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ニューヨークの ワンシーンを作る空間を
北海道の魅力が詰まったレストラン

《Dr. Clark》
ニューヨークの ワンシーンを作る空間を
北海道の魅力が詰まったレストラン

Dr. Clark   共同パートナー 金山 雄大 氏/笠木 恵介 氏
104 Bayard St, New York, NY 10013 https://www.drclarkhouse.com/

 アウトドアダイニンを余儀なくされ、冬の寒さ対策をどうするか。これがニューヨーク飲食店経営者にとっての大きな課題となった。金山さんが辿り着いた答えは「KOTATSU(コタツ)」。「壁やテントで囲いを作り、アウトドアをインドアにするのは違う。換気が良くて暖かい場所とは────浮かんだのは、北海道の雪の中、かまくらに置いたコタツに入って食べるジンギスカンでした。ちょっと寒いぐらいの方が美味しいんですよ」と金山さんは笑う。

 11月には終了するとされたアウトドアダイニングが継続されることになり、本気で取り組まないとダメだと感じた。店内営業再開の許可が下りるかどうかのタイミングで、他レストランが店内の安全対策に追われる中、金山さんたちは店内対策を早々に済ませて切り札となるコタツ制作に取り組んだ。読みは的中し、コタツは多くのニューヨーカーの心を掴み、連日予約客で賑わっているという。

アメリカではここでしか飲めない、高砂酒造の利尻昆布梅酒

 このドクター・クラークが店を構えるのはマンハッタン南部のチャイナタウン、老舗カラオケバー「ウィニーズ」で知られる空間。ファッションやアート業界に関わる人間にとって特別な場所であり、80年代後半から業界人が集い、酒を酌み交わしながら朝までカラオケを楽しむ社交の場であった。ファッション工科大学(FIT)の学生だった金山さんも同店の馴染みであったが、2019年に閉店の報を聞いた時には、自らがその意思を継ごうと心に決めた。

 6年前から経営する「居酒屋」も軌道に乗り、ちょうど出身地北海道の魅力を伝える場所を作れないかと思案していた。「単にウィニーズが育んできた歴史やカルチャーを継承した訳ではありません。そこに北海道のコンセプトを乗せていく。いずれはトライベッカのオデオン、イーストビレッジのルシエンのように、その空間に身を置くことがステイタスとなるような、‟クラシック”と呼ばれるニューヨークのワンシーンを作る存在になりたい」。

 空間作りはもちろん、素材や料理にもとことんこだわる。お気に入りの尾形宗威シェフを北海道から呼び寄せ、北海道ゆかりのメニューを揃える。北海道名物の羊のジンギスカンはもちろん、他にも利尻島のうに漁師でもあった尾形シェフが腕をふるう雲丹料理の数々、海鮮丼、自家製サケトバ、石狩鍋にいずし(飯寿司)など、魅力溢れるメニューが並ぶ。また、ビールはサッポロ、ウイスキーもニッカにこだわり、同店でしか飲めない北海道産の日本酒を揃えるなどしてエクスクルーシブ感を強調している。

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 昨年3月15日にオープンを迎えた。開店2時間後にはロックダウン宣言が発令されることになったが、建築家やファッションデザイナー、コミュニティのリーダーやスタッフなど、自ら声をかけて巻き込んだ人たちとその日を祝えたことは、今でも夢を見ているようだと金山さんは振り返る。「ずっとやりたかったステージが整いました。このドクター・クラークを使って、僕ら北海道出身者にとってヒーローであるクラーク博士が育んできた北海道のカルチャーを、今度は自分たちがニューヨークに伝える番です。それが僕らの使命なのです」。その挑戦の根底には、クラーク博士の「Boys, be ambitious」の言葉がしっかりと刻まれている。

 

8卓用意されたコタツは、ニューヨーカーの心を掴んだ

シグネチャーのジンギスカン

  《企業概況ニュース》2021年 01月号掲載