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新政権発足から 約1か月間の動き

【米国人事労務管理 最前線】
新政権発足から 約1か月間の動き

継続する安全対策

 米国内で初のCOVID-19(以下“新型コロナ”)陽性者が確認されてから1年以上が経ち、国家非常事態宣言が出されてから1年近くが経とうとしています。この間、大きな動きだけを見ても、国家非常事態宣言と前後して多くの地域で外出制限令やそれに類する行政命令が出され、夏頃からの感染の減少傾向に伴って外出制限令の緩和や一部解除を含めて経済活動が再開され、秋頃以降の感染再拡大に合わせて再度の制限が発令されてと、制限と緩和が繰り返されてきています。今年に入って1月中旬頃から感染は減少傾向と言えると思いますが、変異株への懸念も次第に大きくなってきていることから、ワクチンの効果や供給状況も見つつ、適時・適切な安全対策を実施していきたいところです。

労働関連各機関のトップの指名状況

 新政権発足から約1か月。前号では「Equal Employment Opportunity Commission (EEOC雇用機会均等委員会)」と「National Labor Relations Board (NLRB:全国労働関係委員会)」のトップの指名状況をお伝えしました。本稿執筆時点では、「Department of Labor(DOL:労働省)」の長官も指名され、上院の承認待ちです。同時に副長官も指名されており、昨年3月下旬から続いている失業問題への早急な対策・対応が期待されます。

雇用・労働関連法規制の動き

 新政権が労働者寄りの法案可決を推進していくことと政策を実行していくことに疑いはありませんが、皆様もご承知のとおり、現在は新型コロナ対策が最優先事項であり、より直接的に影響を及ぼすと考えられる経済対策等が喫緊の課題となっています。そのため、前号でお伝えしたとおり、現時点で施行されていない雇用・労働法規制等については一時的な凍結が指示されていますが、前号以降の動きとして、連邦レベルでの最低賃金の15ドルへの引き上げ検討も当分は凍結されることになりそうです。(連邦レベルの最低賃金(時給7.25ドル)よりも高い最低賃金になっている州や地域については、この凍結による影響が無いのは言うまでもありません。)

 一方で、バイデン大統領は既に施行されている法令は積極的に強化していくという姿勢を見せており、「Fair Labor Standards Act (FLSA:公正労働基準法)」の強化や、それに関連する「”Wage Theft” 防止」の厳格化が明言されています。 「Wage Theft」とは「賃金窃盗」と訳せますが、具体的には、「最低賃金の規定を守らない」「実労働時間よりも過少にしか賃金を支払わない」「割増賃金(いわゆる残業代)を誤魔化すか支払わない」等が挙げれられます。ビジネス状況が大幅に好転するのが難しい中、雇用主は従業員の雇用を維持するために様々な対策を講じる必要に迫られていますが、従業員も経済的に苦しい状況にあるわけですから、雇用維持は賃金窃盗の言い訳にはならないということです。

 また、FLSAで規定されている「Exempt/Non-exemptの分類基準」についても気を付けておいた方が良いでしょう。

 本来であればNon-exemptであるべき従業員をExemptに分類してしてしまっていることで、残業代の未払いが発生しているケースがあります。日系企業では意図的に間違った分類をしていることは多くありませんが、正確な知識がないために分類間違いが起こっているケースは散見されますので、専門家の意見も参考にしながら、各ポジションの従業員の分類を再確認されると良いのではないかと考えます。

 人事労務管理関係でご質問等がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

三ツ木良太 
HRM Partners, Inc. President and COO

《企業概況ニュース》2021年 03月号掲載