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企業・雇用主のための COVID-19 対応に関する法的留意点
~従業員への休暇付与に関する法令遵守~

第48回【リーガル塾:3分で学ぶ米国ビジネス法】
企業・雇用主のための COVID-19 対応に関する法的留意点
~従業員への休暇付与に関する法令遵守~

 COVID19の感染問題に関連して、新たに制定された連邦法では、労働者に対する緊急有給傷病休暇及び既存のFamily Medical and Leave(FMLA)を拡充した家族・医療休暇の付与を雇用主に義務付けている。また、州や自治体によっては、COVID19について高リスクにある従業員が有給傷病休暇を利用できるように、有給傷病休暇の法律や条例を改定しているところもある。この記事では、それら連邦とカリフォルニア州の法律の概要を説明する。

COVID19感染問題に伴う従業員への有給休暇付与に関する法令遵守

 一般論として、雇用主は、次に従って従業員に休暇を付与する義務がある。(a) 雇用主の有給休暇規程(又は、雇用主の他の休暇規程)、(b) 雇用主の傷病休暇規程や適用されるカリフォルニア州及び地方自治体の有給傷病休暇法、及び (c) 適用される連邦又はカリフォルニア州の家族・医療休暇法。加えて、雇用主は、連邦又はカリフォルニア州法に基づき、従業員の障がいに対する措置として休暇を付与しなければならないこともある。

 雇用主は、以下に説明するCOVID19に関連して新たに制定された、連邦FMLAを拡充し、臨時的に休暇を義務付ける法令改正、並びに、州及び地方自治体がCOVID19関連の目的で傷病休暇の使用を認めた新しい条例や指針に留意されたい。

連邦ファミリー・ファースト新型コロナウィルス対策法Families First Coronavirus Response Act :FFCRA

 2020年3月18日に新法として成立したFFCRAに基づき、2020年4月1日から2020年12月31日の間、従業員500人未満の雇用主は、適格従業員に対して、以下のCOVID19関連有給傷病休暇及び有給家族・医療休暇を付与しなければならない(なお、この付与は税額控除の対象となる)。

▼緊急有給傷病休暇(Emergency Paid Sick Leave:EPSL)に関する規定

 原則として、雇用主は、フルタイム従業員には80時間を上限とした緊急有給傷病休暇(Emergency Paid Sick Leave:EPSL)を付与しなければならない。(パートタイム従業員には比例按分した時間となる。)従業員は、次の理由で労働(又はテレワーク)することができない場合にEPSLを取得することができる。(a) 隔離措置指令を受けている(注 FFCRAでは、屋内退避指令は隔離措置とはみなされない)、(b) COVID19の症状が出ており、医学的診断を待っている、(c) 隔離措置指令を受けている他者の世話をしている、(d) COVID19を理由とした学校閉鎖又は託児所の利用不可により、従業員自身の子供の世話をしている、あるいは (e) 政府当局が定めた、実質的に同様の状況に置かれている。

▼緊急家族・医療休暇の拡充(Emergency Family and Medical Leave Expansion:EFMLE)に関する規定

 原則として、雇用主は、30日間以上雇用している従業員には、復職を保証した12週間を上限とする拡充された家族・医療休暇(EFMLE)を付与しなければならない。従業員は、COVID19の緊急事態を理由とした学校閉鎖や託児所の利用不可により、従業員自身の子供を世話する必要があるために労働(又はテレワーク)ができない場合にEFMLEを取得することができる。

カリフォルニア州有給傷病休暇法California Paid Sick Leave Law

 カリフォルニア州の有給休暇法を執行しているカリフォルニア州労働委員会は、カリフォルニア州有給傷病休暇を新しい目的に使用できる可能性を表明している。カリフォルニア州労働委員会は、COVID19に関連した理由で学校又は託児所が閉鎖した子供がいる従業員の場合、そのような従業員には、予防処置として子供と一緒に過ごすために、カリフォルニア州有給傷病休暇を使用する選択肢がある(しかし、使用を強制することはできない)と表示した執行指針を出している。

考察

 この記事が米国で事業展開をしている日系企業と日本本社にとって、現地管理職が抱えている法的な課題をより理解し、運営上・雇用上のリスクを抑えるための意思決定において戦略的判断材料となれば幸いである。事態は変更しつつあるので、最新の情報については専門家に相談されることを勧める。

*ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。 Yorozu Law Groupは、サンフランシスコに拠点を置く国際法律事務所で、企業法務、国際税務、M&A/戦略的提携、ライセンシング、国際商取引、雇用法において日本語と英語で法務サービスを提供している。© Yorozu Law Group   萬 タシャ 弁護士 Yorozu Law Group 235 Montgomery Street, Suite 300 San Francisco, CA 94104 Tel: 415.707.5000 info@yorozulaw.com www.yorozulaw.com

略歴 萬(よろず)タシャ Yorozu Law Group 代表弁護士 オレゴン生まれ関西育ち。カリフォルニア州・オレゴン州弁護士、MBA取得。米国で20年以上の弁護士経験を有し、日米の商慣習や法制度等の違いを踏まえた法務・税対策両面からの戦略的アドバイスを提供する。日系企業の外部顧問を多数務めるほか、北加日本商工会議所と米日カウンシルの常任理事等を務める。家族とトライアスロンに参加するのが趣味。

《企業概況ニュース》2020年 6月号掲載