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【米国人事労務管理 最前線】 2021年に向けた 総報酬戦略

 私が拠点にしているニューヨークでは肌寒さも感じるようになり、あっと言う間に秋が終わりを告げ、厳しい寒さがやってきそうな気配です。厳しいと言えば寒さだけではなく、暴動・暴力事件や銃発砲事件が増加したことで治安が悪化し、ただでさえCOVID─19の影響で不安を抱える人達が多いところに、更に不安が助長されている印象です。

 このように様々な面で厳しい状況が続く中ですが、多くの企業が給与調整を検討・実施したり、各種人事制度を見直す時期である年末年始は着々と近づいてきており、弊社にもそれらに関するご相談が増えてきています。

 そこで今回は、保険ブローカーとしては世界最大級の企業であり、リスクマネジメントやコンサルティングサービス等も提供するGallagher(ギャラガー)社の調査レポート『BENEFIT STRATEGY& BENCHMARKING SURVEY』の一部をご紹介いたします。

調査概要

 実施期間は2019年12月から2020年5月。回答企業数は3921社で、様々な業種が含まれているとともに、従業員数規模としても中小企業から大企業まで幅広くカバーされています。

 メインである総合調査の実施期間がパンデミックの影響が拡大する前だったため、結果の一部には総合調査後にトピックを絞って実施した単発調査の結果も含まれています。

給与関連

 COVID-19による収益悪化等の影響を受け、2020年7月時点では、マネジメント職では54%、一般従業員では51%のインセンティブ・ボーナス支払を凍結するとの回答。また、2021年に入ると金銭報酬への影響は小さくなると予測されるものの、昇給にかける予算全体は縮小され、マネジメント職では43%、一般従業員では42%の昇給を凍結するとの回答。

福利厚生関連

 83%の企業が特定の福利厚生プログラムを強化する予定であると回答。その中には、Emotional Wellbeing、Leave Policies、Medical Benefits、Physical Wellbeingが含まれる。これは、COVID19や在宅勤務の影響が顕著に表れている結果で、心のケアを含む従業員の健康に対する配慮が重要性を増していると考えられる。

在宅勤務制度

 在宅勤務制度の導入状況を見ると、COVID─19以前からフルタイムの在宅勤務制度を導入していた企業は26%だったが、各地の外出制限令等によって2020年6月時点では77%に急増。 その内の86%は在宅勤務制度を継続する予定と回答。フルタイムの在宅勤務制度を継続することにより、不動産・オフィスコストを削減しようとする動き。 

 文字数の関係で極一部しかご紹介できませんので、更なる詳細にご興味がある方は実際の調査レポートをご確認いただければと思います。

 この調査レポートを総括すると、2019年時点では経済成長に後押しされて人事労務関係に投資しようと計画していた企業も、COVID19の影響で総報酬戦略の見直しを迫られていることは明らかということです。

 具体的には、人員増も視野に入れつつ優秀な人材を惹きつけてリテンションを図ろうとしていた戦略(コスト増)から、現行の組織人員を何とか維持してビジネスを継続させるという戦略(より効率的・効果的なコスト配分)に転換していくだろうということです。もちろん既存の従業員の安全と健康と守ることとコンプライアンスは最重要課題ですから、それらを実現できる福利厚生プログラム等は強化する一方、給与やインセンティブ・ボーナス等の金銭報酬は可能な限り抑えていくというのが、多くの企業の総報酬戦略になっていくと考えられます。

 人事労務管理関係でご質問等がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

 

三ツ木良太 
HRM Partners, Inc. President and COO

《企業概況ニュース》2020年 10月号掲載