烈な争いかは、火を見るより明らかでしょう」。

 そんな中、アーティザンクルーが受けた案件で、検索結果トップ5位内を実現できなかったことは一度もない。これは長年の経験から得られたデータを分析し施策を行なってきたため。「グーグルでは、アルゴリズム対策として約20の方法を発表していますが、これをやってもせいぜいSEO選手権へ参加登録をしたに過ぎません。その先の40個目、60個目に気付けるひと握りだけが勝負に勝てる、そんな世界なのです。グーグルのベースが広告収入なので、やはりグーグルにもメリットが生まれるPPC(ペイパークリック)を取り入れた対策も必要です。身をもって体験しなければ分からない領域もあり、単に周知の施策をやるだけなら、プロでもなく本質的にはSEOですらない。結果を出せる企業はごく僅かなののです」。

 システムエンジニアとして、日本で成功を収めた日比野さんが渡米し、基幹システム開発の会社を起こしたのが20年前。自らの技術には絶対の自信があり、〝品質の良いものを作れば、必ず売れる〟と信じていた。しかし、この考えがアメリカでは全く通用しないと気付いた。そんな折、パートナーが進めたSEO対策が功を奏し、自然と問い合わせが入るようになる。検索エンジンの威力を身を持って体験した瞬間だ。すぐにSEOという付加価値を 付けたウェブサイト制作にも乗り出し、デジタル・マーケティングに特化し始めて18年が経つ。

 「日本でどんなに大きな企業でも、アメリカではただの無名の会社です。日本やアジア諸国での勝ちパターンをそのまま持ち込み、アメリカで通用することはありません。大切なのは、言語も商習慣も考え方も違う異文化を尊重し、そして消費者層へのアプローチ方法も大きく違うことを認識すること。これまでのように、日本でマーケティングをやってきた、英語が得意、ウェブサイトの知識がある、アメリカの文化を知っているレベルの人材では、英語圏でのマーケティングを成功させることはできません。世界最高峰で戦えるだけのネイティブ人材をしっかりと揃え、本気モードで取り組まないと失敗します。ECにしても最低限のルールとして、カスタマーサポートには英語ネイティブのアメリカ人を採用し、その人がさらにネイティブ人材を教育し育てていくといった姿勢が、今の時代では最低限のレベルだと思ってください。英語圏ビジネスは強い競合ばかりで本当に甘くはない。この認識が最も大切です」 と日比野さんは締め括った。

《企業概況ニュース》2020年 9月号掲載