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《kumiko》

kumiko
Partner & Creative Director
百瀬 ジュリアさん

 kumikoという店名は日本の伝統的な木工技術“組子”に由来しており、バーカウンターの背景にある美しい模様の欄間組子が店内にやわらかな陰影を与えている。「お米をつくる人、そのお米から日本酒をつくる人、そしてそのお酒でカクテルをつくる人。一人ひとりのストーリーを大切に、プロセスに敬意をもってカクテルを作りたいと思いました」。京都で生まれ育ったジュリアさんが幼少期に目にした組子職人の繊細な仕事風景がこの店のフィロソフィー。組子が織りなす模様のように、生産者、バーテンダー、シェフ、お客さん、それぞれの要素が混ざりあって一杯のカクテルが作り上げられていく。

 店の共同オーナーでエグゼクティブ・シェフのノア・サンドバルさんはシカゴのミシュラン2つ星レストランOrielを成功させており、ジュリアさんはそこでバーコンサルタント、そしてトレーナーとしてカクテルメニュー作りやペアリングの指揮を任されていた。カジュアルなダイブ・バーやビール・バー、スピークイージーもしくはホテルのバーなどオーセンティックなバーが主流のシカゴで、これまでに無いこだわりのカクテルと料理を提供できる店を作りたいとノアさんに声を掛けられ、2018年大晦日に念願のオープニングを迎えたのも束の間、開店して一年半も経たずにパンデミックに見舞われた。それまではカクテルとペアリングした刺身や寿司などで構成されたコース料理も振舞うハイエンドな店だったが、ステイホームの持ち帰りメニューに対応するべく、コンセプトを大幅に変えCafé kumikoとして再開。日本の唐揚げやたまごサンドなどカジュアルなフードメニューに、自宅でもkumikoのカクテルを楽しめるよう瓶詰カクテルを開発。飲み方のメモを添えて販売し、パンデミックを乗り越えた。8月1日からkumikoを以前のスタイルで本格的に再開させるため、メニュー開発やスタッフトレーニングの準備期間として、現在は休業している。

 ジュリアさん のカクテルには日本の四季と懐かしさ、そして意外性がある。冬にはさつまいもインフュージョンのオールドファッションド、春にはゆずギムレット。そして夏と言えば「子供の頃、お母さんの甘口カレーライスが大好きで。そしてカレーと言ったら麦茶です。その思い出を再現したカレーライス・カクテルペアリングをつくりました」。アルコール度数43%のミクソロジー用麦焼酎「いいちこ彩天」をベースに、オレンジビターや日本酒などが入ったステア技法のカクテルだ。彼女のカクテルレシピには焼酎や日本酒を始め、日本産の素材が多く使用されている。また日本産ウイスキーブームの影響もあり、彼女の作り出すカクテルに注目が集まっている。kumikoではコンポーネンツ・フライトという、カクテルの完成形とその構成要素を味わえるメニューがあり、そこで日本酒や焼酎そのものの味を初めて知る人も居るという。一方で、麦焼酎について語れるお客さんも増えてきているそうだ。

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 バイカルチャーな背景を持つバーテンダーとして、そしてホスピタリティ業界人として、ジュリアさんに注目し期待を寄せる人は多い。これまでJETROや日本の大手酒類メーカーともコラボレーションしてきた。そんなジュリアさんが日本独自のものを海外に伝えるときに心掛けていることがある。例えば「梅は梅であって、実際はプラムとは別物であるように、日本独自の産物を海外にある何かにフィットさせてしまわない」ことである。カクテル・ペアリングを考えるときも固定観念に縛られない。「イタリア料理に焼酎は合わないと日本の人は思っているかもしれませんが、焼酎のトマトジュース割は美味しいです。だからイタリア料理にも焼酎は合うと思います」。一日の終わりに、しなやかな語り口と笑顔のジュリアさんとバーカウンター越しに呑めば、癒しと新しいアイデアに出会えるかもしれない。

The Way of the Cocktail

カクテルを通して四季を語るようなカクテルレシピに、日本のバー文化やジュリアさんが愛用する日本製の道具、カクテル技法を掲載した書籍が10月5日に発売される。
The Way of the Cocktail JAPANESE TRADITIONS, TECHNIQUES, AND RECIPES
By Julia Momosē and Emma Janzen
発行:Penguin Random House

◇ RESTAURANT INFO
kumiko
630 W Lake St. Chicago, IL 60661
Phone : (321) 285-2912
https://barkumiko.com/
Instagram @momose_juli
                 @barkumiko

 

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