ビジネスシーンでもあなたらしく
オンワードUSA
シニア・ディレクター 加藤千夏 さん
https://kashiyama1927.com
アスパイア・インテリジェンス
代表取締役 リップシャッツ信元夏代 さん
https://aspireintelligence.com
新たな門出や新年度に合わせ、身に纏うものを新調する人も多いこの季節。本格オーダーメイドスーツブランドKASHIYAMAを展開するオンワードUSAシニア・ディレクターの加藤千夏さんが、日米でプロスピーカー、事業戦略コンサルタントとして活躍するリップシャッツ信元夏代さんのための一着をコンサルテーションする様子に密着しました。さらに、それぞれファッション、コミュニケーションのプロとしてグローバルなビジネスリーダーに求められるもの、そして国際女性デーをテーマに対談して頂きました。
オーダーメイドスーツのコンサルテーションを受けて、如何でしたか?
信元さん(以下N) 「私にとっては見栄えもそうですが、プロスピーカーとして一日中登壇する日もあり、着ているものの機能性が重要です。それと、内ポケットをつけるなどちょっとしたこだわりやサイズ感を自分の理想的なものにして頂けて、且つ素材も上質で嬉しいです。お店に入った瞬間に、加藤さんが着ていらっしゃるスーツを見て、それが欲しい!と思うような、モデルとしてそこにいらっしゃる方からのアドバイスは信頼が置けますね」
加藤さん(以下K)「ありがとうございます。〝モデル〟と言ってよいのかどうかは分かりませんが(笑)、私たちも普段スーツを着用しながら立ったり座ったりする仕事なので、自分自身の体験や、夏代さんのスーツの着用シーンやストーリー、これまでお話を伺ってきた色々なお客様の体験談からスーツづくりのアドバイスをさせて頂きました」
お仕事されている女性に提案したいスーツのスタイルはありますか?
K「女性の場合ですと、ひとつベーシックなものをお持ちだと、上下別のスタイリングで着回しができるのでお勧めです」
N「たしかに、特に出張の時は少ない荷物で着回しができると、嬉しいですね」
ファッションもスピーチも、自身のプレゼンスを高めるための要素のひとつだと思いますが、それぞれの業界のプロとして、グローバルなプレゼンス構築のアドバイスをお願いします。
N「プレゼンス構築の方法は各方面であると思いますが、その中でもメッセージを自分のことばで明確に伝えるスピーキング力の役割は大きいと思います。コミュニケーション手法として日本語は高コンテクスト(含意)に分類されるので間接的になってしまいがちです。欧米は真逆のコミュニケーション手法、低コンテクストですから、日本人の方たちは海外で自分のメッセージが伝わり辛いと感じており、人を動かすことに苦労されています。人を動かせるグローバルリーダーのスピーチは話を理論的に組み立て、且つ自分を曝け出す強さがあります。誰かに動いてもらうには、自分を掘り下げ、曝け出す。スピーチにおけるプレゼンス構築とは、内省のプロセスです」
K「ファッションが外見に与える印象は強いと思いますが、日本の場合はトレンドに左右されることが多いです。一方でアメリカは人種が違えば肌の色も違いますし、トレンドよりもその方の内面やルーツをファッションに反映されている方が多いです。プレゼンス構築を〝どういう自分になりたいのか〟という観点でお話しすると、アメリカではまず〝個〟が最初にあって、そこからその方なりのファッションで表現しています」
N「そうですね。グローバルなスピーチとファッションの共通項は〝個〟の確立、だと思いました。自分らしさを〝個〟とするなら、それをしっかり確立し、出していくことでプレゼンスが固まっていくのではないでしょうか。それをどうアウトプットするのかというと、自分らしさを生かしたプレゼンスキルであったり、ファッションステイトメントであったりするのだと思います」
K「〝個〟といえば、最近パーソナライズはファッション業界でも非常にお客様から求められています。私が以前関わっていた既製服のブランドの場合には、ブランドのシーズンテーマやトレンドをお客様にご提案する事が多いですが、オーダーメイドはそのお客様が今それを必要としている理由や目的に関するストーリーを伺って、その方にあったパーソナライズなファッションをご提案するという、全く別のアプローチです」
N「スピーチ・プレゼンも、その人ならではのストーリーを加えると、パーソナライズできてより伝わりやすくなりますよ」
ビジネスシーンだと、〝個〟も然りですが立場や所属があったりもしますよね。
K「そうですね、良質なものやご自身に合ったものを着ることで周りからの信頼感を高めたり。モチベーションを高めるきっかけ作りもできるので、ファッションは、キャリアアップなど目指す場所へ向かう為のセルフブランディングのツールにもなりますね」
国際女性デーに寄せて、アメリカで活躍されている女性として今後海外で活躍したい女性へ、お二人のお考えを教えてください。
N「うーん…私はあまり〝女性〟ということを意識したことがないのですが、ある程度の〝鈍感力〟も必要かと思います。女性が不利な仕組みというのは確かにあるとは思うのですが、女性自身の意識の問題もあると思うんです。弱い立場の男性もいるはずなのに、〝女性エンパワメント〟はあってもその逆は無いですから。もし良くない思いをした場合に、一人の人間としてその問題にどう立ち向かうのかが重要で。その問題が女性だからではなく〝あなた〟だからかもしれませんからね(笑)。〝女性支援〟を意識しすぎることで、更なるギャップを生んでしまわないか?とも思います」
K「私も夏代さんに共感します。世の中に不当な扱いを受けていらっしゃる女性がいることは認識していますが、ファッション業界では、女性も多く活躍しているので、私自身は女性として不利だと感じたことはあまりないですね。女性だからとネガティブな面に注目しすぎず、〝国際女性デー〟などをポジティブに捉えながら、1人の〝個人〟としてどう行動するかを考えたいですね」
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KASHIYAMA Personalized Order
店頭でのコンサルテーションの様子
① お客様がどんなスーツを求めているのか、着用場面やライフスタイルに耳を傾ける。
「お客様には作るプロセスを楽しんで頂いています。どんなスーツかは、お話をするうちに固まっていきます」(加藤さん)
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② 生地はシーズンによって変動するがウィメンズ用表地約80種類、裏地約30種類から選べる。
その他ボタン、ジャケットのスタイル、女性の場合はパンツかスカートかや、好みの丈などを決めていく。
「ウィメンズスーツは内ポケットが無いことも多いですが、夏代さんは登壇の際に小道具などを内ポケットに入れることがあると伺ったので、ウエストあたりに内ポケットを付けることになりました」(加藤さん)
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③ 採寸。
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④ 基本となるゲージサンプル(オーダースーツ用のサンプル)を着用して微調整。
普段お客様が着用しているスーツを元に微調整することもある。
一時間ほどのコンサルテーションで、じっくり理想のスーツを導き出してもらえる。出来上がりまでは約2週間。郵送で自宅に配達される。「パック・ランナー」と呼ばれる皺になりにくい梱包技術で郵送されるため、開封後にスーツを吊るして呼吸させれば、アイロンがけ無しでスーツを着用できる。
夏代さんのカスタムスーツの受け取り、お披露目をオンラインイベントでご紹介します。開催予定は5月ですので、どのようなスーツが仕上がるのか、読者の皆様も楽しみにしていてください。