Home > おススメの記事 > 【米国人事労務管理 最前線】2021年の 雇用・労働・ 人事労務管理

【米国人事労務管理 最前線】2021年の 雇用・労働・ 人事労務管理

 昨年は本コラムにて大変お世話になり、ありがとうございました。今年も少しでも皆様に役立つ情報を提供できればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、2020年を振り返ると、COVID-19(以下“コロナ”)に始まりコロナに終わった年と言えると思います。前号で“可能性として”触れていたとおり、当地ニューヨークではレストランのインドアダイニングが再禁止になっており、全米で見ても外出制限令が再発令される地域があるなど状況は後退しています。ただ、コロナワクチンが提供開始されていることもあり、広く一般に行き渡るには時間がかかるとは言え、前向きに捉えたいところです。

 そして、2020年には、4年に1度の大統領選挙がありました。本稿執筆時点ではスムーズな政権交代は実現できていませんが、バイデン政権が誕生するのは確実と言える中、雇用・労働・人事労務管理に影響を与える事項についても考えておきたいところです。全てをカバーすることはできませんが、大きな点だけでも見ておきましょう。

コロナ対策・安全対策の強化

 これは雇用・労働・人事労務管理だけに限った話ではありませんが、トランプ大統領が軽視してきたと言われているコロナ対策・安全対策については、連邦レベルでリーダーシップを発揮していくことと思われます。連邦と一部の州や地域で方針が異なっていたために、どちらの方針に従えば良いのか迷わされた方もいらっしゃったと思いますが、今後は一貫した方針として対応しやすくなるはずです。ただ、強化するということは守らなければならない事項が増えるということですので、引き続き安全関係の法令・ガイダンス・ガイドラインは頻繁に確認するべきでしょう。

労働組合の強化

 多くの方がご承知のとおり、民主党は基本的には労働者寄りの政党です。そして大きな支持母体の一つが労働組合です。したがって、一般的には民主党が力をつけることは労働組合の強化に繋がると考えられます。そのため、労働者の権利を保護する法律であるNational Labor Relations Act(全国労働関係法)と、同法を管轄・推進するNational Labor Relations Board(全国労働関係委員会)の動きは見ておいた方が良いでしょう。

労働者をより強く守る法令の施行

 現在、連邦下院は民主党が多数を占めていますが、上院で多数を占めることができるかは1月5日に投票されるジョージア州の2議席の行方によります。実際には民主党がジョージア州の2議席を獲得しても総議席(100)のちょうど半数である50議席となりますが、法案可決投票の際に50対50になった場合には最終票は副大統領が投じることになるので、実質的には民主党が51票を持つと考えられます。つまり、仮に民主党が50議席になると、民主党が提出する法案が可決されやすくなり、言い換えると労働者をより強く守る法令が施行されやすくなるということです。たとえば、全米レベルでの最低賃金の引上げ、有給病欠法の施行、競業避止契約の実質禁止などが挙げられます。この他にも様々なことが想定されますが、いずれにしましても、新法令が施行されると自社の規定や契約書等の変更が必要となりますので、上院選挙の行方と併せて注視しておいた方が良いでしょう。

 人事労務管理関係でご質問等がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

三ツ木良太 
HRM Partners, Inc. President and COO

《企業概況ニュース》2021年 01月号掲載