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【40周年】成長し続ける企業であるための仕掛け作り

Yamato Transport U.S.A., Inc.            https://www.yamatoamerica.com/
President 本間 耕司   氏 

 クロネコヤマト宅急便でお馴染みのヤマト運輸米国法人Yamato Transport USAがNYとLAを拠点にスタートを切ったのは今から40年前。日本企業の米国進出が活発化し始め、その国際物流と海外引越を担うべく設立された。当時の大きなミッションは全米ネットワークの拡大であり、今では米国内に22カ所、カナダを含め24カ所の支店を構える。

 「40年の歩みの中で、実は結構紆余曲折している時期があったんです」と本間さんは話す。1990年、親会社の戦略に基づきUPSとの合弁会社を日本と米国に設立し、日米間の航空貨物事業を委ねることになった。当時、日米間の国際輸送は世界で最も取扱量が多く、中でも最も利益率が高い事業が航空貨物の取扱いであった。「それが一切扱えないとあって、代わる柱となる事業は何かと頭を悩ませた結果、力を入れたのが海外引越でした」。米国へ進出する日本企業のケアを目的に配置された支店には、必ず日本語を話すスタッフが常駐している。日本語による丁寧で細やかなサポートと全米ネットワークを生かして、海外引越事業を確立させていった。「海外引越が現在の米国ヤマトの経営基盤となっているのには、そういった背景があります」。

〜越境ECと海外引越を軸に DXにも積極的な取り組みを〜

 2000年に合弁関係が解消され、次に迎えたのがEコマースという新潮流による転換期だ。EC通販利用者が年々増加し、小口貨物を国をまたいで輸送し個人向けに売買するという越境ECの需要が生まれ始めた。同社はこのB to Cにターゲットを絞り、顧客の掘り起こしを始めた。「なぜそこに着目したかというと、UPSと合弁契約を結んでいたことで、企業間航空貨物のフォワーディング獲得競争には完全に出遅れてしまっていたからなんです。日本国内では宅急便によるラストワンマイルのネットワークが構築されていたので、そこに海外からの貨物を流し込めばよかった訳です」と説明する。法令などの制約により日本に在庫が持てないサプリメントや化粧品などの商品を米国から並行輸入し、個人宅に 直接配達する仕組みを日本と共同して立ち上げたのが最初の案件だった。新しい成長の芽を見つけ、比較的安定した20年だったと振り返る。

 しかし、今年に入って新型コロナが全世界で猛威を振るい、労働集約型の国際物流事業も変革を求められることとなった。従来の対面型営業から、オンラインや電話での見積もり、ウェビナーの活用といった非接触型の営業スタイルへ移行した。「出端を挫かれた感はありますね」と苦笑いを見せながらも本間さんは「これからの20年は海外引越と越境ECに磨きをかけていきます」と明確なビジョンを語る。海外引越は、以前は比較的大きな都市に家族帯同で駐在するケースが主流だったが、最近では同社の拠点がないような都市部から離れた地方に単身で赴任する顧客のケースが増えている。こうした変化に対応し、サポート体制を整えていく。越境ECについては、日本から米国へ、または米国から日本もしくはアジア諸国へ、それぞれの販路拡大を模索する顧客に対し、ビジネス拡大のアドバイスから、通関、倉庫の手配、現地パートナーと提携してラストワンマイルの配送まで全面的に支援する。楽天と連携してのウェビナー開催や、アマゾンから紹介を受けた販売人 (Seller)に対して同社のサービスをプレゼンテーションするオンライン展示会など、既に様々な取り組みを始めている。また、コロナ禍で加速するDX(デジタルトランスフォーメーション)にも積極的だ。新たな試みの一つとして3月より提供を始めたTMD(Trade Management Dashboard)サービスが挙げられる。貨物の輸送状況を可視化し、ウェブ上で一目で把握できるようにしたダッシュボードだ。自社の輸送手段を持たず、顧客の要望に沿って輸送をコーディネートするフォワーダーの同社にとって、貨物追跡の正確性向上が課題であったが、米国スタートアップ企業によるデータ収集と分析の技術を取り入れ、海上貨物輸送の追跡情報について、8割を超えるまでに正確性を引きあげることに成功した。利用者はより簡単に信頼性の高い情報にアクセスでき、双方が貨物追跡に費やしていた時間と労力が大幅に軽減できる。「国際貿易の在り方が変化していく中、我々にどんなお手伝いができるかを考え、今からしっかりと設計していきます」。

 渡米3年目の本間さんは、長年海外開発の仕事に携わってきたが、海外赴任はアメリカが初となる。任期中に成し遂げたいことは何かと尋ねると、「足元で出来ること、5年先を見て行うこと、10年以上先を見て行うことに分けて取り組んでいかなければなりません。自分の任期中に何かやり遂げるのはそんなに難しい話ではありません。私が帰任した後も企業が存続し、成長し続けることができるかどうか、それが大切です。そのための仕掛けを作っていきたい。限られた経営資源でどういったチャレンジをするか、選択は必要ですが、チャレンジしていかなければ物事は前に進みませんから」と笑顔で意気込みを語ってくれた。

《企業概況ニュース》2020年 9月号掲載