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消費者向けの最新技術 コンシューマーテクノロジー(CES 2023)

「コンシューマーテクノロジー」とは、その名の通り「消費者向けテクノロジー」を指す。私たちの身近にあるテクノロジーは多種多様でその技術は年々向上していることを実感する。コンシューマーテクノロジーの最新動向について追ってみる。

 

 コンシューマーテクノロジーと呼ばれる、生活に密着した消費者が利用できるテクノロジー機器や技術は、進歩を続け私たちの生活の質を高めるとともに、利便性、ライフスタイルに変化を及ぼしている。2023年1月5日から4日間行われた世界最大規模のテクノロジー展示会「CES 2023(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー 2023)」でも、世界のメーカーが新たな革新的コンシューマーテクノロジーの製品を発表した。スタートアップ企業から大企業まで3,200以上の出展があり、「FORTUNE GLOBAL 500」の323社、「INTERBRAND 100」の85社等が、173の国・地域から集まり、出展企業の3割が米国以外の海外企業であった。スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、デジタルヘルスケア、EV、ドローン、テレビなどIoT家電を含めた家庭で利用する数々のコンシューマーテクノロジーのイノベーションは多種多様化が進んでいる。

 市場と消費者のデータに特化したオンラインプラットフォームstatistaのレポートによると、2023年末の時点で世界の消費者が
IT機器、家電などのテクノロジー製品に消費支出する額は5,050億ドルに達し、2020年から20%増加すると予測した。

 IoT家電は、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスと接続することによって機能する。スマートフォンはもはやコミュニケーションを目的とする機器ではなく、家電やその周辺にあるほとんどの電子機器をコントロールする中心的存在と言っても過言ではない。今や世界人口の半数である40億人がスマートフォンを利用しており、米国では大人のスマートフォンの利用率は全体で* 85%を超えている。2021年の世界におけるスマートフォンの売上高は**4,812億ドルで、タブレットはピークを過ぎたものの、同年で1億6,800万ドル、スマートウォッチは2023年で4億9,000万ドルに達するだろうと予測されており、これは2020年に比べて80%の増加となる。

*Pew Research Center. “Mobile Fact Sheet.”
**statista.com

拡大するスマートホーム市場

 コンシューマーテクノロジー市場で最も大きな存在を示しているのが冷蔵庫、スマートTV、エアコン、照明、アシスタントロボットといった家電を揃えたスマートホームである。

 世界の経済を動かすキーマンとなっているミレニアル世代やZ世代などは、スマート家電の購入率が高い層で、最新テクノロジーを普段から使いこなしている。そんな彼らの購買意欲を掻き立てる製品が次々と市場に出回っている。コロナ禍の影響で巣ごもり傾向が高まったうえ、リモートワークへの転換という追い風もあり、Wi-Fi機器アップグレード需要が拡大した。さらに自宅を職場として利用する人も増え、家電とAIやIoTなどインターネットと繋ぐスマートホーム化も進んだ。

 マーケティング会社のメディアポストの報告によると、2023年までに世界全体の15%の世帯がスマートホームデバイスを導入するであろうと予測。米国ではすでに69%の世帯が少なくとも一台はスマートホームデバイスを利用している。スマートホームの世界市場は2021年で*770億ドル、2022年の時点ではおおよそ920億ドル(年間成長率19%)まで伸びるというデータからも、今後もかなり成長が期待がされる市場である。

* TBRC Business Research PVT LTD調べ

2023年のCESイノベーションアワードを獲得した製品は?

 CESでもやはりコロナ感染拡大やCO2削減対策といった問題をテーマとしているサスティナブルやクリーンエネルギー、ヘルスケア製品が多い傾向にある。世界の家電業界最大手のサムスンも「Everyday Sustainability」をテーマに製品づくりに励んでいる。そのサムスンがCESで発表し、イノベーションアワードを受賞したのが「Smart Things Station」というスマートホームデバイスでアマゾン、アップル、グーグルなどのIT企業が参加する無線通信規格標準化団体(CSA:Connectivity Standards Alliance)が取り組むスマートホームに特化した通信規格「Matter」に対応している。Matterに対応することで、デバイスとソフトウェアの互換運用性を向上することが可能となり様々なブランドのIoT家電とコネクトができるようになり、さらに利便性と省電力化を狙っている。

