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ヘルシー産業に挑む 米国ファーストフード業界

スーパーフード、ダイエット、アンチエンジング… ヘルシー産業に挑むファーストフード業界

企業概況ニュース 2016 2月号掲載

かつての米国のファーストフードが扱う商品はいかに「安くて量が多い」かということが魅力と
なっていたが、ここ最近の傾向としては、「カラダに良い」「味のクォリティ」「上質な材料」などお店選びの条件として重要なポイントとなってきている。こうしたヘルシーメニュー、体に良い品質の良い食材を使うといった食の安全をコンセプトとするお店のチェーン展開も広がりつつある。ヘルシー傾向が広がる大都市を中心に見える米国のファーストフードの変化に触れてみた。

米国も量より質の時代へ

2 0 1 4 年の一年間だけで、アメリカ人が外食ファーストフード店で消費した額は2100万ドルという。この大きな数字からも分かるように米国の外食市場でのファーストフードの人気は相変わらず強い。
ただし、ファーストフードのメニューやコンセプト、使っている食材などが少しずつ、ジェネレーションの移り変わりによって、米国人全体の食事情にも変化をもたらしている。

米国経済をリードするミレニアル世代は、「食事をする」という行為はソーシャル活動をすることと同等であり、彼らのソーシャル生活の一部だという考え方をする人が多い。食べ交流と食事が同時にできる場所という捉え方をしている。こうした外食をする目的やスタイルにも変化が見られる。表のランキングで2 位のChipotleはミレニアル世代に絶大な人気を誇るファーストフード店だ。ここは「高品質」「オーガニックフード」をコンセプトにしている。マクドナルドよりも少し割高で良いものを出すという評価が人気の背景だ。
コンシューマーレポートによると、ファーストフード・チェーン65店舗で9万6208食を食べた客によるメニュー選びの条件を調査した結果、最も重要として挙げたのが「質」だった。特にミレニアル世代をみると、「味」で店選びをする傾向が目立った。

こうした潮流に乗り遅れまいとマクドナルドやバーガーキングといった老舗のファーストフードのチェーン店も高品質、ヘルシーメニューを次々と打ち出し、これらのメニューを始めた。サラダメニューにも力を入れ、いかにカロリーの数値が少なく味も美味しいメニューを作り出すことが出来るかということが、ヘルシー傾向の今の時代を生き抜く新しい戦略として加わった。Papa John’sは年間100ミリオン予算で14種類の化学成分を使ったメニューから排除することを発表したニュースが大きな話題となったが、健康食とは一番かけ離れた存在だったファーストフードのチェーン店が、ここ数年でヘルシーなイメージに塗り替えようと、様々なヘルシーメニューの考案に躍起になっている。
「Dunkin’ Donuts」は、「エッグホワイトベジーウェイクアップラップ」というメニューを開発。ハッシュドブラウンを付けると合わせてカロリーは(350kcal)という低脂肪・コレストロールを考慮したメニュー。「Chipotle」は、 バルバコア( 牛の赤ワイン煮込み)とレタスとトマトサルサ ソフトコーンタコス (405kcal)キロカロリー、ウェンディーズはファットフリーフレンチドレッシングのラージチリ プラス ガーデンサイドサラダ(375kcal)など、それぞれ400キロカロリー以下の低カロリーメニューの展開をしている。

新たな市場を作り出すスーパーフード

CNN Money が調査したファーストフード・チェーン店の顧客満足度数で高ポイントを獲得した「Chipotle」「Panera Bread」などは、ヘルシーメニューの取り揃えが豊富だ。特にPanera Bread はここ数年で店舗数を急速に伸ばしており、人気になった理由は、オシャレなカフェテリアのインテリア、Wi─Fi完備、そして店内で焼いたフレッシュな全粒粉パンやライ麦パン、低脂肪・低カロリーの野菜をふんだんに使ったスープ、パスタやパニーニなどメニューも豊富だ。サラダのメニューは蕎麦ヌードルサラダ、キノアやケールのサラダなどスーパーフードを使ったヘルシーメニューが際立つ。

最近では、ヘルシーな食材を使ったメニューをコンセプトに持ったファーストフード・チェーン店も増えてきており、Panera BreadやChipotle の他に「Jason Deli」「Sweetgreen」「Corner Bakerly」「Fresh & Co」「Einstein Bros Bagels」「Souplantation」などが力を伸ばしてきている。ニューヨークやサンフランシスコなどでは、コールドプレスジュースを扱う専門店のチェーン展開も2年前ぐらいから広がりつつある。

 

スーパーフードの出現でさらに活発化

健康オタクやスーパーモデルから発信され人気に火が点いた「スーパーフード:Superfoods」。キノア、ケール、アサイ、玄米、全粒粉など「パワーフード」「スーパーフード」と呼ばれる食品が注目されるようになった。2 0 0 8 年を過ぎた頃から、ナチュラルフード、オーガニックフードの商品を多く取り扱う「Whole Foods」や「Safeway」「Trader’s Joe」「Harris Teeter」などのスーパーマーケットのみならず、ウォールマートや近くのお店でもスーパーフードが手軽に手に入るようになった。
今までは健康志向の人たちだけが食事に取り入れてたものだったのが、一般家庭に浸透し始めてきている。
ファーストフードもこの「パワーフード」に目をつけ、一部のマクドナルドでケールや枝豆が入ったサラダが登場。こうした食材が最近、多くのファーストフードや多くのレストランがメニューに積極的に取り入れている。

 

スーパーフードとは?
【主なSuperfoods】
スーパーフードとして認められる条件として、まず1. 有効栄養成分を多く含んること、2.低カロリーであること、3. 天然素材であることなどが挙げられる。

