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市川海老蔵さん 初の一夜限りのニューヨーク公演 意気込みと思いを語る

市川海老蔵さん 初の一夜限りのニューヨーク公演
――――意気込みと思いを語る

歌舞伎・能楽・狂言といった日本の伝統芸能が一挙に同じ舞台で披露される「市川海老蔵 GRAND JAPAN THEATER」が、ニューヨークで初めて公演が実現。これに向けて歌舞伎役者の市川海老蔵さんが、公演日2日前の2月27日、日本クラブで記者会見を行った。

──ニューヨーク公演に向けて意気込み、伝えたいことは?

ニューヨークは父、團十郎が襲名の時に公演しています。「暫」という歌舞伎十八番で、非常に大きな衣装でやっていたのですが、自分よりでかい人(アメリカ人)が入ってきてびっくりしたと思い出を語っていました。
ニューヨークというのは憧れの場所でもありますし、ここで歌舞伎ができるということは、日本の文化を伝える者としては大変有難いことです。気を引き締めてやりたいですね。この公演をやることになったのはご縁があったからです。導かれた感じですね。

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──観客に一番伝えたいことは?

お能、お狂言は600年。歌舞伎は400年強という歴史があります。そして米国は英国から独立して240年という年を迎えますが、市川家でいうと5代目團十郎が襲名した時です。歴史という意味では日本と米国は咬み合わない。そこで日本の奥ゆかしさ、すべてを見せるわけではない『秘するが華』という日本の文化を伝えていければいいなと思います。

──今までやられてきた海外公演の手応えは?

やはり今までは『のれんに腕押し』という感じでしたね。ただ、近年やらせて頂く上で、これではいけないと思いました。海老蔵襲名披露のパリ公演や父、團十郎とのオペラ座での公演はその場では良い結果をもたらしましたが、海外公演をすることで、何が歌舞伎にとって本当に何がいいことかを考えた時に、一番大事なことはその先なんですよね。
この前の中東やシンガポールでやらせて頂いたんですけど、そこで観てくださった現地の方がまた日本で観たいなと思って頂くことが、やはり海外公演の大きな目的であると思うんです。海外でやるからかっこいいとかクールだなと思うことは二の次。日本に来た時に受け皿の準備という意味で海外公演をやることが一番大事なことだと思っています。手応えというのは実質なかなか感じることはできません。でも色んな国に行くことによって、手応えらしきものは感じます。

──フジャイラの公演のお客さんの反応は?

フジャイラはUAE(アラブ首長国連邦)の7つ国の中の一つで、まだ未開の地なんですよね。そこの王女が日本の文化が好きで、王子が私に興味を持って頂いてたということで、呼んで頂きました。文化の違いはあるんですけど、なにか感じるものがあるんだなと思いました。王子とは同世代で、普段お考えになっていることは教育や文化のことでした。だから、公演前と後では王子との会話も違うものができて。そこに手応えがあったなと。

──海外公演ならではの特別な工夫は?

時間や表現方法は多少変わってきます。フジャイラ、シンガポール、パリ、そしてロンドンの公演も想定していたものと現場では変わっています。モナコ公演の「鏡獅子」では、父が鳴神をした時もちょっとした工夫はありました。こないだの大阪と東京の公演で鏡獅子はやらせて頂いたのですが、今回はまた違った形の鏡獅子をやらせて頂きたいですね。

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──日本の伝統文化として伝えていきたいことは?

日本の文化というのは非常に独特なんです。島国ですから他の文化が入ってこなかった。純度が高いものなんです。色んな人種が暮らしているニューヨークやロンドンの人たちがどういう風に観てくださるのかが、非常に楽しみです。日本の文化というのは、絵でいうと満杯ではなくて余白を楽しむ深み、味わいというものがある。お茶でいうと、観て頂く感覚。華でいうと生ける時の呼吸など、こういうものは日本の文化ならでは。日本の文化の一番難しいところの静けさ、間合いを伝えたいなと思っています。

──今回は一日だけの公演ですが、これからもニューヨークでやる可能性はありますか?

いずれは私も團十郎を襲名する時が来るはずですから、その時は、ニューヨークにまた、ぜひ来たいと思います。今回の滞在中に時間があったらMETやリンカーンセンターも観に行きたいなと思っています。やはり進んでいる街なので、闘えるカードを吟味しておかないとまったく意味のない公演になってしまう。まずは初めて来たということで、お狂言、お能、歌舞伎の古典を観て頂きたい。その後は古典だけでは闘えないと思っているので、闘える姿勢をきちんと作ってまた、ニューヨークに乗り込みたいなと思っています。

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