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SAITO SORENSON LLP 弁護士 齋藤康弘 氏  かつてのギター青年、 失恋をバネに華麗に大変身 

 

 数多くの大型企業訴訟を勝訴へと導き、華麗なる経歴の持ち主である齋藤康弘弁護士を米国弁護士へといざなったもの、
それは意外にも学生時代の大失恋だった――――

大学生時代、恋愛にギターにと青春を謳歌した。いっときは学業の傍らエレキギターのプロを目指すほどの熱中ぶりであった息子に、両親は「アメリカにでも行ってみたら」。時はバブル時代。学生時代の数年間を留学するのが流行りであった。そんな時代背景と親からの何気ない一言、そして大好きだった彼女に大失恋したことが齋藤弁護士の人生の舵を大きく違う方向へと向けた。「当時、アメリカへの憧れはなかったんです。ただ失恋した彼女と同じ東京の空の下にいるのが辛くて、心苦しくなってしまって。」

失恋をバネに猛勉強し、米国の法律スクール・JD(Juris Doctor)コースに入学。留学生がJDに入学することは極めて稀であり、入学が許可されるケースは少ないという。同級生のほとんどが米国人というハードルの高い世界に飛び込み、落第しないよう必死であった。しかしそんな無茶な状況に自分を置き、がむしゃらに勉強・努力した甲斐あってクラスで2番の成績を納め無事卒業。その後、大手法律事務所のパートナー弁護士の切符にもなるといわれている、栄えある連邦裁判所判事ロークラークに採用された。

誰もがそのニュースを耳にしたことがあるような、大きい企業訴訟案件や企業不祥事案件を、若いうちから扱ってこれた自分はラッキーであったと言う。

JDに入学できたこと、ロークラークに採用されたこともすべてラッキーだった言うが、やはりこれは齋藤弁護士の実力あってこそ。自分は弁護士に向いていると自己分析する。弁護士向きなのは一に分析力がある人、二に言語能力に長けている人。しかし何よりも人の気持ちを思いやる心と気遣いが大切である。弁護士はあるときはカウンセラーのような役割もこなす。トラブルに巻き込まれる中心人物の多くは30〜40代の中間管理職。ストレスで証人尋問当日に、泣きだしたり嘔吐する人もいる。彼らの心のケアもしなければならないのが弁護士である。グローバル時代において、日系企業に必要なのは訴訟リスク感覚を磨くことだと指摘する。訴訟国家と言われる米国では、弁護士による企業の社員教育が盛んだ。今年2月に発覚したGMのリコール問題。不具合を認識していたにもかかわらず、対策を放置していたGMの企業責任は重い。

こんな不測の事態に備えGMでも社員教育がなされていたようだが、その行き過ぎた法務部のアドバイスが問題視されている。しかし、全くリスク認識がないのも問題である。訴訟になれば当局より捜査が入り、根こそぎ情報を取られる。技術者のちょっとしたノートの端にあるメモ書きが将来、訴訟の証拠品になる可能性もある。米国に影響のあるビジネスをやっているのであれば、本社が米国にあるのと同様の認識を持つことが大切だとアドバイスする。

SAITO SORENSON LLP は、齋藤弁護士と一緒にやりたいという超一流のエリート弁護士仲間が集まり結成された弁護士事務所である。

「まだまだ大型企業訴訟案件を扱う日本人弁護士の数は少ない。米国では50人のロースクール卒業者が雇われたら、2年で半分まで減り、5年で一人くらいしか残れない世界。だから優秀な人材にもっとアメリカに来てもらいたい、若手人材を育成し、優秀な弁護士になりそうな可能性のある人材の分母数を増やしていきたい。」そう語る齋藤弁護士は人材育成にも積極的に取り組み、『齋藤スカラー』という奨学金制度も母校ロースクールで設立された。また意欲的に日本の大学でも講演をこなし、学生に米国の魅力や留学の勧めを説く。

「日本で大企業に入っても個人の戦いがしづらい環境だから、才能を生かすのが難しいですよ。才能あふれる人こそ、もっとアメリカに来てチャレンジしてもらいたい」内向き志向、大企業への就職至上主義など兎角、安定型と言われる学生にカツを入れる。そして「みんなもっと失恋してアメリカに来て!」とエールを送る齋藤弁護士。現在は、素敵なオペラ歌手の奥様の演奏旅行に付き合い帰国したばかりで寝不足、そう語る愛妻家でもあった。

 

2014年7月号 企業概況ニュース 掲載

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