Home > Featured > なぜ、今フロリダがホットなのか
《JETRO アトランタ事務所》

フロリダ州が企業の進出先として注目を集めている。美しいビーチや多数のテーマパークを有する観光地として、また、リタイア後の移住先としてのイメージが強いフロリダだが、ビジネス環境においても全米トップクラスの評価を受けている。コロナ禍で世の中の価値観に変化がみられる現在、その魅力がますます高まっている。

 

CEOから見たフロリダ

 チーフ・エグゼクティブ(Chief Executive)誌が4月に発表した『ザ・ベスト&ワースト・ステート・フォー・ビジネス2021(The Best & Worst States For Business 2021)』で、フロリダはテキサスに次ぎベスト2位となった。全米383人のCEOを対象に実施したこの調査では、企業が立地選定の際に重視する要素として「州の税制」、「規制」、「人材」がトップ3であったが、いずれの項目においてもフロリダは全米で上位だった。特に州の税制に関しては、最高法人所得税率が5.5%と低く、また、個人所得税は存在しない。エリア・デベロップメント(Area Development)社が発表した『2020トップ・ステート・フォー・ビジネス(2020 Top States for Business)』の法人税制度部門では堂々の1位を獲得しており、企業、個人の双方にとって税制上のメリットが大きい州だ。また、資本規制や利益の本国送金に対する規制も原則存在しない。

他州からフロリダ州への最近の進出企業事例
(移転、拠点設立等:予定含む)

 州内の1050万人の労働力人口の中には、バイリンガルの他、バイオテクノロジー、サイバーセキュリティ、フィンテック、航空宇宙などの最先端分野での専門知識を持つ人材も多い。フロリダは、州の学校システムで少人数クラスを導入するなど人材を支える教育に力を入れていることでも知られている。USニュース&ワールド・レポート(U.S. News & World Report)による教育ランキングでは、初等教育も含めた全体では全米3位、大学や高等専門学校などの高等教育に関しては4年連続で全米トップを獲得している。また、州内では各種労働力開発プログラムが提供されるとともに企業に対しては従業員教育のためのインセンティブが設けられており、他州に比べ、優秀な人材の採用、育成がしやすい環境にあると言えよう。

中南米ビジネスのハブ

 ビジネスでフロリダに進出するメリットの一つとしてよく挙げられるのが、アクセス可能な市場の規模である。同州のGDPは全米4位の1.1兆ドルで、これはメキシコやインドネシアに匹敵する大きな市場だ。加えてフロリダの魅力をさらに高めているのが中南米市場へのアクセスのしやすさで、これは他州にはない絶対的な優位性と言える。中南米ビジネス専門誌アメリカ・エコノミア(América Economía)は、中南米ビジネスに適した都市ランキングでフロリダ州のマイアミを1位に選出している。マイアミは、中南米以外からランクインした唯一の都市だ。実際に、マイアミの位置する南フロリダには1400社以上の多国籍企業が進出しており、その多くは中南米統括拠点としての機能を担っている。米国企業ではアップル、マイクロソフト、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フェデックスなどが、日系企業ではパナソニック、ヤマハ発動機、リコーなどがフロリダから中南米向けのビジネスを展開している。また、ソフトバンクは2019年に50億ドルを投じ、成長する中南米市場に特化したテクノロジーファンド(ラテンアメリカ・ファンド)をマイアミに設立した。

 フロリダが中南米ビジネスの拠点として優れている主な理由の一つは交通インフラだ。州内の主要な空港であるマイアミ、オーランド、フォートローダーデールの各国際空港を合わせると中南米やカリブ海諸国に120便以上の直行便が就航し、発着便数で他州を圧倒している。海上輸送の観点でも、フロリダからの中南米へのコンテナ貨物輸出額は米国全体の4割以上を占める。二つ目の理由は多様な民族文化と人材だ。フロリダにはキューバ系をはじめ、ブラジル系、コロンビア系、ペルー系などの大規模コミュニティがあり、自社ビジネスがターゲットとする国の文化を知る人材を雇うことができる。三つ目の理由は中南米に関する情報の集積だ。中南米各国とのビジネスに精通する弁護士やコンサルタントなど専門家が存在し、また、これら各国の政治経済やビジネス動向を扱うメディアも数多い。フロリダに進出している企業は、交通インフラ、人材、情報面での優位性を生かし、より容易に中南米にアクセスすることが可能となるのだ。

