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労使間の守秘義務契約にまつわる話
《HRM PARTNERS, INC.》

人事・備忘録 第三回
労使間の守秘義務契約にまつわる話
《HRM PARTNERS, INC.》

 今号の「人事・備忘録」は、労使間における守秘義務契約を取り上げます。

 企業経営者の多くは、これまでに従業員と守秘義務契約書を交わした事がある、あるいは現在も継続して同契約を結んでいることでしょう。それは自由競争による商行為を行う企業が、社会的規範や倫理・マナーなどを遵守せざるを得ないこのコンプライアンス先導の時代において、自社(自己)責任の確立および自らの情報公開による率先した透明性が要求されるようになってきたと同時に、企業および株主達の利益を守るべく逆に企業が有する重要な情報群の社外流出による利益の損失を防ぐことも合わせて行う必要があるからです。

 しかしながら、企業経営者が、商行為から生じる全ての情報を機密扱いにしたいと願っても、かなり難しいでしょう。これは言い方を変えるなら、企業経営者が全ての情報を機密扱いにしたところで、果たしてそれら全てが重要な機密情報として公に(あるいは裁判で)認められるか甚だ疑わしいからです。

 近年は「一企業内の従業員全員が共有する社内情報」=「広く周知された一般的情報」と受け取られる傾向から、高度な機密情報とは認められ難いところがあり、従ってたとえエンプロイーハンドブックなどの企業ポリシーの中で「情報守秘」を謳っているにせよ、それだけでは厳しい情報管理ができているとは言えません。

 それが為に企業は、それら情報の一つ一つが如何に機密扱いするべき類かをアピールするべく、それぞれの職務ポジションに特化して生まれる情報を中心に据えつつ機密認定することで、社内で周知された公的な一般情報とみなされることを避けてきたのですが、例を挙げるとするなら、経理部門に就く従業員には財務情報を、営業部門に就く従業員には顧客情報や価格設定およびキャンペーン情報を、エンジニアリング部門に就く従業員には成分や製品スペックなど、これらがそれぞれに特化し且つ外部漏洩を避けるべき情報と言えますし、機密扱いにする情報の種類や分野および守秘範囲の異な
る条件を設けて職務ポジション毎に制約や内容の異なる守秘義務契約を交わすことで、その機密情報の特異性を知らしめるべく努めてきたと言えます。

 但しそんな中、守秘義務契約を部門毎や職務ポジション別などに特化して交わすことで企業側に別の問題が生じてしまいました。

 皆さんはNLRA(法)と言う法律をご存知でしょうか。NLRAとはNational Labor Relations Actの略で、一般の方や一般の企業には馴染みがないかもしれませんが、Labor Union… 即ち、従業員(労働者)達をして労働組合を組織する権利・労働運動を行う権利を守る法律であり、「労働者は、自身の就労条件や待遇を改善させるべく、(団結して)労働運動を行う基本的権利を有する。」というものです。

 本題に戻りますと、この各々の職務ポジションに特化して、例えば「あなたが、あなたの立場(職務ポジション)に就いていることで知り得た情報や生じた情報の共有は関係者に限定され、たとえ社内の同僚の者にであろうと、みだりに口外してはならない。」との文言は、どこの労使間の守秘義務契約書にも記述してあった契約条件なのですが、この「同僚であれど関係者以外への口外禁止」がNLRA(法)による「従業員達の就労条件や待遇を改善させるべく、保障された団結権」を侵害する行為だと米国連邦政府の独立機関であるNational Labor Relations Boardがみなしてしまったことが原因です。

(次号に続きます)

 

上田 宗朗
HRM PARTNERS, INC.
mueda@hrm-partners.com
※企業概況ニュースにて「人事・備忘録」を連載中

《企業概況ニュース》2021年 10月号掲載

 

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