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《フロリダ州経済開発局日本事務所》

 2021年4月23日、JAXA星出飛行士が搭乗したスペースX・クルードラゴンがフロリダ州ケネディー宇宙センターの発射台から打ち上げられた映像は数多く報道され、ISS滞在中の野口宇宙飛行士の様子と共に宇宙関連のニュースが日本でも注目を集めています。

 世界の宇宙開発の歴史は一説によれば1926年、ロケットの父とも呼ばれる米国人ロバート・ゴダード氏による液体燃料ロケットの打ち上げにさかのぼるとされます。世界の宇宙開発の中で、米国はひときわ大きな存在ですが、開発初期の段階では、旧ソ連の1957年のスプートニック、1961年ガガーリンの有人飛行に代表されるように遅れをとっていました。その後米国は開発に注力し、1969年アポロ11号で人類初の月面着陸に成功。1970年代からはスペースシャトル計画が始動し、1981年から2011年までに135回打ち上げられました。発射は全てフロリダ州のケネディー宇宙センターから行われました。しかし、シャトルの運営コストが莫大となり、また、チャレンジャー、コロンビア号の事故もあり2011年に退役しました。

 一方、米国、ロシア、日本、カナダ及び欧州宇宙機関 (ESA) が協力して運用している話題の国際宇宙ステーション(ISS)は、1998年に組み立てが開始され、地球及び宇宙の観測、宇宙環境を利用した様々な研究や実験が行われています。シャトル退役後は主にロシアのソユーズがISSへの輸送を担当していましたが、2006年NASAが発表した商業輸送サービス(COTS)プログラムにより、現在では民間企業にISSへの輸送を発注する仕組みとなっています。

 最近、宇宙開発では「ニュースペース(NewSpace)」という言葉がはやっています。従来の政府主導の宇宙開発関連企業とは異なる異業種からの開発参入、ベンチャー系企業の参入の流れを呼ぶ言葉です。それらの企業は政府からの支援に頼らず主に民間資本によって運営されています。

 現在宇宙関連ビジネスの世界市場規模はおよそ40兆円で、今後2030年に70兆円、40年には120兆円まで飛躍的に拡大すると言われています。この中で米国は約50%弱の大きな市場を占めています。この成長は、打ち上げに使用されるロケットが従来の大型極少量から再利用、小型化低コストになり、打ち上げられる衛星も小型大量になり、大量のデータを安く利用できるようになった事が背景にあります。NASAの民間企業への輸送発注をベースに、アマゾン、グーグル、スペースX (CEO イーロン・マスク)等超富裕新興企業の参入、高速データ通信、大量のデータをAIで高速処理できる技術革新も平行して進み、世界でまだインターネットに接続されていない約30億人の新たな市場も取り込まれていくことが予想されています。

 この環境変化で、気象データや物の動き等の大量のデータを活用し、水産、農業、金融、輸送、各種サービス提供と、既存の全ての産業に影響を与えると言ってもよいほど新たなビジネス機会が創出されており、宇宙ビジネスへの異業種からの参入が増大しています。中でもフロリダ州は宇宙関連ビジネスの従業員数13万人を抱え、関連企業は17,000社を超えます。NASAをはじめ世界的に有名なケネディ・スペース・センターや、セシル・スペースポート、 ケープ・カナベラル・エアフォース・ステーションがあり、関連企業にはボーイング、エンブラル(Embraer)、ロッキード・マーティン、スペースX、ブルー・オリジン、ULA、ワンウェブ・サテライツ等、伝統的な航空・宇宙大手企業及び新興企業が進出しており、航空・宇宙関連企業数は全米2位となっています。

 フロリ州では州の経済開発機構(Enterprise Florida, Inc.)及び宇宙経済開発機構であるスペース・フロリダを中心にニュースペースに相応した様々な施策を推進しています。ご関心のある企業様は、フロリダ州経済開発局日本事務所までお問合せ下さい。

 

《執筆者》藤本 和三
フロリダ州経済開発局日本事務所代表。日立系商社の日立ハイテク出身。在籍中、カナダ、米国、ドイツの駐在経験を含め一貫して国際業務に従事。2014年から州の日本事務所に勤務。2016年、米国州政府日本事務所の団体組織のアメリカ州政府協会会長を務め、現在は貿易・投資の担当副会長を務めている。

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