 またウェアラブル技術部門で、サムスンがイノベーションアワードを受賞したのが、次世代ウェアラブルの様々な無線接続を低電力消費でサポートする「エクシノスW920/エクシノスRF 6550」だ。これらの小型チップセット​​は、次世代ウェアラブルのハイパフォーマンスをサポートする。

Digital Health

 デジタルヘルス部門でイノベーションアワードを受賞したのがカリフォルニアを本拠地とするErgoSportive社が開発したスマートベッド。ガーミンのウェアラブル端末と接続可能で、スマートセンサーが働き、寝ている状態をモニタリング。質の良い眠りを実現する革新的なベッドだ。

 同じ部門で受賞したオランダのベンチャー企業のAlpha Beats社が開発した「alphabeats」は、脳波センサーが搭載されているヘッドバンド型のウェアラブルでアルファ波の動きを誘発し、メンタル面から遂行能力向上を促す。最も優秀な製品に与えられるベストイノベーションアワードを同部門で受賞したのが、シンガポールの医療機器メーカーAevice Health社の「The AeviceMD」というウェアラブル聴診器。胸部にデバイスを着けることで音を分析し、呼吸数や心拍数などをアプリと連動して記録し健康状態を監視してくれる。

Smart Cities

 ACWA Robotics社が開発した「Clean Water Pathfinder」は、節電を実現する水道インフラの整備に必要なデータを提供してくれるロボット。スマートシティカテゴリー、スマートエネルギー部門でベストイノベーションを受賞した。

Home Appliances

 Home Appliances部門でイノベーションアワードを受賞したのは韓国の家電メーカーLGが開発した高性能洗濯機「LG WashTower」。大きめのスペースを確保し、大容量の洗濯を可能にした他、LCDコントール、AI機能を搭載している。さらにLGはスマートTVとは異なるビデオディスプレイ「LG Transparent OLED Screen」を発表し、ベストイノベーション賞を受賞。ビデオ鑑賞専用機器として開発され、必要最低限の機能にスペースやインテリアを考えたスマートでおしゃれなデザイン、ARデバイスと連携といったシンプルかつ時代のニーズに合わせた特色が新しい家電として評価された。

In-Vehicle Entertainment & Safety

 Bosch社の「RideCare companion」は、In-Vehicle Entertainment & Safety部門でベストイノベーション賞を受賞。ライドシェアリングのドライバーと乗客の安全のためにデザインされた機器で、高度なセンサー、アルゴリズムなどを駆使し、緊急時にはボタン操作のみで外部からアシストを受けられる。

 ソフトウェア・モバイルアプリ部門でベストイノベーション賞を受賞したのがキヤノンの「アムロス(AMLOS)」。同社の画像処理技術を活用したオンラインミーティング向けのソフトウェア。手元にある資料やホワイトボードに書いてある文字などをリモートで表示することができる。

Sustainability, Eco-Design & Smart Energy

 ベストイノベーション賞を受賞したのは、米国のアウトドア用のポータブル電源や太陽光発電製品を販売しているJackery Incが開発した「Jackery LightTent-AIR」という太陽光発電機能を備えたテント。最大4、5人分の電力を確保でき、レジャーや災害時などにも役立つ画期的な製品だ。

Cybersecurity & Personal Privacy

 サムスンの「Biometric Card IC S3B512C」は、指紋認証センサー、セキュリティチップ、セキュリティプロセッサを一つのチップに統合したサイバーセキュリティソリューションとして大々的に発表されて注目を浴びた。この指紋認証カードの強力なセキュリティ技術によって確実な本人確認が実現可能になる。

Computer Hardware & Components

 Lenovoから発表された「Yoga Book 9iは、」デュアルモニターが特徴のノートパソコン。キーボードはBluetoothで接続でき、タブレットやテントスタイルでも使用できる。

*****

 今年のCESで発表された製品はコロナの感染拡大がきっかけとなって誕生した製品も多く見られたが、SDGsを意識して生まれた製品の存在感は例年にも増して際立っていた。コンシューマーテクノロジーはこれらのソリューションを軸としたスマートシティの基盤構築から始まり、各世帯のエコシステム構築が進んでいくことが予測される。政府の後押しもあり、スタートアップ企業がますます力を蓄え、今後もさらに環境問題、クリーンエネルギー対策、省エネ、カーボンニュートラルの分野の活性化が期待できる。

《UJP編集部》

 

《企業概況ニュース 2月号掲載》

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