 

●Quinoa キノア 

現在は主要産地である南アフリカのアンデス山脈から米国の輸入量は6890万パウンド。キノアの主要産地はアンデス山脈のあるボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア、アルゼンチンなど。キノアはグルテンフリーでタンパク質が白米の2倍、カルシウムは6倍、鉄分は5倍、食物繊維は10倍も含まれている。また、準必須アミノ酸をバランス良く含んでおり、またビタミンB群、ビタミンD, E、マグネシウムも多く含んでいる。
最近特に女性に人気な理由が、女性ホルモンと同じ働きをするフェトエストロゲンが含まれており、女性ホルモンのバランスを整えてくれる。肌や髪など美容にも良い。お米と一緒に炊いたり、茹でてからサラダ、スープに入れて食べる。

●Kale ケール
ビタミンA、C、K 、カルシウム、葉酸、鉄分などが豊富に含まれている。低カロリーで低脂肪。食物繊維は玄米の9倍。ル
テインやβ -カロテンなど抗酸化作用がある。アンチエイジング効果にも良いビタミンEも豊富に含まれている。骨粗しょう
症、脳卒中、虚血性心疾患などに働きかけるカリウムも摂取できる。サラダやお浸しなどで食べる。

●Acai アサイ
ブラジルのアマゾン熱帯雨林で自生している野生のヤシ科の植物。抗酸化物質であるアントシアニンが豊富に含まれ、鉄分、マグネシウム、食物繊維、カリウム、アミノ酸、ビタミンEも豊富。特にアンチエイジングに良い抗酸化作用が高く、赤ワインの10倍以上、ブルーベリーの2倍以上もある。スムージーやデザートに入れて食べる。シリアルとヨーグルト、果物をたくさん入れたアサイボールが日本でもブームとなった。

●チアシード
メキシコ原産のシソ科植物「チア」の種子。浸水させて水を含ませると10倍に膨らんでプチプチとしたジェル状になる。このジェル状は食物繊維で、栄養価が高い。タンパク質が豊富で少量で満腹感を得られるため、ダイエットにおすすめ。ヨーグルトやドレッシングなどに入れて食べる。

●ゴジベリー(クコの実)
東アジア・中国産のナス科のクコ属の低木。中国では昔から漢方薬として食されてきた。東洋医学には欠かせない存在でもある。 ビタミンCが豊富で他にもベタイン、ビタミンB1、B2、ミネラル、コラーゲン、ゼアキサンチン、β -シトステロール、タンニン、が含まれている。アンチエイジング、肌トラブルが予防される。抗酸化作用があるので、生活習慣予防・アンチエイジング効果があると言われてる。そのまま食べたり、ドライフルーツ、スムージー、ヨーグルト、粥、お茶などに入れる食べ方もある。

●スピルリナ
アフリカや中南米、アラビア半島などの湖に生息する最古の植物の藻の一種。タンパク質が豊富で55% ~70%も含む。また、30種類のミネラルと、ビタミンB群など。β -カロテンはにんじんの約20倍で鉄分はほうれん草の約45倍といわれている。
フェニルアラニンという必須アミノ酸の一種、そして鉄分も豊富。免疫力を高めて抗酸化作用も高い。貧血予防、アンチエイジング、ダイエット、アレルギー症状の緩和、発毛・育毛など美容から健康まで効果作用が幅広い。吸収力も高く低カロリーなため、スピルリナ粉末スプーン1杯(約4g)で一日に必要な緑黄色野菜120g相当の栄養の摂取が可能。サプリメント、スムージー、パン、ヨーグルトなどに入れることが多い。多くの人はパウダー状になっているものを料理に使ったり、飲物に入れたりするのが一般的。

●ココナッツ
ココナッツオイルは中鎖脂肪酸を多く含むため、吸収が早く肝臓ですばやく分解される。そのため蓄積せずにすぐにエネルギーになりやすく、太りにくい。また脳の活性化、腸を綺麗にしてくれる効果もあるので便秘・肌荒れ・肥満の予防になる。またコレステロール値を上げるこもなく、善玉コレステロールを増やして、悪玉コレステロールを減らすというような働きもある。動脈硬化の予防も期待できる。またココナッツはカリウム、マグネシウム、葉酸、食物繊維が含まれていて、ココナッツシュガーはグルテンフリーで低糖質、GI値が35と低い。鉄分も豊富なので貧血もやわらげてくれる。炒め物など料理にココナッツオイルを入れる。白湯に入れて飲んだり、バターの代わりに使ったりする。パウダーをデザートやパンに入れても良い。

●カカオ
スーパーフードのカカオはチョコレートではなく、カカオ豆の外側を取って砕いたカカオニブ、またはカカオパウダーのことを指す。カカオに多く含まれている栄養成分は抗酸化作用があるポリフェノール。ポリフェノールは緑茶の4倍含有されており、苦味成分であるテオブロミンはカカオのみに含まれている成分で脳の活性化に良い。カカオ豆に含まれているこのポリフェノール類の「エピカテキン」という成分が、血流を良くしたり血圧を下げたりする効果がある。体への吸収力が高く、体内に留まりやすいため、他のポリフェノールよりも効果が高い。その他の含有成分は、マグネシウム、カリウム、カルシウム、鉄分、ミネラル、食物繊維も含まれている。デザートやお菓子などにカカオニブスはそのまま食べることもできる。70%~90%の低糖のダークチョコレートで食べても良い。

 

Panera Bread

 

https://www.panerabread.com/