JETRO New York Office
Director
宮野 慶太 氏 Mr. Keita Miyano
2007年内閣府入府。内閣府では、GDP統計、経済財政に関する中長期試算の作成などに従事。中小企業庁や金融庁にも出向し、そこでは中小企業支援策や金融規制などの業務を担当。2020年10月よりジェトロに出向。
Squire Patton Boggs (US) LLP
Attorney at Law
須山 大樹 氏 Mr.Hiroki Suyama
日本企業の国際的な法務分野、企業取引、M&A、雇用法、知的財産、その他の事業紛争に係る訴訟および紛争解決につき豊富な経験を有し、多くの日本企業の社外法律顧問を務めている。紛争解決においては、各種紛争案件について解決への戦略作成、和解、米国での調停や仲裁を数多く経 験。日米双方のビジネス文化に精通しており、それぞれの文化における思考や行動の特徴も深く 理解しており、訴訟のすべての過程において日系企業のサポートに従事している。
Pasona N A, Inc.
President & COO.
古代 賢司 氏 Mr. Kenji Furushiro
MBA取得後、パソナグループの米国法人パソナN Aに入社。営業、人事開発部マネージャーを経て、2013年に代表取締役に就任。人材サービスの提供に限らず、全米各拠点にて最新のトレンドを踏まえた多様な内容のセミナーも開催。また地域貢献として、日系企業ネットワーキング会の開催や進出企業への基礎情報提供などを積極的に行っている。全米10拠点をベースに、日系企業のグローバル人事戦略を総合的に、また迅速に支援できるよう奮闘中。
米国パソナのプレジデント・古代賢司氏が、様々な業界のエグゼクティブと対談し、日系企業の今、そして未来について深堀りしていく人気のウェビナーシリーズ。第19回目の今回は新年特別号でお届けした「米国経済・労働市場の動向と在米日系企業が挑む未来」の続編として、前回に引き続きJETRO New York Officeより宮野 慶太氏に米国経済・労働市場の動向を説明していただき、新たにSquire Patton Boggs LLPの須山弁護士を迎えてのパネルディスカッション形式で、今後の米国経済動向・労働市場を背景に、企業が直面しうる課題と備えについて、事例紹介や法的観点からのアプローチを交えながらお話していただきました。その一部を紙面でご紹介していきます。
宮野さん 米国経済は鈍化傾向ですが、まだ大きな減速は見せていません。消費が下支えしている状況です。ただし、消費の先行きは不透明で、この消費がいつまで持ちこたえられるかが今後の鍵になっています。サービス部門は他の部門に比べて景気減速が緩やかで、その分賃金が高止まりしていて、賃金上昇分の価格転嫁がインフレを助長させる流れとなっています。賃金上昇を今後緩やかにできるかがインフレ抑制の観点からは重要です。中央銀行はインフレ抑制を重要視して2023年、2024年も高金利を継続する見通しで、結果として、2023年は1%程度の成長を企図しているという形ですね。景気後退は避けられないという見通しが大勢ですが、後退したとしても大きなマイナス成長は避けられるのではないかという見方も根強くあるというのが現状です。
古代さん 12月からの引き続きアップデートということで、やはり米国労働市場の逼迫と個人消費の部分が今回のインフレーションに影響を及ぼしているというところだと思いますが、弊社の採用案件や、他社さんのレポートを拝見しても、求人状況において極端にドラマティックな現象(変化)というのはないようですが、年初から徐々に下降気味というのは我々の方でも感じていて、景気後退に向けて少しずつ、スライドしていっているのかなと感じています。
視聴者の方から、こうした不透明な経済状況下で経費削減に関する質問がきています。「従業員全員を対象に賃金給与カットを検討していますが、法的に注意すべきことがあればアドバイス頂きたいです」ということですが、須山先生にお願いできますか?
須山さん やはり法的観点から一番注意しなくてはいけないのは、後から違法な差別があったというクレームを引き起こさないようにすることだと思います。給与カットをするのであれば従業員全員に対しても 5、10、15%など、一律でやればあまりリスクはないと思いますが、差をつけてしまいますと、後から性別、人種などに基づいて違法な差別を受けたといったクレームが出てくる可能性がありますので、まずそこを注意する必要があるかとは思います。そこさえ注意すればアメリカの労働者のほとんどはAt Willという形で雇用されていますので、会社側はいつでも給与を含む雇用条件を変更することができます。ただ、アッパーマネジメントの場合は正式な雇用契約が存在するかもしれませんので、その場合は雇用契約書に定められている方法で書面での手続きはとっておくと良いかと思います。
古代さん ありがとうございます。今年の年初ですかね。カリフォルニアで賃金透明化法というのが施行されたかと思いますが、今、7つの州で施行されていますが、このあたりで、先生へのご相談などはありますか?
須山さん カリフォルニアも従業員が15人以上の企業様は求人募集にはそのポジションのサラリーレンジを開示しなくてはいけないという法律が導入されて、100人以上の従業員がいる企業様は州に年次ペイデータのレポートを提出することが義務付けられました。今年からのこの法律対応のための相談というのは色々あって、多くの企業様がこの制度を歓迎されていないようでした。走り出してみて問題が出てくると想定していましたが、現時点ではあまり大きな問題が生じているという話や、相談というのはあまりないのですが、求人広告を見ますと、上から下のレンジの差が10万ドル以上あったりもします。そういう企業様はトランスペアレンシーアクトに違反しているという訴訟になるケースも考えられます。この法令違反については集団訴訟の対象に将来的にはなると思います。集団訴訟の場合は、違反1回に付き100ドルといったペナルティの換算方法なので、そういった訴訟が出てくるのは4年後とかになると思います。その理由は、今訴えても、まだ6月なので、半年分くらいのペナルティしか生じないんですよね。カリフォルニアでは時効が最大4年になりますので、4年分のペナルティを待って集団訴訟を起こす、といったケースも出てくると思いますので、賃金透明化法が適用される企業様は今からしっかりコンプライアンスをしておいた方が良いと思います。
古代さん 対象の企業様は準備を整えておいた方が良さそうですね。ありがとうございます
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