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【米国人事労務管理 最前線】 2021年に向けた昇給予算

 今年2020年も残すところ約2か月になりました。今年はCOVID─19のパンデミックに始まり、ジョージ・フロイド氏の死をきっかけとしたBlack Lives Matter運動の急激な広がり、暴動・暴行事件や銃の発砲事件の増加による治安の悪化、そして大統領選挙に向けた右派対左派や保守対リベラル等のぶつかり合いが重なり、本当に大変な年になってしまいました。

 数字的に見ても、比較的順調に推移してきていた米国経済は急激に悪化し、GDPは第1四半期にマイナス5%、第2四半期にはマイナス32%となりました。また、健全・好調だった労働市場では短期間に2200万の職が失われ、今年2月時点では3%台だった失業率は4月時点では世界恐慌以降で最悪となる14.7%を記録しました。外出制限・移動制限の緩和や様々な経済対策法、景気刺激策が功を奏し、GDPは第3四半期にはプラス30%から35%ぐらいになるだろうという予測が出ていたり、失われた職の内の52%が復活したという数字が出ていたり、失業率は9月時点では7.9%にまで回復するなど、上向きになってきているようには見えます。しかしながら、やはり植え付けられてしまった恐怖や不安を簡単には払拭することはできず、有効なワクチンが広く展開されるようになるまでは、数字的にも実感としても厳しい状況が続くものと思われます。

 このような状況が続きますが、多くの企業が従業員の給与調整を実施する時期は待ってくれません。そこで、これまでも本コラムやウェビナー等で様々なデータをご紹介しておりますが、今回は2021年に向けた昇給率予算に関する調査レポートの一部をご紹介させていただきます。

 以下の表は、当社が毎年購入して定点観測している調査レポートである「WorldatWork」「Culpepper」「Aon」「Willis Towers Watson」の昇給率予算調査結果の一覧です。

「WorldatWork」「Culpepper」「Aon」「Willis Towers Watson」の昇給率予算調査結果一覧

 今年の調査結果の特徴は、「WorldatWork」「Culpepper」「Aon」の3社は「with zeros」と「without zeros」を別立てにしているところです。これは、COVID─19の影響で、今年は例年に比べて昇給をフリーズする(0%昇給)と回答している企業が多くなったためです。実際、「Culpepper」の調査では、実に23.9%が昇給をフリーズすると回答しており、さらに、フリーズの期間を見てみると、26.2%が4から6か月間、25.9%が6から11か月間、11%が期間未定と回答しています。一方で、昇給をフリーズすると回答した企業を除いた昇給率予算は3%前後となっており、業績が安定しているか好調な企業は例年並みの昇給を予定していると言えそうです。

 また、「Willis Towers Watson」は4月から6月の調査の後、9月に再度調査を実施しています。これは、COVID─19のパンデミックが急速に広がっていった時期で先の見通しが立たない時期でもあった1回目調査の後、このパンデミックの影響が2021年以降も続くという予測が大勢を占めることになった時期に再度調査することで、実態に合った数字に近付いたのではないかと言えます。結果として、1回目調査よりも2回目調査の方が昇給率予算は落ちており、リーマンショック以降では最も低い昇給率予算になっています。

 人事労務管理関係でご質問等がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

三ツ木良太 
HRM Partners, Inc. President and COO

《企業概況ニュース》2020年 11月号掲載