Home > Featured > 連載⑨ 「理由ある抵抗」と真摯に向き合え
《ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ》

 今回からは「抵抗勢力編」です。

 失敗した変革プロジェクトの関係者が、必ずと言っていいほど口にするのが「社内の抵抗にあいまして…」です。在米日系企業では、特に本社指示のプロジェクトや駐在員が推進する変革は「現場の声が反映されていない」と難色を示される傾向にあります。

 抵抗は「態勢の質」を著しく低下させます。「態勢の質」とは、プロジェクトに関わる様々な関係者の熱量です。改善意識や危機意識を共有し、全員でプロジェクトのゴールを目指す状態を維持すれば、態勢の質は高まるのですが、抵抗はそこに冷や水をかけます。

 抵抗にあい、態勢の質が低いままプロジェクトを進めても、関係者同士で熱のこもった議論はできません。そんな状態では、優れたコンセプトやロジカルな分析、良い施策などを出せません。プロジェクトは、常に態勢の質を高め続けなければならないのです。

 抵抗はつぶすのではなく、向き合うことが大切です。その理由とコツをお伝えしていきます。 

そもそも「抵抗」とはなにか

 もし、自分が今所有しているものに特に困っていない場合、いきなり「それを手放せ」と言われたら、恐らく「手放したくない」と思うのではないでしょうか。「手放したほうが、良いことが沢山ありますよ」と言われても「そうですね」とすんなり手放しがたい。これがいわゆる「抵抗」です。

 行動経済学では、こういう心理傾向を「現状維持バイアス」と呼びます。未知のものや未体験のものを受け入れるくらいなら、現状のままでいい。他人から見れば「バイアス(偏見)がかかっている」のですが、当の本人は「新しいことにチャレンジして得られる利益より、被る可能性のある損失のほうが大きい」と感じているのです。

 つまり抵抗とは、出身国に関わらず誰しもが持つ心理作用であり、生理現象なのです。

 

抵抗する側にも理由と正義がある

 抵抗は必ず起こるとはいえ、変革をやめるわけにはいきません。ならば、抵抗している人に冷静に話を聞いてみましょう。そうすると、抵抗の奥底には、その人なりの理由や正義が潜んでいることがわかります。

 例えば、売上が右肩上がりのメーカーで「増えすぎた商品ラインナップを整理して、製造コストを低減していこう」という変革プロジェクトを立ち上げたとします。しかし営業部から猛反対にあいました。売上トップの営業担当者に話を聞くと「バラエティに富む(もしくは、豊かな)商品が、顧客を惹きつけてきたから今があるのだ」とのこと。実際に売上は伸びてきたのですから、その担当者の話は筋が通っています。

 あるいは、とある部門で、これまで属人化していた業務を、マニュアル化して誰でもできるようにしようとします。部門の責任者にそのことを話すと「今でさえ業務は手一杯なのに、これ以上部下に負荷をかけるわけにはいかない」と断られました。彼は部下を守ろうと抵抗しています。

 変革を推進する立場にいると「推進する側が正義であり、抵抗する側が悪」と捉えてしまいがちですが、抵抗する側には抵抗する側の理由や正義があるのです。

 従って、ケンブリッジは、抵抗と真摯に向き合うべきだと考えます。できるならば、抵抗の芽が出るか出ないか位のタイミングで、お互いの想いをすり合わせて納得感のある落とし所を見つけられれば、協力関係を築くことも可能です。より詳しく聞きたい方は8月26日開催のウェビナーにご参加ください。弊社ウェブサイトにて登録できます。

 次回は「抵抗勢力編」の二回目をお伝えします。

 

《執筆》
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ
ティンダル 玲子 さん

2020年ケンブリッジ米国法人入社。コンサルタントとして大手製造業のERP導入、グローバルロールイン/アウトに従事。SAP FI(財務会計)認定コンサルタント。米国・ドイツ・日本でプロジェクトを経験。在米歴8年(大学、大学院、ケンブリッジ米国法人)。米国人の夫・娘・猫と暮らすワーキングマザー。

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズは在米日系企業の業務改革、IT戦略立案、DXに必要なコンサルティングサービスを提供しています。あらゆる変革の立ち上げから導入までを円滑に進める方法論とバイリンガルファシリテーションを武器にプロジェクトを成功に導きます。日本では7年連続「働きがいのある会社」Top 10に選出されています。

http://www.ctp.com

《企業概況ニュース》2022年8月号掲載

 

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