大量のデータを高速処理で分析し、将来を予測したりビジネスに活かすビッグデータビジネスに多くの企業が力を入れています。例えば、経済状況や市場の動き、そして顧客のリスク許容度などに関して多くのデータを分析し、顧客のポートフォリオを機械的に運用するオンライン証券会社である「ロボアドバイザー」が注目されています。大手銀行でも、例えばコールセンターに住宅ローンの金利の照会をした顧客に対して住宅ローンのダイレクトメールを送付したり、関連するバナー広告をその顧客のオンラインバンキングで表示するなど、データを利用したセールスの強化が行われています。
それだけ多くのポテンシャルを持つビッグデータですが、同時にプライバシーの問題も注意喚起されています。例えば、音声でチャンネルの切り替えなどができるあるスマートテレビに関して、実際にはそのテレビはリビングルームの音声を全て拾い、分析のためにサードパーティーに渡されていることが明らかとなりました。つまり、リビングでの夫婦の痴話喧嘩はもとより、密談の内容も第三者に渡ってしまうわけです。
「別にやましいことは言っていない」と割り切ることも可能かもしれませんが、実際には他者に聞かれていると思うと、発言や行動が抑制され、つまりは自由が奪われ、それにともないイノベーションが阻害されるという懸念も指摘されています。プライバシーに関しては、個人情報を収集し、サードパーティーに渡す場合は本人の承諾を得る(オプトイン)、情報の収集方針に関して開示する、個人情報の理由は本人が承諾した使途に限定する、個人情報の使われ方(誰に、どの情報を、どのようになど)については本人が管理できるようにする、などいくつかの原則論はありますが、米国では網羅的な法令があるわけではありません。ただし、プライバシーをおろそかにする企業は消費者から敬遠されるだけでなく、消費者団体などから集団訴訟を起こされ、予期しない損失を被ることも考えられます。これからの企業にとって、データの利用は不可欠ですが、プライバシーの遵守をあわせて行うことが求められています。
グローバルリサーチ研究所
代 表 青木 武 www.instituteofglobalresearch.com