起業家が集タートアッが活躍

 人口2200万のフロリダには毎日平均で1000人が州外から移住し、様々な才能が集まり起業家精神に富んだ人材も増えている。テック産業の集積、育成に力を入れる地元政府の後押しもあり、数多くのスタートアップが誕生している。起業家育成で定評のあるカウフマン財団が起業の数や雇用者数をもとに発表するスタートアップ活動指数では、2016年にマイアミ都市圏が全米の他の40都市圏を抑えてトップに立った。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を用いた空間コンピューティングカンパニーのマジック・リープ(Magic Leap)や、駐車場の高度管理サービスやスペースを利用した新たな価値の提供を行うリーフ・テクノロジー(REEF Technology)などユニコーン企業も現れ、マジック・リープにはNTTドコモが、リーフ・テクノロジーにはソフトバンクが投資している。

 マイアミは、2019年のVCによる投資額ランキング(CBインサイツ(CB Insights)社発表)で23.9億ドルと全米で7位、米国南部ではトップの都市圏となった。その特徴をみると、エンジェル投資を受けたシードステージのスタートアップが占め、特に新興スタートアップ・ハブとして注目が高まっている。初期段階のスタートアップにも積極的に投資を行い世界で最もアクティブなVCの一つとして知られ、同時にインキュベーターとしての役割も併せ持つ500スタートアップス(500 Startups)は、米国内の各地を比較検討の結果2018年にマイアミに拠点を設立した。同社は米国外には複数のグローバル・ネットワークを持つが、米国内の拠点は本社のあるサンフランシスコとマイアミのみであることからも、フロリダの持つポテンシャルを高く評価していることが伺える。また、今年1月にはソフトバンクが、これからマイアミに移転する企業も含め、この地域のスタートアップを支援するため1億ドルを出資すると発表した。

コロナ禍でフロリダへの進出が加速

 事業用不動産サービス会社のCBREが実施した調査で、サンフランシスコ・ベイエリアからフロリダに移住する人が2019年から2020年にかけて46.2%と急増していることが判明した。その主な要因について同社は、コロナ禍でテック企業の多くがリモート・ワークに移行したことが、よりコストの低い地域への移動を促したと推測している。米国トップのVCであるファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)のジェネラル・パートナーのキース・ラボイス氏も西海岸からマイアミに移動した一人だ。

 東海岸、特にニューヨーク周辺からフロリダに進出する動きも、金融業界を中心に顕著になってきている。ヘッジファンドのエリト・マネジメント(Elliott Management)は2020年10月、マイアミの北に位置するウエスト・パーム・ビーチへの本社の移転を発表。住宅ローン会社のニューデイUSA(NewDay USA)は今年3月、同じくウエスト・パーム・ビーチに第二本社の設置を発表した。第二本社の場所選定に際しては、若い人々が住みたい場所も考慮したと同社は明かしている。これら以外にも本社や特定部門をフロリダに移転する例は複数みられ、移転を決断した経営トップは共通して、有利な税制、生活の質、優秀な人材をその要因に挙げている。

 コロナの感染拡大は世の中の価値観を変え、ワークスタイルの変革を10年以上早めたとも言われている。パンデミックという偶然の要素が大きいものの、サンシャイン・ステートの愛称が示す温暖な気候、美しい自然に囲まれた住環境や様々なビジネス上の魅力を有するフロリダが選ばれるのは必然とも言えるだろう。

《執筆者》
ジェトロ・アトランタ事務所
高橋 卓也 所長
www.jetro.go.jp

 

 

 

 

 

 

 

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《企業概況ニュース6月号 vol.268掲載》

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